■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
【欅坂小説】欅坂の道化師【2冊目】
- 1 :名無しって、書けない?:2018/02/07(水) 21:39:51.64 ID:lF44R90tM.net
- 欅坂46のメンバーを登場人物とした小説を書いています。メンバー以外の人物はもちろん架空の人物です。前スレはまだ書き込めますが、長文が書けなくなった為に新しくスレを立ち上げました。
前スレ
http://itest.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1509967598/
保管倉庫
https://ameblo.jp/nyankozaka/
- 126 :ニャンコ坂46:2018/03/04(日) 16:54:29.37 ID:H7OH/dAKM.net
- シブヤノオト待機
今ふと思ったのですが、
このスレのチワンさんわ、庭さん、
ギリギリさんを欅道の登場人物にしたら
面白そうですよね?
こんな役柄希望とかあればお願いします。
- 127 :名無しって、書けない?:2018/03/04(日) 17:10:46.03 ID:VMq3FB7ia.net
- >>126
理佐ちゃんを守るしもべ役でお願いしますm(__)m
- 128 :ニャンコ坂46:2018/03/04(日) 17:20:53.88 ID:aghr7SZjM.net
- >>127
では、理佐姫のいるジャック・ローズの熱烈なファンで、追っかけをしている内に今回の事件に巻き込まれると言う役ではどうでしょう?
あと、どんなキャラにしましょうか?
- 129 :ニャンコ坂46:2018/03/04(日) 17:32:59.60 ID:aghr7SZjM.net
- シブヤノオト
てち不在のゆいちゃんずダブルセンター
これはこれで
- 130 :ニャンコ坂46:2018/03/04(日) 17:58:12.55 ID:aghr7SZjM.net
- 「ねぇ、おじ様は怖くないの?」
目の前の駐車場に出入りする車に目を向けたまま、ライフル女が鳴滝へと問いかけた。
「所構わず弾丸ぶっ放す君らの事がか?」
「ちゃんと場所はわきまえてるわよ」
「いや、ライフル持ってる時点で、お前ら普通じゃないぞ」
互いが互いを見る事なく、二人はそれぞれの本音を交わした。
「普通じゃない……。それもそうかもしれないけど、そうじゃなくて……」
そこまで言いかけて、ライフル女は声を絞るように言葉を止めた。
顔を合わせるのはまだ三度目だが、彼女らしくないその様子に、鳴滝は思わずライフル女へと顔を向けていた。
「見たでしょ?……私の目……」
鳴滝が見た隣に座る女は、思い詰めた表情で俯いている普通の女の子だった。
これまで高飛車だったその女の変化に、鳴滝はいつものように飄々とやり過ごす訳にもいかず、ただその横顔を見つめるのみだった。
「私のあの目を見た人間は、みんな逃げ出すのに……化け物だって言ってさ……」
「化け物?だとしたら、随分と可愛い化け物だな」
苦笑いで鳴滝はそう答えていた。
「それだって……普通じゃないんでょ?」
そこで、やっとライフル女は鳴滝へと視線を向けた。そして、やはりその瞳は黒。何処にでもいる女の子でしかなかった。
「じゃあ、逆に聞くが、君の言う普通ってのは何なんだよ?」
「それは……」
互いに見つめ合うその瞳の奥に、互いがその答えを探していた。
- 131 :名無しって、書けない?:2018/03/04(日) 19:12:00.87 ID:Su369OxJa.net
- >>128
素晴らしい役をありがとうございます
キャラ設定は理佐ちゃんは性格の良いダメ男と結婚する気がするのでその線でお願いしますm(__)m
- 132 :ニャンコ坂46:2018/03/04(日) 20:06:43.84 ID:clllU42xM.net
- >>131
ダメ男ww
では、尻に敷かれるって事で
- 133 :ニャンコ坂46:2018/03/04(日) 20:07:21.65 ID:clllU42xM.net
- 「片腕が無かったら、君はその人を化け物と呼ぶのか?片目が無かったら、その人も化け物と呼ぶのか? 」
沈黙から先に抜け出したのは鳴滝だった。
「そんなわけないじゃん。てか、それって極論だし」
尾関梨香とは違い、このライフル女は冷静に鳴滝の言葉を捉えていた。
「じゃあ、何なんだよ?君の考える普通って」
「何って……」
それでも尚問いかける鳴滝に、ライフル女は言葉を探して目を伏せた。
「他人と違うから普通じゃないのか?何かが足りないから普通じゃないのか?何かが多いから普通じゃないのか? 親がいないから普通じゃないのか?」
戸惑うライフル女に構わず、鳴滝が畳み掛けるように言い放った。
「海の向こうの小国では、君よりも幼い子供が銃を持って闘っている。この国で報道されていないだけで、それは事実だ」
そう語る鳴滝は、ライフル女ではなく宙の一点を睨みつけていた。何かを思い出しているかのように。
「常識なんてものは、国によって違う。命の重さでさえ違うんだ。くだらねぇ……」
そこで我に返ったように、一瞬だけ目を見開いた鳴滝がライフル女へと視線を戻した。
「俺は君と同じ金色の瞳を持つ男を知っている。俺がただ一人、負けを認めた男だ」
「同じ? 」
「そう。同じ金色の瞳だ。俺が探偵になる前の話しだがな。だから、どうって事ないさ」
- 134 :名無しって、書けない?:2018/03/04(日) 20:27:20.33 ID:f+MRnAOdK.net
- >>126
えっ…!?
http://o.8ch.net/13b5e.png
そんなありがたいオファーをいただけるなんて…
そのお言葉だけで十分でございます(笑)
- 135 :ニャンコ坂46:2018/03/04(日) 20:44:21.10 ID:rbKUhEoIM.net
- >>134
では、ネット世界ではイラスト絵師として知られながらも、本職はハッカーと言う設定で。
- 136 :ニャンコ坂46:2018/03/04(日) 20:44:57.09 ID:rbKUhEoIM.net
- 「ねぇ、おじ様……」
宙を睨みつけていた彼から一転し、優しい目をした鳴滝へとライフル女が問いかける。
「私は、東村芽依。この子が……」
そう言って、芽依はモッズコートの女へとめを向けた。
「加藤……志帆」
相変わらずの無表情ながら、少し戸惑うような声で、モッズコートの女がその名を示した。
「俺は鳴滝慎吾。先にも言ったように、貧乏探偵だ」
自らの名を示したライフル女へと、鳴滝も自らの名刺を差し出した。
「安くしとくぜ。助っ人してもらった恩があるからな」
「じゃあ、ひとつお願いしようかな」
そこで、やっと芽依が例の悪戯な笑みを取り戻した。
「殺しと盗み以外なら、何でも来いだ」
「クロウを探し出して」
「君達の狙いは、やはりそれか」
そう言った鳴滝は目を細めた。
「やはり……って……気が付いてたんだ?」
「探偵なめるなよ。兎か猟犬か……逆の立場になれば簡単に分かることさ」
「へぇ……」
意味深であり、尚且つ最短のその言葉で芽依は鳴滝の解説を誘った。
「獣を誘い出す餌としての兎か、獣を追い詰める為の猟犬か……そうだろ?」
「なかなか賢そうなワンちゃんで良かったわ」
「うるせぇ。クソガキ」
そう言い放った鳴滝の顔にも、東村芽依と同じ意味深な笑顔が浮かんでいた。
- 137 :名無しって、書けない?:2018/03/04(日) 23:04:28.92 ID:oWr3jLEj0.net
- >>126
時に皮肉めいた風刺で世の矛盾を厳しく問いつつも
実は坂道ちゃんとかの美少女らから放たれるエロにはめっぽう弱い
市井の画家とかで もっと大きく出て
野党の党首とか紅白の司会芸人でもいいですw
- 138 :名無しって、書けない?:2018/03/05(月) 18:56:43.98 ID:5obhpEcyC.net
-
http://o.8ch.net/13ckp.png
- 139 :ニャンコ坂46:2018/03/05(月) 19:49:49.40 ID:YsQSvkXFM.net
- >>137
市井とか博学でいらっしゃる。
なかなか出て来ない言葉です。
では、画家の線で。
- 140 :ニャンコ坂46:2018/03/05(月) 19:53:35.62 ID:YsQSvkXFM.net
- >>138
