【明日方舟】アークナイツ Part2094

名無しですよ、名無し！

自然には"境界"というものは存在しないと言える。
何かを区切るためには、まず区切るべき二者を定義しなくてはならないからだ。
言語の概念を持つ者だけがその言葉を以て自然物を定義付け、そこに認識上の区別を与えうる。
"文"によって"明"らかすることを「文明」と呼ぶ。
特に多数の他者と接する必要がある近代文明においては、大多数の人間に共通の定義を与える必要がある。
ガヴィルの故郷、アカフラに行ったばかりの君ならば分かるだろう、ドクター。
彼らは居住者すべてを「ティアカウ」と呼び、種族や外見で区分けする発想をしない。
国家という概念も希薄で、名目上はサルゴン領であるが実質的には現地部族たちによる自治領になっている。
だからだ、ドクター。君が現地民を作業員として臨時雇用できたのは。
種族や格好が部族ごとに異なっていて当たり前で外国という概念もないアカフラでは、まさしく不審者の君のことを「怪しい」「よそ者」と拒絶するには至らなかったはずだ。
君とティアカウ達とを区別する定義を与えないからな。
人々の分断の象徴である鉱石病(ｵﾘﾊﾟｼｰ)でさえも、彼らにとっては無数にあるほかの病気と同列でしかない単なる石塊(いしくれ)病だ。
我々は多くの他者と共同生活を送るために、定義を生み出し続けている。それによって共には生きられないほど無数の差別を生みながらな。
原初の社会構造のまま生きるアカフラから学ぶべき事は多かったはずだ。
秩序と無秩序は、どちらにも必要な場面とそれぞれの領分がある、という事を。
だからといって身嗜みまで無秩序な状態に戻す必要はないがな、ドクター。
動くな。
…………タイが曲がっているぞ。それに寝癖。
おはよう、そろそろ頭は覚醒したか？コーヒーはそこだ。1週間ぶりの文明の苦味だ。