2ちゃんねる スマホ用 ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50    

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

【明日方舟】アークナイツ Part1535

572 :名無しですよ、名無し!:2021/06/19(土) 12:08:10.13 ID:GY7SEcWT0.net
「隊長……仇は取りました」
雪が降り積もる山林で、エリジウムは一人呟く。
目の前には一人の男の死体が横たわっていた。心臓にはナイフが突き刺さっている。
抵抗の痕跡は無い。
一撃だった。
「………」
エリジウムはその場にずっと立ち尽くしていた。
愛する人も、親愛なる友も、憎むべき仇も、もうこの世にはいない。
生きる目的を全て失った男の姿は、雪山に立ち並ぶ無数の枯れ木の一本の様に見えた。
「遅かったか」
どのくらい時間が経ったのか。感情の起伏の無い声がエリジウムの鼓膜を揺らした。
「……ファイアーウォッチさん」
「ロドスを抜けて半年か。復讐を果たしたんだな。羨ましい事だ」
「………」
「あの時隊長は敵のアーツによって操られていた。甚大な被害が予想された。判断材料が限られたあの状況下では殺すのが最善の選択だったんだ」
「わかってる。それでも僕は許す事が出来なかった。どうしても」
「だろうな」
「……ファイアーウォッチさん、お願いがあります」
なんの光も無い虚ろな目で拳銃を構えるエリジウム。
彼女はその姿にかつての自分と、そしてもうじき訪れるであろう未来の自分を重ねた。
「承ろう……最後に二つ、聞いていいか」
「どうぞ」
「復讐者エリジウム。仇を殺した気分はどうだ?」
「あなたならわかるでしょう。最高ですよ」
「そうか、では……親友を殺した気分はどうだ?」
「……ははっ、やだなぁ……わかるでしょ」
エリジウムはロドスでいつも浮かべていた笑みの欠片を滲ませて、引き金を引く。
「最悪さ」
パン、という軽い銃声が響く。
ファイアーウォッチの構えた銃口から放たれた弾丸はエリジウムの心臓を貫いた。
それで終わり。
もう一つの死体と並ぶように倒れ、彼は息絶えた。
「……こちらファイアーウォッチ。状況は終了した」
報告を終えると、戦友を悼むように彼女は二人を見下ろし呟く。
「腕枕……皮肉だな。まるで二人仲良く眠っているように見えるぞ、エリジウム」
倒れた白き復讐者の身体を、褐色の肌の腕が受け止めていた。
それは運命か、ただの偶然か。
降り積もる雪が二人を包むように、等しくただ純白に染め上げていくのだった。

総レス数 1001
173 KB
新着レスの表示

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
read.cgi ver 2014.07.20.01.SC 2014/07/20 D ★