そうなんですよね……
最初に飛ばしすぎた感ありありです。
どこかで貯金作らないと。
とりあえず同時進行になりそうです。
- 141 :ニャンコ坂46:2018/03/05(月) 20:27:07.24 ID:YsQSvkXFM.net
- 同じ曲なのに、プロだとアコースティック一本だけのアレンジでも、ここまで変わるのか……
https://youtu.be/7UuNAKFV6KQ
- 142 :ニャンコ坂46:2018/03/06(火) 03:25:55.93 ID:3PxsFKsuM.net
- 「お雛様みたい……」
その時、鳴滝と芽依の正面に立って二人を見ていた加藤史帆が、無表情のままぬるっとそう呟いた。
「何言ってんだ、お前?」
それに対して、鳴滝は反射的にそう言ってしまっていた。
これは尾関梨香の影響によるものだ。いつも肝心なところで、すっとこどっこいな発言をする尾関梨香に対しての常套句であり、彼の口癖のようになっていた。
加藤史帆が二人をお雛様みたいだと感じた理由は、全く分からないでもなかった。彼が手に持つコーヒーの缶が、お内裏さまの手に持つ笏に見えたのだろう。
鳴滝の言葉を受けて、加藤史帆は照れ隠しなのか、すぐさま二人へと背を向けた。
「こう言っちゃなんだが……安心したよ」
その加藤史帆の背中へと向けて、鳴滝が穏やかな顔で言った。
「本当の殺し屋は感情が無い。まさに機械だ。少なくとも、俺が見てきた奴等はな。でも、君はまだ女の子なんだな」
鳴滝の言葉に、加藤史帆は僅かに俯いた。スラリと伸びた長身の背中が、その時ばかりは小さく見えて、鳴滝は寂しげに目を細める。
「心配してくれてたんだ?」
隣に座る芽依が、驚きを含ませた潤んだ目で問いかけた。
「まぁ、何と言うか……。ガキはガキらしくしてろって事さ」
「ガキじゃないし!殺し屋でもないから!」
鳴滝の言葉が幾らか気に障ったらしい。
東村芽依が声高にそう言い返していた。
「じゃあ、お前達は何なんだよ?」
即座に返された鳴滝の問いに、何かを言いかけた芽依だったが、見開いた目を彼から逸らして正面を見据えて黙り込んだ。
- 143 :ニャンコ坂46:2018/03/06(火) 19:30:35.57 ID:FVBgwLPrM.net
- とりあえず
https://i.imgur.com/bKjmgNc.jpg
- 144 :ニャンコ坂46:2018/03/07(水) 03:05:52.67 ID:e+4PAj3BM.net
- 「まぁ、いいか」
あっさりと追及を諦めた鳴滝の声に、芽依はその顔を見た。
「君らも何かの組織に属している以上、そう簡単にペラペラ喋る事が出来ないだろうな。ただし、これだけは言っておく……」
真剣な顔で、鳴滝は史帆へと向けた視線を再び芽依へと戻した。
「自分の命を粗末にするな。強い相手に立ち向かって勝てるのは、映画やドラマの中の主人公だけだ」
そう言った鳴滝は、不意に立ち上がり隣にある自動販売機へと硬貨を投入した。
「君らもそれなりの修羅場を踏んで来たのは、俺にだって大体の予想はつく。何らかの特殊な能力を持っている事も」
自動販売機の取り出し口から二本の缶コーヒーを掴み上げた鳴滝は、芽依と史帆へとそれぞれに缶を放り投げた。
コートのポケットに両手を入れたままの史帆は、受け取り損なうかと思われたが、流石の反射神経で、難なく缶を受け取っていた。
その姿に、鳴滝はニヤリと笑みを浮かべる。
「いや。むしろ、その特殊な能力ゆえに、今の状況にいるのかもしれないが……」
そこまで語った鳴滝は、語尾に意味深な空白を残し、再び芽依の隣へと腰を降ろした。
一方の芽依と史帆は、鳴滝の次の言葉を待つように、ただ黙って彼をみつめていた。
「つまり何が言いたいかと言うと……逃げたきゃとことん逃げろって事さ。命のやり取りにおいての強さってのは、相手の力量を見極める力だと思うんだ。生き残る方が勝ちなら、とことん生き残れ」
「背中から撃たれるなんて、絶対に嫌だ」
そこで、やっと芽依が口を開いた。
「そんなくだらねぇプライドなんか捨てちまえ。君らの世界では、それが格好良い事なのかもしれないが、俺から見たらわけがわからない」
少しばかり挑発するかのように、鳴滝が笑みを含んだ言葉を投げかけた。それに反比例して、芽依と史帆の眼光は鋭さを増した。
- 145 :ニャンコ坂46:2018/03/07(水) 04:00:47.10 ID:pIOZQzaHM.net
- 「テレビのニュースで、中学生や高校生が自殺したと聞くたびにに思うんだよ……」
続けて語り出した鳴滝のその予想外の言葉に、何事かを言いかけた芽依が口を閉じた。
「逃げ場が無かったんだなってさ。俺達はいつのまにか忘れちまっているが、彼等の世界は家か学校しか無いんだ。クソ狭い世界さ。
親が逃げ道を作ってやれればいいが、その親さえ……」
そこで鳴滝は、やっと冷めた缶コーヒーを開けて口を付けた。
「常識や世間体なんて、くだらねぇプライドの為に子供の選択肢を削っちまう。それが子供の命を削っているなんて知らずにさ」
それまで宙を見ていた鳴滝が、芽依へ、そして史帆へと順に視線を向けた。
「お前ら、自分がガキじゃないと言い張るなら、もっとしたたかにしなやかに生きてみろ。逃げたっていいんだ。何に価値を求めるかは人それぞれだろうが、それだって生きていてさえこそだ。銃を手にしているお前らなら尚更だ」
そう言った鳴滝の視界の中で、芽依がニヤリと笑った。
「ひょっとして……おじ様はいじめられっ子だったの?」
「と、思うだろ?それが違うんだなぁ」
「じゃあ、何なの?」
「いじめっ子をぶん殴る方さ。見ていてムカつくからな」
「格好つけ過ぎ」
「お陰で敵ばかりだった。でもさ、泣いてる奴が笑うのを見ると、それも悪くない。自己満足の偽善者かもしれないが」
「苦っ!」
鳴滝の言葉を芽依が遮った。
「ブラック……あたし、苦手」
手にした缶のラベルを見た芽依がそう呟いた。
「どんな世界も、そのブラックコーヒーと同じさ。その苦味さえ旨いと思えるようになったら、一人前なんだ」
そう言った鳴滝は、揶揄うように笑顔を見せた。
- 146 :ニャンコ坂46:2018/03/07(水) 19:15:55.99 ID:fmIM/q01d.net
- とりあえず
https://i.imgur.com/1i7A31M.jpg
- 147 :名無しって、書けない?:2018/03/07(水) 19:54:19.58 ID:NK0lh158a.net
- >>145
鳴滝の人生哲学を垣間見るたびにどんな人生を生きてきたのか気になりますな
- 148 :ニャンコ坂46:2018/03/07(水) 22:04:05.94 ID:YoY7G9qqM.net
- >>147
それは徐々に明らかになります。
多分、きっと、おそらく。
- 149 :ニャンコ坂46:2018/03/07(水) 22:04:30.54 ID:YoY7G9qqM.net
- 「芽依……あれ……」
そう言った史帆の視線の先を辿ると、そこには建物から出て来て、鳴滝を探す尾関梨香の姿があった。
「じゃあね、おじ様」
芽依は傍らのバッグを肩に掛けて立ち上がった。
「後で電話してくれ。クロウについて知りたいからな」
「気が向いたらね」
曖昧な返事を鳴滝へと残し、芽依と史帆は駐車場の奥へと消えて行った。現れた時と同じく、気配を消して。
「鳴さん、そこに居たんですか」
入れ替わるように鳴滝の前に歩み寄ったのは、彼の相棒である尾関梨香だった。
「ああ。ずっとここに居たよ」
「何してたんですか?」
「ちょっと考え事をしてたんだ。それより、そっちの用事は済んだのか? 」
尾関の詮索の矛先をかわす様に、鳴滝がそう問い返した。
「はい。まぁ、用事って程の用でもないですけど」
あっけらかんと語りつつ、それが当たり前の様に尾関梨香は鳴滝の隣へと腰を降ろしていた。
「なんだか……めちゃくちゃな一日でしたね」
張り詰めた糸が全て切れた操り人形の様に、尾関は肩を落としてそう呟いた。
- 150 :名無しって、書けない?:2018/03/07(水) 22:37:22.57 ID:weusVP4iK.net
- アメブロと並行しながらの更新乙です
鳴滝の考え方に共感する部分もあるなあと最近思いながら読ませてもらってます
http://o.8ch.net/13eiv.png
- 151 :ニャンコ坂46:2018/03/08(木) 05:10:27.27 ID:twRBDQzbM.net
- >>150
ありがとうございます!
鳴滝の考え方は、キャラを立てる為に極端に偏らせてます。欅坂をタイトルにしている以上、欅ちゃん達がメインなのですが、そうなっていないのが悩みどころですww
- 152 :ニャンコ坂46:2018/03/08(木) 05:14:39.89 ID:twRBDQzbM.net
- 「何言ってんだ?お前。まだひと仕事残ってるぞ」
「は?」
どこか嬉し気に常套句を口にした鳴滝へと、尾関梨香は不審者を見るような表情で顔だけを彼へと向けた。
「長濱ねるが世話になっていたと言う、川口玲子に話しを聞かなきゃならないだろう?」
「これからですか?」
そう言って尾関梨香が見た彼女の腕時計の短針は七を、短針は三を少し過ぎた場所を指していた。
「何時だろうと知った事か。人ひとりの命が掛かってるんだ。むしろ、夜の闇は奴等にとっては好都合だしな」
「奴等って?」
「殺し屋さんに決まってるだろ」
「てか、なんで鳴さん、そんなに嬉しそうなんですか?」
この数年、すぐ側で彼を見て来た尾関梨香にとっては、今の鳴滝には違和感しかなかったようだ。
「不安要素がひとつ減ったからさ」
その鳴滝の言葉を受けて、尾関梨香は彼を見たまま暫し沈黙した。そして、思考を整理した彼女の口から漏れ出た言葉はひとつ。
「何言ってるんですか?鳴さん」
これまで自分へと向けられて来た鳴滝の常套句を、今回は尾関が彼女の言葉で彼へと口にしていた。
「そのうち分かるさ」
そう言った鳴滝は、優しげに目を細めて尾関を見た。
その二人を、少し離れた場所で見守っていた守屋茜の隣で、益田クリスがひとつ溜め息をつく。
「やはり……何か……違いますね」
溜め息の後に続けられたクリスの言葉に、守屋茜は彼女へと目を向けた。
「だから最初に言ったでしょう?変な奴だって」
少し呆れた顔で、守屋茜がクリスへとそう言葉を返していた。
- 153 :ニャンコ坂46:2018/03/08(木) 08:43:00.43 ID:eh7SvsAMM.net
- 「変な人と言うより、謎の人です」
「そうかしら?ただの変わり者としか思えないけれど」
「堂崎教会での彼の動き。ただの護身術のようには思えませんでした」
「動き?」
眉を顰めて守屋茜がクリスへと問う。
「はい。あの平手友梨奈がダガーで襲って来た時です」
「ああ……」
思い出すように、守屋茜は腕を組んだ。
「いくらレクチャーされていたとしても、実際にナイフを向けられたら多くの人間は逃げ腰になります。けれど、彼は……何と言うか……慣れているように思えました」
「それなりに危ない橋も渡って来てるわよ。彼だって」
「それだけでしょうか?それに、浦頭教会で彼が口にしたアヴェ・マリアはラテン語でした。それ自体はシューベルトの歌詞ですが、最後の一言は違いました」
「これも貴方の御心ですか……ってとこ?」
「ええ。その文言はラテン語の歌詞の中にはありません。彼自身の言葉だと思います」
「確かに、彼は謎が多いけれど……今は詮索するのはやめましょう。平手友梨奈を確保することの方が先決だもの」
「Let it be」
そう言ってクリスは微笑んだ。
直訳すれば「あるがままに」または「成り行きに任せろ」と言う事になるのだろうが、きっと鳴滝の言葉への返しだと気づいた守屋茜は、彼女の言葉でその意図を口にした。
「御心のままに……」
その守屋茜とクリスへと向かって、尾関梨香が天使のような笑顔で走り来る姿が見えた。
- 154 :ニャンコ坂46:2018/03/08(木) 19:33:50.31 ID:M2My7haRM.net
- とりあえず
書き始めてもうすぐ4ヶ月
この小説はいつ終わるんだろう……
こんなに長くなると思わなかった
https://i.imgur.com/Q4veWya.jpg
- 155 :ニャンコ坂46:2018/03/08(木) 19:56:06.28 ID:nYMEtnMwM.net
- 「茜さん、ちょっと聞いて下さいよ!」
二人の前へと駆け寄るなり、尾関が声を上げた。
「どうしたの?」
「あの万年ヒラ社員みたいな自己中探偵が、これからまた聞き込みに行くって言ってるんです!」
「尾関ちゃん……そんな事、笑顔で言っちゃダメ……」
「もう笑うしかないっす!」
「言葉までおかしくなってるわよ。大丈夫?」
感情に表情が伴わない尾関梨香へと、守屋茜が心配そうに声をかける。
「まぁ、下見だけでもしておいた方がいいと思ってさ」
三人の元へと追いついた鳴滝がそう提案した。
「そうですね。武家屋敷通りまでは、ここから遠くありませんから」
「よし、とりあえず行ってみるか」
クリスの同意を受けて、鳴滝は一人で駐車場へと歩き出した。
「鳴さん!」
そこで尾関梨香が声を上げた。
「文句なら、行きがてら車の中で聞くよ」
面倒臭そうに振り向いた鳴滝だったが、背後に立つ尾関梨香だけでなく、守屋茜とクリスまでもが目を見開いている姿に息を呑んだ。
「何だよ?」
只ならぬ雰囲気に、鳴滝の声も少し上擦っていた。
「背中……」
尾関梨香が強張った表情で鳴滝を指差す。
「背中?」
尾関の言葉を受けて、鳴滝は着ていたスーツの上着を脱いでその背中を見た。
- 156 :名無しって、書けない?:2018/03/08(木) 19:56:22.51 ID:K4OAGzQxa.net
- >>154
4ヶ月お疲れ様ですm(__)m
超長期連載に向けてこれからも頑張ってください!
- 157 :ニャンコ坂46:2018/03/08(木) 20:19:01.89 ID:LZPq4B5tM.net
- >>156
ありがとうございます。
五島編終わらせて、庭さんを渡邉理佐の奴隷編を書ける日を楽しみにしていますww
- 158 :ニャンコ坂46:2018/03/08(木) 20:43:52.86 ID:LZPq4B5tM.net
- 「こいつは……」
その存在に気づいた鳴滝も、他の三人同様に目を見開く。だが、すぐさま彼の表情の端に笑みが込み上げていた。
何故なら、彼のスーツの背中には白い紙で作られた、あのヒトガタが張り付いていたのだ。
「それって……陰陽道の……」
「ヒトガタ……いや、こいつは式神だ」
驚愕に言葉を詰まらせる守屋茜に代わり、鳴滝がその名を口にした。しかし、その鳴滝の顔は苦笑いと言うよりも、幾ばくかの狂気を含んだものだった。
「大丈夫?」
その表情に良からぬ胸騒ぎを覚えた守屋茜が、彼の元へと駆け寄った。
「やはり、お前だったのか……」
紙で作られたヒトガタを手に取った鳴滝が、それを夜空へとかざす。その奇妙な行動に、守屋茜の足が止まった。
「探したぞ、マグス……」
何者かの名を口にした鳴滝の顔には、既に狂気にも似た笑みが浮かんでいた。
その異様な光景に、女三人はただ遠巻きに見つめるしかなかった。
夜の闇に鳴滝がかざしたヒトガタは、尾関梨香が車内で見つけたものと形は同じであった。しかし、ひとつだけ違うとすれば、その中心には朱色で描かれた星型。
「式神……」
その違いに、いち早く気付いた尾関梨香が呟いた。だが、その彼女の言葉さえ、今の鳴滝の耳には届いていない。
尾関の前で、彼はヒトガタを夜空へとかざしたまま跪き、天を仰いでいた。
「デオ、グラチアス!あんた、最高だぜ」
祈るかのようにそう叫んだ鳴滝は、腹を抱えて笑い出していた。
- 159 :ニャンコ坂46:2018/03/08(木) 21:30:00.36 ID:MftLswkXM.net
- 「デオ、グラチアス……神に感謝……」
鳴滝の言葉をクリスがそう翻訳した。
彼の異様な行動に驚きつつも、彼女は何とか最後の冷静さを保っているらしい。
その間にも、鳴滝は祈りを捧げる姿から地面を転げて笑うまでに奇行が進んでいた。
鳴滝の笑い声に、尾関梨香や守屋茜のみならず、他の買い物客までが集まり出した。それに構わず、鳴滝は相変わらず笑い転げている。
そんな彼の姿を見るのは尾関梨香だけではなく、守屋茜さえ初めてだった。それ故に、どうする事も出来ずに彼女達は立ち竦むしかなかったのだ。
「なぁ、マグス。お前、こいつを使って俺を見てるんだろう?」
右手にしたヒトガタを再び夜空へとかざした鳴滝が、やっと人らしい言葉を発した。
「お前の首は俺が刈る。待ってろよ……」
群がる野次馬の只中で、鳴滝は右手のヒトガタの首筋を左手の人差し指と中指のみで横一線に斬り裂いた。
皆の見守る中、はらりとヒトガタの頭だけがアスファルトの地面へと舞い降りる。
「ノウマクサンマンダ、バサラサダンカン」
続けて鳴滝の口から漏れ出たラテン語ではないその言葉に呼応するかのように、彼の手の中のヒトガタの胴体と地面に落ちた首とが同時に炎に包まれて、一瞬で真っ白な灰と化していた。
「おお!凄え!」
野次馬の一人がそう声を上げた。
「レディース、アンド、ジェントルメン!短い余興にお付き合い頂き、ありがとう!残念ながら、今宵の出し物はこれが最後だ。シーユーアゲイン!また会おうぜ!じゃあな」
自らを取り囲む野次馬に手を振りつつ、鳴滝は駐車場の奥へと歩き出した。
その背中を他の三人は野次馬と共に見送っていた。
これは夢なのか?そう思わせる程に、この時の鳴滝は違っていたのだ。尾関梨香の記憶にも、守屋茜の記憶にも存在しない鳴滝慎吾の存在。
それは、もはや何者にも知り得ない存在だったのかもしれない。彼が口にした「マグス」と呼ばれた存在以外には。
- 160 :名無しって、書けない?:2018/03/09(金) 00:22:31.34 ID:o75W8Rw3C.net
-
http://o.8ch.net/13fol.png
- 161 :ニャンコ坂46:2018/03/09(金) 19:45:31.47 ID:ut6/KZlud.net
- >>160
保守ありがとうございます!
メンバーの名前まではわかりませんが、
a-haは知ってますwwどんどんイラストの
クオリティ上がってますねー
- 162 :名無しって、書けない?:2018/03/10(土) 11:18:53.34 ID:ossouFFNK.net
- ドコモシリーズで保守
http://o.8ch.net/13gnu.png
やはり美人の顔は描くのが難しいなぁ…
なーこ「え…?」
もんた「はぁ?」
ずみこ「ふぉ?」
- 163 :ニャンコ坂46:2018/03/10(土) 20:48:45.04 ID:o5hw2iKmM.net
- >>162
チワンさん……それ言っちゃダメww
- 164 :ニャンコ坂46:2018/03/10(土) 20:49:11.86 ID:o5hw2iKmM.net
- ショッピングモールの看板の作り出す淡い光のみが照らす駐車場の中を、鳴滝は自らが乗るべき車とは逆の方向へと歩いていた。
ヒトガタが張り付いていたスーツの上着を左腕に掛けて、彼は思い悩むようにゆっくりと歩を進める。
その時、上着のポケットの中の彼のスマートフォンが着信を知らせる振動を始めた。
「早速、気が向いたらしいな」
即座に取り出したスマートフォンを耳に当てた鳴滝が、どこか嬉し気に何者かに話しかけた。
やがて、その何者かは静かに鳴滝に近づいて来た。あのレンガ造りの教会の駐車場て見た赤い軽自動車だ。
ハンドルを握るのは加藤史帆。助手席には既に金色へと変わった瞳の東村芽依がいた。
その東村芽依も、同じくスマートフォンを耳へと当てている。
「おじ様って、手品も出来る探偵なんだね」
「なんせ、貧乏探偵だからな。いつでも転職出来るように憶えたのさ」
東村芽依の皮肉混じりの言葉に、鳴滝もそれ相応のジョークで返していた。
「お上手。タネ明かししてよ」
「嫌だね。企業秘密ってやつさ」
助手席側の窓を開ければ直接に話せる距離にありながら、鳴滝と芽依は互いの目を見る事もなくスマートフォン越しに会話を続けていた。
「なぁ……ひとつだけ教えてくれ」
「なぁ……に?」
鳴滝の口調を真似て、東村芽依が即座に問い返す。それが、彼女の悪い癖らしい。
- 165 :ニャンコ坂46:2018/03/10(土) 22:03:49.21 ID:ygVAkvW/M.net
- どうでもいい発見。
乃木坂の鈴木絢音と、初期の長沢菜々香が
何となく似ている。
https://i.imgur.com/1I80N7P.jpg
この子が何だか気になっていたのはこれか〜と、
今になって気が付いた(´ー`)
スッキリ
- 166 :名無しって、書けない?:2018/03/10(土) 23:16:49.18 ID:tIiUiE5d0.net
- 乙です
鳴さんがカッコよく見えてきましたw
フィリップ・マーロウみたいな男の美学が伝わってきます
>>165
もしかすると、ニャンコ先生とは顔の好みが同じかもしれません
なーこちゃんは美人と評価されることが少ないですが、
よく見ると綺麗な鼻筋をしてて、メイク次第でいい方向へ化けるじゃないかと期待してます
- 167 :名無しって、書けない?:2018/03/10(土) 23:19:52.97 ID:dugsw8oUa.net
- 鳴滝はちょっと俺と似てるかも?
ハードボイルドなとことか手品出来るとことか
- 168 :名無しって、書けない?:2018/03/11(日) 17:09:50.14 ID:X57LsecuK.net
- 今年も311がやって来ましたね
虹花のブログを読んで心を新たにして久しぶりに黙祷しました
という保守
http://o.8ch.net/13iuu.png
今日の絵にはほんのちょっとだけ仕掛けがあるけど大したことではありません
- 169 :ニャンコ坂46:2018/03/11(日) 17:58:29.75 ID:Mjybj4jYM.net
- >>166
フィリップ・マーロウは目標ですね(^_^)
なーこは確かにメイクで変わると思います。
あとは年齢を重ねる毎に、大人の魅力も身につけていい女になるでしょうね。
- 170 :ニャンコ坂46:2018/03/11(日) 18:03:59.10 ID:Mjybj4jYM.net
- >>167
マジですか!
私は不器用なので手品は無理!
- 171 :ニャンコ坂46:2018/03/11(日) 18:06:02.38 ID:Mjybj4jYM.net
- >>168
あの日からもう7年なのか、まだ7年なのか。
いろいろと考えさせらるところは未だにあります。
イラストの仕掛けをこれから解いてみますね。
- 172 :ニャンコ坂46:2018/03/11(日) 18:07:28.05 ID:Mjybj4jYM.net
- 「君は……君と同じ金色の瞳を持つマグスって奴を知っているんだろう?」
ひとつの確信と共に、鳴滝がそう問いかけた。
「マグス?……知らなぁい。……同じ目をしている人なら知ってるけど」
僅かな沈黙を挟んで語られた彼女の言葉に、
鳴滝の目にに、再び狂気にも似た覇気が宿っていた。
「そいつの名前は?」
間髪入れずにそう問いかけた鳴滝だったが、彼の耳に当てたスマートフォンは長く沈黙したままだった。
その沈黙についに耐えきれなくなった鳴滝は、彼女の金色の瞳へと目を向けた。
「おじ様が、さっきの手品のタネ明かしをしてくれたら教えて、あ・げ・る」
視線を合わせるのと同時に、東村芽依が鳴滝へと条件を突き付けていた。
「そいつは出来ない相談だな。何故なら……」
「何故なら?」
今度は意図的に、東村芽依は鳴滝の言葉をなぞっていた。
「その上から目線が、誰かさんみたいで気に食わねぇ……からかな……」
「誰かさんって、あの可愛い相棒さん?」
「さぁな……」
「意地悪ね。そんな意地悪さんに、あたしからも聴きたい事があるんだけど。聞いてくれる?」
「何だよ?」
そう言った鳴滝は、東村芽依の金色の瞳を凝視したまま問い返した。
- 173 :ニャンコ坂46:2018/03/11(日) 19:02:01.31 ID:bEMGNHdCM.net
- 「おじ様、クロウの事を知ってるんでしょ?」
悪戯な笑みを浮かべた芽依が鳴滝へと更に問い返す。その挑戦的な小娘の表情に、鳴滝は右の口角のみを上げた苦笑いで答えた。
「忘れたいが思い出せないな」
「やっぱり……そうなんだ……」
鳴滝の言葉を受けて、彼女は彼女なりの確信を得たらしい。その芽依の視線が鳴滝から前方へと移った瞬間、動きを止めていた彼女の乗る赤い軽自動車が再び静かに動き出した。
鳴滝がその進行方向へと目を向けると、そこには心配そうな顔をして鳴滝を見つめる尾関梨香の姿があった。
「ねぇ、おじ様もこっち側においでよ。あたし達、良いコンビになれそう」
その時、鳴滝の耳に当てたスマートフォンから芽依の声が響いた。
「悪いな。俺の相棒は俺が決める」
「この子の何が良いの?」
そう問い返した芽依の乗る車は、既に尾関梨香の横で動きを止めていた。
「そいつの良さは、今の君じゃ分からないさ」
「妬けちゃうなぁ……」
そう言った芽依は、自らが座っている助手席側の窓を僅かに下へと降ろした。そのモーター音に、鳴滝を見つめていた尾関梨香の視線が東村芽依の存在を捉える。
「ねぇ。あの人、あたしが貰ってもいいかな?」
「何言ってるの?」
金色の目をしたままの芽依の突然の問いかけにも、尾関梨香は怯む事なくそう言い返していた。
「あなたより、あたしの方がお似合いって事よ」
「そう。じゃあ、いいよ。だだし、返品不可だから」
「え?いいの?」
おそらくは想定外だったのだろう。尾関梨香の言葉に、東村芽依の瞳の色は金色から黒へと変わっていた。
- 174 :名無しって、書けない?:2018/03/11(日) 19:34:17.41 ID:X57LsecuK.net
- >>171
更新乙です
仕掛けが解けたらさすがに怖いっす(笑)
因みにサイコ〜とサイコをかけたわけではありません(笑)
- 175 :名無しって、書けない?:2018/03/11(日) 22:13:38.90 ID:sTxO6gxJ0.net
- >>168
山居倉庫の東側に星印がありますね
ブログに掲載されているマップの位置関係から推察するに、その場所は土門拳記念館に一致しますから、それが仕掛けの一つでしょう
星印で思い当たるのはミシュランガイドの星数で、調べたところこの記念館は星2つでしたから、これは多分関係ありません
最近のチワンさんは、植田正治に纏わる作品をお書きになられてましたから、写真にも造形が深い
この星印は土門さんに対する個人的なリスペクトを示したものではないかと思われます
鳴滝さんに負けじと、でっち上げ推理を拵えてみましたw
絵そのものに仕掛けがあるのなら、絵心のない僕はお手上げですw
- 176 :名無しって、書けない?:2018/03/11(日) 22:42:10.05 ID:X57LsecuK.net
- >>175
すごいですね(笑)さすがです
植田正治さんのほうはまだなんですが、土門拳記念館には1回行ったことがあるんです
あの仏像写真の実物を巨大に引き伸ばして展示されていて
それを見ていると土門氏の「仏像はね、走ってるんだよ!」という名言がまさに感覚として素直に入ってきて、ひたすら圧倒されます
建物もモダンで綺麗ですし、ぜひおすすめですよ
で、なぜこっちには行ったことがあるかというと
実はそこの町で私は生まれたんです
本当に幼いうちにまたよそに引っ越してしまったので、当時の記憶も全く無いんですが
大人になってから行ってみたら、不思議なことに何か空気が違って感じるんですよね
やっぱりふるさとってことなのかなあって思ったものです
以上解答終わり(笑)
続き頑張ってください(笑)
- 177 :ニャンコ坂46:2018/03/12(月) 03:30:49.22 ID:yA+4LDlMM.net
- >>175
見事な名推理です!
参りましたm(_ _)m
>>176
元画像との違いで、星マークまでは気が付いたのですが、記念館と何の関連があるのかまでは
、全く分かりませんでした。
「仏像は走っている」深いですね。
- 178 :ニャンコ坂46:2018/03/12(月) 03:32:04.82 ID:yA+4LDlMM.net
- 「いいよ。けど、あの人は探偵だよ」
「だから、何?」
「あなたは探偵になれるの?」
「探偵なんて、あたしにだって出来るわ」
「探偵舐めるなよ」
少しばかり鳴滝を意識させる尾関梨香の言葉に、東村芽依は苦笑いを浮かべた。
「芽依。行くよ」
二人の会話を遮るように、軽自動車のハンドルを握る加藤史帆が言い放つ。その彼女の瞳には、サイドミラーの中で急かすようにライトをパッシングさせる車があった。
「じゃあね。探偵ちゃん」
皮肉を含んだ言葉を残し、芽依を乗せた車は駐車場から出て、道の先に拡がる闇へとテールランプの赤だけを残し消えて行った。
その姿を見送る尾関梨香の横へと、白い乗用車が止まった。
「乗って」
クリスに代わり助手席へと座っていた守屋茜の声がした。その声に素直に従い後部座席のドアを開けた尾関梨香の視線の先には、腕を組んで座る鳴滝の姿があった。
尾関梨香がその隣へと座るのと同時に、車は走り出す。
「あの女と、何を話してたんですか?」
シートベルトを締めながら、尾関が鳴滝へと問いかけた。
「手品の話しをしてたんだよ」
「手品って……あの人形を燃やすやつですか?」
「ああ、そうさ。モナリザの忘年会でやってやろうと思って練習してたんだよ」
「悪趣味です。それに、まぐすって誰ですか?」
尾関梨香が口にしたその名前に、守屋茜が耳を傾けるように顔を動かした。それに対し、鳴滝は深い溜め息をひとつつき、窓の外へと目を向けた。
- 179 :名無しって、書けない?:2018/03/12(月) 20:20:56.24 ID:V3m8gNdMC.net
-
http://o.8ch.net/13jzj.png
- 180 :名無しって、書けない?:2018/03/12(月) 20:24:31.34 ID:5nbACVHXa.net
- >>179
勘九郎兄さんやー!
- 181 :ニャンコ坂46:2018/03/12(月) 20:38:12.64 ID:EYDPhP8xM.net
- 只今、帰宅(^_^)
>>179
ウオォ!もう職人の域ですよねww
色使いが素晴らしい
- 182 :ニャンコ坂46:2018/03/12(月) 21:11:31.67 ID:FyKzmd9kM.net
- 沈黙した鳴滝の答えを待つ間に、四人を乗せた車はいつしか市街地へと入っていた。
「もうすぐ武家屋敷通りです」
ハンドルを持つクリスが、助手席の守屋茜へと次の指示を仰ぐかのように語りかけた。その守屋茜は、そこでやっと後部座席の鳴滝へと顔を向けた。
「私達はこのままホテルに向かうけど、あなた達はどうする?」
「とりあえず、その武家屋敷通りに着いたら適当なところで降ろしてくれ」
守屋茜の問いかけに、沈黙していたはずの鳴滝が即座に答えを返した。
「泊まる所は決めてあるの?」
「あ……」
守屋茜の言葉に、尾関梨香の顔が引きつった。その表情から全てを察した鳴滝は、呆れたような苦笑いで守屋茜を見た。
「まぁ、観光シーズンでもないから、いくらでも部屋は空いているだろ」
「大丈夫ですかね?こんな時間に……」
先程までの強気な態度から一転し、尾関が小声で呟いた。
「どうとでもなるさ。夜通し張り込みする案件に比べりゃ、何て事ないだろ?」
「で……ですよね……」
ホテルの予約を忘れた負い目もあってか、尾関は反論する事も出来ずに、鳴滝の言葉に無理矢理に同意していた。
「ここが武家屋敷通りです」
その時、目の前に現れた信号機から右にハンドルを切ったクリスが、ルームミラー越しに鳴滝を見た。
「今日はありがとう。せっかくの休暇を無駄に遣わせて申し訳なかった。この埋め合わせは、何かの形で必ず返すよ」
あのショッピングモールの駐車場での奇行からは、全く想像も出来ない様な鳴滝の紳士的な言葉で、彼に返す言葉に戸惑ったクリスが助けを求めて守屋茜へと目を向けた。
- 183 :名無しって、書けない?:2018/03/12(月) 23:04:16.07 ID:mCMjTW2rK.net
- 更新乙であります
>>181
実はようやくお絵描き機能での色の増やし方に気が付きまして(笑)
ここまで来るのに2年半かかっているという(笑)
- 184 :ニャンコ坂46:2018/03/13(火) 00:19:23.73 ID:v387bF2jM.net
- >>183
((((;゚Д゚)))))))
- 185 :ニャンコ坂46:2018/03/13(火) 19:53:46.60 ID:iqiqq2xrM.net
- とりあえず保守
なーこ……なんだか顔が白いぞ……
https://i.imgur.com/SBm0fAY.jpg
- 186 :ニャンコ坂46:2018/03/13(火) 20:23:30.80 ID:iqiqq2xrM.net
- 「勿論、きっちり返してもらうわ。諭吉さんでね」
「何で俺んとこの諭吉さんには、みんな羽が生えてるんだろうな」
「ジェットエンジン搭載してるよりはマシでしょ?」
「とりあえず、レンタカー代とガソリン代はこっちに回してくれ」
「冗談よ。今回は貸しって事にしておくわ」
「逆に高く付きそうだ」
鳴滝と守屋茜のやり取りを、クリスは複雑な表情で聞いていた。あの駐車場での彼を見ていながら、何故に普通に会話出来るのだろう?
あの人形を一瞬で灰に変えた炎が、手品などではない事を守屋茜も気が付いているはずだ。いくら元相棒とは言え、ここまで寛容になれるものだろうか?
それらの疑問が、クリスを一層無言にさせていた。
そのクリスが見守る中、鳴滝はトランクから尾関梨香と自らの荷物を取り出し、彼女へと手を振った。その顔は子供の様に無邪気な笑顔を浮かべている。
「宿泊先が決まったらメールしておいて。朝に迎えに行くから」
助手席の窓から顔を出して、守屋茜が尾関梨香へと指示を出した。
「はい。いろいろすいません」
「気にしないで。お互いの為だもの」
深々と頭を下げた尾関へと、守屋茜は笑顔でそう答えていた。
「そっちは、どこに泊まるんだ?」
「コンカナ王国って所よ。昼間に行った鬼岳の近くらしいわ」
両手に荷物を抱えた鳴滝の問いかけに、守屋茜も即座に答える。それが当たり前かの様に。
「そっか。俺が言えた義理じゃないが、今夜はゆっくり休んでくれ」
そう言った鳴滝の顔はどこか苦笑いにも見えた。何故なら、その時の彼の脳裏には、欅の葉っぱでの長沢菜々香の顔が一瞬だが過ぎっていたからだ。
- 187 :ニャンコ坂46:2018/03/13(火) 20:59:03.28 ID:RDOVA/j4M.net
- 寝落ちしないように、ベランダで書いてます。
(´Д` )寒くない。春だなぁ……
- 188 :名無しって、書けない?:2018/03/13(火) 21:05:49.81 ID:TBE+Aqopa.net
- >>187
執筆のためにそこまでなさるニャンコ先生に敬意を表しますm(__)m
- 189 :ニャンコ坂46:2018/03/13(火) 21:36:23.52 ID:v387bF2jM.net
- 守屋茜達の車を見送った鳴滝と尾関は、当てもなく武家屋敷通りと呼ばれる道を歩き出した。
街灯が照らし出すその通りは、両脇に並び立つ石造りの塀以外には特に歴史を感じさせるものでは無かった。昼間であれば、また趣きも違うのだろうが。
「何処ですかね?全く分からないんですけど」
初めての土地である為か、尾関が戸惑いながら鳴滝へと問いかけた。
「Google先生に聞いてみるか」
初見の土地であるのは鳴滝も同じだった。
立っている者は親でも使えと言わんばかりに、鳴滝は手元のスマートフォンの画面の上に指を這わせた。
「確か、この辺のはずなんだが……」
スマートフォンの画面が照らし出す鳴滝の顔は、困った様に眉間に皺を寄せている。
「探偵が迷子って……笑えない」
そう呟いた尾関梨香の目の前で、鳴滝が不意にすぐ側の闇へと身構えた。その緊張感に、尾関も即座に身構える。
「お待ちしておりました」
身構えるその二人へと、穏やかな女の声が届いた。その声の主へと目をやった尾関の口が開いたまま動かなくなった。
まさに開いた口が塞がらないとはこの事だろう。
その声の主は、石造りの塀の隙間に開いた門の中の闇に立っていた。
淡い鶯色の着物を身に纏い、真っ直ぐに腰まで伸びる黒髪の中に浮かび上がる白い肌。その中にあって、穏やかな優しさを湛える微笑み。
江戸時代どころか、平安の時代へとタイムスリップしたかの様なその光景に、尾関はただ立ち竦むしかなかった。
「貴女は?」
その雰囲気に惑わされる事なく、?そう問いかけたのは鳴滝だった。
「私が……川口玲子です」
囁く様なか細い声でありながらも、全てを包み込むかのような柔らかなその声に、尾関は警戒を解いていた。
- 190 :ニャンコ坂46:2018/03/13(火) 21:55:05.52 ID:SBnWpmamd.net
- >>188
いやいやいやwwww
ぬくぬくとしてたら疲れから直ぐに寝ちゃうって理由だけですから。
そんな敬意を表される程の高尚な事ではありませんってww
- 191 :名無しって、書けない?:2018/03/14(水) 00:45:00.64 ID:QOMxitK6K.net
- ベランダで執筆のうえ更にアメブロまで更新乙です
http://o.8ch.net/13kze.png
- 192 :ニャンコ坂46:2018/03/14(水) 19:27:17.52 ID:QuKg9LH+dPi.net
- >>191
菅井様も大人っぽくなって来ましたね
- 193 :名無しって、書けない?:2018/03/14(水) 19:51:21.62 ID:QOMxitK6KPi.net
- >>192
でも…>>107
- 194 :ニャンコ坂46:2018/03/14(水) 20:24:45.68 ID:5Ek8K5d0MPi.net
- >>193
それは地雷ですぜ!旦那ww
- 195 :ニャンコ坂46:2018/03/14(水) 20:29:43.72 ID:5Ek8K5d0MPi.net
- 大人の時間に颯爽と現れるキティちゃん……
う〜ん。マニアには堪らないでしょう。
が!どうフォローしていいのやら……
- 196 :ニャンコ坂46:2018/03/14(水) 20:30:40.66 ID:5Ek8K5d0MPi.net
- 「お待ちしておりました……とは? 」
一方の鳴滝は警戒を解く事なく、即座にそう問い返していた。
「秋元市から来た探偵が、シスター長濱の話しを聞きに来るだろうと連絡がありました」
「どなたからですか?」
笑顔を絶やさず彼の問いに答えた川口玲子へと、鳴滝は更に問い返した。
「堂崎教会で受付をしている女性からです」
その言葉に鳴滝は目を閉じて暫しの間沈黙した後、目の前に立つ着物姿の麗人に笑顔を見せた。
「試しているんですか?私を……」
その鳴滝の言葉の意味が分からず、尾関梨香は背後から彼の顔を窺い見た。
「試すとは……どう言う事でしょうか?」
相変わらずの笑顔で、今度は川口玲子が問い返した。その笑顔が今は不自然に思えて、尾関梨香は再び警戒するように鳴滝の影へと身を寄せた。
「堂崎教会の受付の女性へは、フリーライターとしか伝えていません。私が探偵である事は彼女は知らないはずです」
笑顔を見せながらも、そう語る鳴滝の声には人間らしい抑揚は無かった。
その状態の鳴滝についてよく知る尾関は、敢えて静観していた。
鳴滝の声に抑揚が無くなる時……それは右手で顔を覆う時と同じなのだ。
つまり、彼の思考がフル回転している証しだった。ここで何かしらの言葉を挟んで邪魔をすると、後でこっ酷く叱られるのだ。
「あの子を軽くあしらっただけの事はありますね。探偵と言う肩書きは伊達ではない……恐れ入りました」
そう言いつつ、川口玲子は鳴滝へと会釈していた。
「あの子とは……平手友梨奈と受け取ってもよろしいでしょうか?」
「はい。しかし、こんな場所では何ですから、狭いですが家へとお上がり下さい」
そう言った川口玲子は、鳴滝と尾関を誘うように敷地内の家屋へと一人で歩き出した。
- 197 :ニャンコ坂46:2018/03/15(木) 03:42:44.62 ID:nePP8cqjM.net
- その誘いに抗う事なく、鳴滝もその足を進めていた。彼の背後に立つ尾関梨香も、その影を追うように敷地内へと足を踏み入れる。
あっさりと鳴滝の推理を受け入れた川口玲子という女性の長い黒髪に、彼女のこれまでの半生が映し出されているように思えて、闇夜の中ではあったが、尾関は目を凝らしてその後ろ姿を追っていた。
石塀の中には、小さな家庭菜園を傍らに携えた平屋建ての昭和を感じさせる家。武家屋敷とまではいかないが、古き良き時代の片鱗がそこにはあった。
「どうぞ、お上がり下さい」
川口玲子の言葉に誘われるまま、鳴滝は磨りガラスの引き戸の奥へと足を踏み入れる。無論、尾関梨香もその後に続く。
晩秋の冷えた空気に晒されていた尾関梨香の身体に、暖かな空気と共に食欲をそそる香りが漂って来た。
「お昼も召し上がっていらっしゃらないご様子ですので、質素ではありますが夕食をご用意させて頂きました」
それはまるで、鳴滝達がこの島へと足を踏み入れてからここまでを見ていたかの様な言葉だった。
「しかし……」
「初対面の人間に、何故にここまで?とでも仰りたいのでしょう?」
穏やかな威圧。そう表現すれば良いのだろうか。柔らかな物腰でありながら、川口玲子の言葉のひとつひとつに不思議な力が宿っていた。
「ええ……いや……まぁ……」
自らの考えを見透かされたかのように、彼には珍しく鳴滝は動揺していた。それは、やはり尾関梨香が初めて目にする彼の姿だった。
「敵視など致しておりません。でなければ、招き入れはしないでしょう。そうではありませんか?」
「ええ……」
やはり、この川口玲子という女は本当に鳴滝の心を読んでいるのではないか?彼の背後でその様子を見ていた尾関梨香にはそう思えた。
何故なら、彼女の語り口は鳴滝そのものだったからだ。例えるなら、女鳴滝。それしか思い浮かばない。
「さぁ、ご遠慮なく」
「では、お言葉に甘えて」
しかし、あくまで客をもてなす側として振る舞う川口玲子に、鳴滝は素直に彼女に従っていた。
- 198 :ニャンコ坂46:2018/03/15(木) 04:22:31.29 ID:n+V/65OCM.net
- 玄関を上がって招き入れられた部屋には、中心にあるテーブルの上に刺身が盛り付けられた大皿が置かれてあった。
「おお……」
尾関梨香の口から、思わずそんな感嘆の声が漏れる。
「せっかく西の外れの島までお越し頂いたのですから、地元のお魚でもと思いまして」
その尾関に対しても、彼女は笑顔で穏やかに言葉を綴った。
「美味しそう!」
「もちろんですとも。獲れたての新鮮なお魚を捌いたものですから。お刺身はお好きですか?」
「はい!三度の飯より大好きです!」
「良かったわ。喜んで頂けたようで」
すっとこどっこいな尾関梨香の言葉に、川口玲子の顔にも自然な笑みが溢れていた。
「早速ですが、平手友梨奈と長濱ねるの件についてお話しを伺いたいのですが」
その女二人の和やかなやり取りに、この訪問の本題を忘れそうになりながらも、鳴滝がそう口を開いて、二人の間を割いた。
「そう急がなくても。つい先頃の小説でもありましたよね?謎解きはディナーの……」
「なるほど。なるほど」
世間では、大事な事ほど二度言うらしいが、この鳴滝においては困った時に使う言葉だった。それを知る尾関は、傍らで人知れず笑みを浮かべていた。
「お刺身だけではと思いまして、長崎ならではの麺料理もお出ししますので、それまではこちらのお刺身をお召し上がり下さい」
まるで、どこかの旅館の仲居のように畏まって頭を下げた玲子へに対し、鳴滝と尾関も少し遅れてその頭を下げた。
「うわっ!ぷりぷり!」
玲子が奥の部屋へと姿を消した後に、早速、その刺身を口に頬張った尾関が口籠もりながらそう言った。
- 199 :ニャンコ坂46:2018/03/15(木) 04:40:36.74 ID:n+V/65OCM.net
- 「大事な事だから二度言った」は、三年半ほど前に、とあるゲームアプリのチャットで、私が最初に使ったという事は誰も知らない……。
- 200 :ニャンコ坂46:2018/03/15(木) 05:31:14.27 ID:ptpFZZQLM.net
- 「お前は犬か!」
その尾関へと、鳴滝がそう言い放つ。
「何がですか?」
「見ず知らずの人間が差し出した物を、そう簡単に口にするな」
「だって、お腹空いてたから」
「お前って奴は……」
次々と皿に盛られた刺身をその口に運ぶ尾関を見ながら、鳴滝は溜め息混じりの言葉を返す。
だが、鳴滝自身も幾らかの後悔の念は否めなかった。仕事に没頭すると、食さえ忘れてしまう自分自身の悪い癖を自覚していたからだ。
その刺身に舌鼓を打つ尾関を放置して、鳴滝は部屋の中を見渡した。
テレビに本棚。それに付随するかのように置かれた装飾品。どこの家庭にもあるかのような光景ではあったが、その中にあるひとつの写真に鳴滝は目を止めた。
「平手友梨奈……か?」
幾らか色褪せた写真の前に顔を寄せて、鳴滝は自問自答するかのようにそう呟いていた。
写真に写るのは、川口玲子とおぼしき女性と、その周囲に座る五人の幼い少女達。その中の一人に、鳴滝は平手友梨奈の面影を見出していた。
いや、平手友梨奈だけではない。その他の四人についても、その面影を辿る事が出来た。
長濱ねる、上村莉奈、渡辺梨加、そして……長沢菜々香。
「くそったれ……」
自らが推理した最悪の事実を裏付ける証拠を目の前にした鳴滝は、ただ目を閉じた。
「さぁ、お刺身だけでは足りないでしょう?本場のちゃんぽんをどうぞ」
湯気の立ち昇る大きめのお椀を尾関へと差し出した後、川口玲子は写真の前に立つ鳴滝へと目を向けた。
「宿命は変えられません。けれど、運命は変えられます。違いますか?」
そう問いかけた川口玲子へと、鳴滝は閉じた瞼を開いて彼女を見た。
「では、私と貴女との出会いは、運命ですか?それとも宿命ですか?」
問い返した鳴滝の言葉に、彼女は穏やかに微笑んだ。
「勿論、宿命です」
一点の曇りなく答えられた言葉に、鳴滝も彼女と同じく穏やかな笑みを浮かべた。
「では、従う他にはないでしょうね」
その鳴滝の言葉から暫しの沈黙を挟み、川口玲子は鳴滝へと顔を向けた。
「彼女達の運命を……一緒に変えて頂けますか?」
「お任せ下さい。それこそ鳴滝探偵事務所の得意分野です」
穏やかな笑みを失った川口玲子の顔に、再び笑みを浮かべさせたのは、鳴滝のその言葉だった。
- 201 :ニャンコ坂46:2018/03/15(木) 07:13:09.45 ID:nl+J08Qwd.net
- 眠い。クソ眠い。
けど、仕事っす!
- 202 :名無しって、書けない?:2018/03/15(木) 17:08:05.86 ID:FiwW3VtDK.net
- お疲れ様です保守
http://o.8ch.net/13lof.png
- 203 :ニャンコ坂46:2018/03/15(木) 22:16:35.86 ID:WYeIaJy0M.net
- >>202
保守ありがとうございます!
- 204 :名無しって、書けない?:2018/03/16(金) 11:31:32.50 ID:Q6PkyUs2K.net
- ひそかに漢字欅自撮りTVシリーズのコンプリートを狙いつつ保守
http://o.8ch.net/13mi5.png
- 205 :ニャンコ坂46:2018/03/16(金) 20:04:25.45 ID:8e0eForHd.net
- >>204
またまた保守ありがとうございます!
コンプしちゃって下さい
私は昨日から風邪ひいてしまい
グロッキーです(´Д` )
それでも仕事ちう
寝たい
- 206 :名無しって、書けない?:2018/03/17(土) 07:38:40.18 ID:gxYrZqoxK.net
- やっぱり先日のベランダで執筆がたたったんですかね
お大事にしてください
http://o.8ch.net/13nzd.png
↑
コンプリートへ向けてこれで12作目
描きにくいのが残っていくのでなかなか厳しい…
- 207 :ニャンコ坂46:2018/03/17(土) 12:58:17.48 ID:SKscLPZgd.net
- >>206
原因はベランダかぁ(´Д` )やっちまったなぁ
喉が若干やられたままですが、熱も下がって
無事復活しました。
コンプリート頑張って下さい!
- 208 :ニャンコ坂46:2018/03/17(土) 12:58:53.15 ID:SKscLPZgd.net
- 「彼女達は、今どこに?」
「近くに居ります」
やっと、出されたちゃんぽんに口をつけた鳴滝が、合間に玲子へと問い、彼女はお茶を出しながらそう答える。
それが尾関梨香には不思議な光景に思えて、じっとその二人を観察していた。まだ会って一時間も経ていないにも関わらず、ずっと昔から知り合いのような。
不躾な鳴滝だが、玲子は玲子で丁寧ながらもその言葉には遠慮がない。
「近くとは?」
「お食事中にするお話ではありません」
尚も問う鳴滝を、ピシャリと玲子が諌める。
それはまるで悪戯小僧が母親に怒られている姿にも思えて、尾関は堪え切れぬ笑いを悟られぬように鳴滝から顔を背けた。
「ですよね」
鳴滝は鳴滝で妙に納得したらしく、ひたすら麺を口に押し込んでいた。
「お嬢さんは、尾関梨香さんでよろしかったかしら?」
忙しく動き回っていた川口玲子が、着物を覆っていた割烹着を外しながら尾関の前に座った。その言葉に、自分が名乗っていなかった事に気付き、尾関は背筋を伸ばした。
「はい。尾関梨香、ぴちぴちの二十歳です」
尾関は、自分でも何故にそんな事を言ったのか分からない。突然、名前を呼ばれた事と、お嬢さんと呼ばれた事にも焦っていたのかもしれない。
「ぴちぴちじゃなくて、ぷくぷくの間違いだ。はい、やり直し!」
当然の様に鳴滝から煽りが入った。だが、今回だけは、それが尾関には助け船にも思えた。初対面の、しかも歳上の女性の前で、ぴちぴちは失礼だったかもしれないと少しばかり彼女も焦っていたからだ。
「尾関梨香。ピカピカの二十歳です!」
やってしまった。鳴滝の煽りに、ついついいつもの調子で言い返してしまった。妙な沈黙がその場を包む。
「こいつの得意技は、自分で自分の墓穴を掘る事なんです。既にお気付きでしょうが」
その沈黙を破ったのは鳴滝のその一言だった。だが、その言葉に、玲子は右手で口元を覆いつつ笑い出した。
「本当に面白い子ですね」
「こいつから面白さを取ったら、ただの狸ですけどね」
- 209 :ニャンコ坂46:2018/03/17(土) 13:36:28.44 ID:SKscLPZgd.net
- その鳴滝の言葉に、尾関は返す言葉もなく黙り込んだ。それは、自らの発言による恥ずかしさからと言うわけではない。
どう言葉にすれば良いのか。目の前にいる鳴滝と玲子の間にある目に見えない共通する何か……とでも言えばいいのか。
自分とは何かが違う感覚で語り合っているような。尾関には、そんな気がしてならなかったのだ。
「デザートをお出ししまょう。鳴滝さんは召し上がられますか?」
やっと、ちゃんぽんのスープまで飲み干した鳴滝へと玲子が問いかけた。
「それが最後の関門であるとするなら、是非にでも」
「関所はこれが最後です」
素直に他人の好意を受け入れられない彼の性格を熟知している自分ならまだしも、初対面の玲子には失礼なのでは?と、冷や汗をかく尾関の予想の斜め上の言葉を玲子は返して来た。
「ありがとうございます。頂きます」
その鳴滝の言葉に、尾関は目を丸くした。
何故なら、彼は甘ったるいものが苦手なのだ。その彼に、砂糖の塊の様なデザートを認めさせるとは……。
「直ぐにお出し致します」
それだけ言い残し、玲子は奥の部屋へと姿を消した。
「大丈夫ですか?」
そこで、すかさず尾関が鳴滝へと小声で問いかけた。
「何言ってんだ?お前」
鳴滝はやはり常套句で返す。
「だって……甘いものは苦手じゃ?」
心配する尾関に構わず、鳴滝は右手の親指を立てた。
「ハニートラップは大好きだ」
「最低……」
そんな二人のやり取りに構わず、玲子はお盆に乗せた何かしらを運んで来た。
「私の得意なデザートです。お口に合えば良いのですが……」
- 210 :ニャンコ坂46:2018/03/17(土) 18:50:16.42 ID:tIfuTTVbM.net
- そう言って、玲子が二人の前に差し出したのは、ココアパウダーがふんだんに振りかけられたガトーショコラであった。
「レイコの……ガトーショコラ……」
「いきなり呼び捨てかよ」
「あ、いえ……すいません」
思わずそう口にしてしまった尾関へと、これまた思わず口にしたような鳴滝の合いの手の如きツッコミが入った。にも関わらず、尾関は鳴滝にではなく川口玲子に対して向き直っていた。
「お気になさらず。さぁ、どうぞ」
まるで小さな子供をあやすかの様に、かの川口玲子の顔には笑顔が溢れる。
これが長濱ねるや平手友梨奈が子供の頃に見ていた世界なのか……そんな思いの中で、尾関はガトーショコラを口に含んだ。
「美味しい……」
それが尾関の素直な言葉だった。おそらくは冷凍されていたのであろうが、程よく溶けたその食感と甘みとが、舌の上で解けて広がる。先に出されたちゃんぽんで火照った口内に、それはちょうどよい刺激だったのだ。
「うん。こいつは……」
甘いものが苦手な酒呑みの鳴滝でさえ、このデザートは口に合ったらしい。
「お気に召して頂けたようで何よりです」
それは穏やかな時間だった。だが、それだけに、尾関は敢えてゆっくりと味わっていた。この後に知る事になるであろう哀しい現実に心構えする為に。
- 211 :名無しって、書けない?:2018/03/17(土) 19:27:55.57 ID:nJXhE8m6a.net
- 快気祝いの連続投稿乙でありますm(__)m
- 212 :名無しって、書けない?:2018/03/17(土) 19:38:28.45 ID:LBsrVknA0.net
- >>210
ここで乃木坂ネタですかw
あの回はなぁちゃんの棒読みがおもしろかったですね
- 213 :ニャンコ坂46:2018/03/17(土) 19:50:41.46 ID:MNt14DPxM.net
- >>211
ありがとうございます!
まだ頭がクラクラしていますが、
それで逆にハイテンションになって
後先考えずに書き進めるパワーにww
- 214 :ニャンコ坂46:2018/03/17(土) 19:51:52.64 ID:MNt14DPxM.net
- >>212
分かってくれる人がいて嬉しいです!
大阪さん、なかなかのマニアですねww
- 215 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 07:33:10.38 ID:XZjdkRKfM.net
- ボンボンボンと時を告げる音がした。
その音を数えながら尾関梨香がそちらへと目をやると、そこには今時珍しい柱時計があった。時刻はちょうど九時になったところだ。
振り子の左右の動きに催眠をかけられた様に、尾関はまだ知るはずもない川口玲子と平手友梨奈、長濱ねるの過去へと思いを馳せていた。
「今日はどこへお泊りですか?」
その虚ろな目の尾関へと、玲子が問いかけた。
「それが……」
「良ければ今夜は、こちらにお泊り下さい。時間を気にしていては、ゆっくりとお話しも出来ないでしょうし」
鳴滝と同じく、尾関の一言で全てを察した玲子が鳴滝へと申し入れていた。
「ありがたいです」
言葉少なではあるが、鳴滝には珍しく素直に玲子の厚意を素直に受け入れていた。
「さて、何からお話しすれば良いのか……」
綺麗に片付けられたテーブルの上には湯呑みが三つ。並べられた湯呑みに対するひとつの湯呑みを手にした川口玲子が、躊躇いながらそう口にした。
「まず、あの五人は、平手友梨奈、長濱ねる、上村莉奈、渡辺梨加、そして長沢菜々香で間違いありませんね」
急かす訳ではないだろうが、川口玲子の背後にある写真を指差しながら、鳴滝が本題のひとつへと繋がる問いを投げかけた。
「はい。確かに彼女達です」
「つまり、彼女達は慈愛院という施設にいた子供達だと……」
「ええ。彼女達がどの様な状況からあの施設へと来たのかまでは、私の口からは語れません」
「勿論、そこまでは望んでいません。私が知りたいのは、何があったかだけです」
そこで玲子は一度目を閉じた。背筋を伸ばして座る凛とした姿と長い黒髪。綺麗に整えられた眉に薄化粧。日本人特有の清楚な美しさに、鳴滝はいつしか魅入られていた。
- 216 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 07:34:01.29 ID:XZjdkRKfM.net
- だが、次の瞬間、鳴滝と尾関は衝撃に言葉を失った。
「慟哭を鎮めて生きる。それが、この九年間の私だったように思います」
再び目を開いてそう語った玲子の瞳は金色へと変わっていたのだ。間近で見るその瞳に、二人は呼吸さえ忘れたかのように動け出せずにいた。
「驚かれたでしょう。ごめんなさいね」
尾関へとそう言いつつ笑顔を向けた玲子の目は、瞬時に元の黒へと戻っていた。
「まず、この目の秘密からお話しした方が良いでしょうね」
「ご存知なんですか!」
食いつきそうな勢いで鳴滝が身を乗り出した。その彼へと、玲子はゆっくりと頭を縦に振った。尾関梨香はその間、ぽかんと口を開けたまま彼女を見ている。
「はい。存じ上げております」
「是非、お聞かせください」
そう言った鳴滝は、スーツの内ポケットから取り出した手帳とボールペンをテーブルの上に置いた。
「この島の沖に、いくつもの潜水艦が沈んでいるのをご存知ですか?」
「いえ……」
「第二次世界大戦終結後、GHQによって沈められた日本軍の潜水艦が二十四隻あるそうです。しかし、その海域とは違う場所で、自らの意思で海底で眠りについた潜水艦があります」
「それは?」
「当時、日本の統治下にあった台湾から、ある任務を遂行する為に、この島へとたどり着いた潜水艦です」
「その任務とは?」
「軍事機密の輸送……」
そう予想外の展開に、尾関梨香はただ呆然と二人の会話を聞いていた。ただひとつ、彼女が予感出来きたのは、自分達が踏み込んでは行けない世界へと足を踏み入れようとしている事だけであった。
- 217 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 07:42:56.55 ID:XZjdkRKfM.net
- 「軍事機密……」
そう呟いた鳴滝がその顔を覆おうとした右手を、尾関梨香が左手で掴んで止めた。それが彼女に出来る最高の反抗だった。
「大日本帝国陸軍軍事機密……第404号」
その二人に構わず、玲子は淡々とその名を告げた。そこで、鳴滝は僅かに首を傾げた。
「何故、そこまでご存知なのですか?」
「ある場所に隠されていたそれを、私が最初に見つけたからです」
鳴滝の問いに、玲子は即座にそう答えた。
「ある場所とは……まさか……」
「慈愛院の敷地の一角です」
「それは……その軍事機密とは、一体どの様なものだったのですか?」
流石の鳴滝も、今回ばかりは戸惑っている様だった。単なる女子高生の家出から、殺し屋、ついには大日本帝国陸軍の機密にまで話が及ぶとは想像も出来ないのは当然だろう。
むしろ、尾関梨香の方が落ち着いていた。
彼女は素直に玲子の言葉を受け入れていたからだ。
難しく考えても仕方がない。それはある意味、開き直った者の強味とも言えなくもない。
「私が最初に見た時は、一センチ角の黒い立方体でした。しかし、手の平に乗せると、青へと色を変えながら溶けてしまったのです」
「溶けた?では、もうそれ自体は無くなってしまったのですか?」
「いえ。溶けただけで、液体状のまま私の手の平の中で動いていました」
「動いた?……」
疑問に次ぐ疑問の連想に、鳴滝は目を見開いて固まった。
- 218 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 07:50:29.99 ID:XZjdkRKfM.net
- ここから先は、SPECみたいな能力者バトルを取り入れてみようかと思います。
東村芽依、加藤史帆、渡辺梨加以外は決めていないので、欅坂メンバーで似合いそうな能力案があれば募集します。
- 219 :名無しって、書けない?:2018/03/18(日) 08:09:59.25 ID:LCBhaZhGK.net
- 更新お疲れ様ですm(_ _)m
楽しみです
ちなみにアメブロのほうのイラストのタイトルが若干違っているような…まあ、そう見えなくもないのかな?
- 220 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 08:16:06.86 ID:XZjdkRKfM.net
- >>219
あれ?違いました?
- 221 :名無しって、書けない?:2018/03/18(日) 08:26:01.55 ID:LCBhaZhGK.net
- >>220
>>123でほめていただいた時と名前が違うんで(笑)
これは例によって似てない(笑)
http://o.8ch.net/13oxz.png
一応14人クリアで残り3分の1です
- 222 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 08:31:31.45 ID:XZjdkRKfM.net
- >>221
ごめんなさい!
思いっきり間違ってましたww
全然別人の名前だった。
何で気づかなかったんだろう
コンプリート順調に進んでますね
どんどん可愛くなってるし
- 223 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 18:38:00.86 ID:sK4ooTBDM.net
- 驚愕する鳴滝の隣で、尾関梨香はあっけらかんとした表情で玲子の話しに耳を傾けていた。その彼女を見た玲子は、安堵したかのように微笑みを見せた。
「黒い物質は、私の鼓動に合わせて脈打つように動いていたのです。まるで生き物のように」
その玲子の言葉で、鳴滝の頭の中に真っ先に浮かんだのは磁性流体と呼ばれるものだ。その物質も同じような動きをするが、その動きは磁場を発生させる磁石によるのであって、玲子の手にしたものとは別物だ。
「その黒い物質と、玲子さんの目とどういう関係があるんですか?」
考え込む鳴滝に代わり、尾関梨香が素朴な疑問を投げかけた。
「私の目がこうなったのは、その黒い物質を触ったからなの」
そう答えを返す玲子の瞳は、一瞬だけ金色へと変わり再び黒へと戻っていた。
「つまり、金色の瞳を持つ者は、その物質に触れたものであると?」
右の人差し指をこめかみに当てながら、鳴滝が目を閉じたまま問い返す。
「そう言う事になります。そして、この金色の瞳は、誰にでも見えるものではないのです」
「と、言いますと?」
「詳しくは断言出来ませんが、ある条件を満たした人間のみが見えるようです」
「試された事があるんですか?」
その問いに、玲子は沈黙した。その沈黙にこそ、彼女が抑えて来た慟哭の意味があるように思えて、鳴滝は静かに彼女の言葉を待った。
- 224 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 18:45:36.38 ID:sK4ooTBDM.net
- 雑ですが
ずみこ覚醒バージョン
https://i.imgur.com/j3AfKSS.jpg
- 225 :名無しって、書けない?:2018/03/18(日) 18:54:03.60 ID:LCBhaZhGK.net
- 更新乙です
秘密が徐々に明かされる展開にドキドキします
http://o.8ch.net/13pit.png
↑
これで残り5人まで来ました
総レス数 731
363 KB
新着レスの表示
掲示板に戻る
全部
前100
次100
最新50
read.cgi ver.24052200