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【欅坂小説】欅坂の道化師【2冊目】

1 :名無しって、書けない?:2018/02/07(水) 21:39:51.64 ID:lF44R90tM.net
欅坂46のメンバーを登場人物とした小説を書いています。メンバー以外の人物はもちろん架空の人物です。前スレはまだ書き込めますが、長文が書けなくなった為に新しくスレを立ち上げました。

前スレ
http://itest.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1509967598/

保管倉庫
https://ameblo.jp/nyankozaka/

186 :ニャンコ坂46:2018/03/13(火) 20:23:30.80 ID:iqiqq2xrM.net
「勿論、きっちり返してもらうわ。諭吉さんでね」

「何で俺んとこの諭吉さんには、みんな羽が生えてるんだろうな」

「ジェットエンジン搭載してるよりはマシでしょ?」

「とりあえず、レンタカー代とガソリン代はこっちに回してくれ」

「冗談よ。今回は貸しって事にしておくわ」

「逆に高く付きそうだ」

鳴滝と守屋茜のやり取りを、クリスは複雑な表情で聞いていた。あの駐車場での彼を見ていながら、何故に普通に会話出来るのだろう?
あの人形を一瞬で灰に変えた炎が、手品などではない事を守屋茜も気が付いているはずだ。いくら元相棒とは言え、ここまで寛容になれるものだろうか?
それらの疑問が、クリスを一層無言にさせていた。
そのクリスが見守る中、鳴滝はトランクから尾関梨香と自らの荷物を取り出し、彼女へと手を振った。その顔は子供の様に無邪気な笑顔を浮かべている。

「宿泊先が決まったらメールしておいて。朝に迎えに行くから」

助手席の窓から顔を出して、守屋茜が尾関梨香へと指示を出した。

「はい。いろいろすいません」

「気にしないで。お互いの為だもの」

深々と頭を下げた尾関へと、守屋茜は笑顔でそう答えていた。

「そっちは、どこに泊まるんだ?」

「コンカナ王国って所よ。昼間に行った鬼岳の近くらしいわ」

両手に荷物を抱えた鳴滝の問いかけに、守屋茜も即座に答える。それが当たり前かの様に。

「そっか。俺が言えた義理じゃないが、今夜はゆっくり休んでくれ」

そう言った鳴滝の顔はどこか苦笑いにも見えた。何故なら、その時の彼の脳裏には、欅の葉っぱでの長沢菜々香の顔が一瞬だが過ぎっていたからだ。

187 :ニャンコ坂46:2018/03/13(火) 20:59:03.28 ID:RDOVA/j4M.net
寝落ちしないように、ベランダで書いてます。
(´Д` )寒くない。春だなぁ……

188 :名無しって、書けない?:2018/03/13(火) 21:05:49.81 ID:TBE+Aqopa.net
>>187
執筆のためにそこまでなさるニャンコ先生に敬意を表しますm(__)m

189 :ニャンコ坂46:2018/03/13(火) 21:36:23.52 ID:v387bF2jM.net
守屋茜達の車を見送った鳴滝と尾関は、当てもなく武家屋敷通りと呼ばれる道を歩き出した。
街灯が照らし出すその通りは、両脇に並び立つ石造りの塀以外には特に歴史を感じさせるものでは無かった。昼間であれば、また趣きも違うのだろうが。

「何処ですかね?全く分からないんですけど」

初めての土地である為か、尾関が戸惑いながら鳴滝へと問いかけた。

「Google先生に聞いてみるか」

初見の土地であるのは鳴滝も同じだった。
立っている者は親でも使えと言わんばかりに、鳴滝は手元のスマートフォンの画面の上に指を這わせた。

「確か、この辺のはずなんだが……」

スマートフォンの画面が照らし出す鳴滝の顔は、困った様に眉間に皺を寄せている。

「探偵が迷子って……笑えない」

そう呟いた尾関梨香の目の前で、鳴滝が不意にすぐ側の闇へと身構えた。その緊張感に、尾関も即座に身構える。

「お待ちしておりました」

身構えるその二人へと、穏やかな女の声が届いた。その声の主へと目をやった尾関の口が開いたまま動かなくなった。
まさに開いた口が塞がらないとはこの事だろう。
その声の主は、石造りの塀の隙間に開いた門の中の闇に立っていた。
淡い鶯色の着物を身に纏い、真っ直ぐに腰まで伸びる黒髪の中に浮かび上がる白い肌。その中にあって、穏やかな優しさを湛える微笑み。
江戸時代どころか、平安の時代へとタイムスリップしたかの様なその光景に、尾関はただ立ち竦むしかなかった。

「貴女は?」

その雰囲気に惑わされる事なく、?そう問いかけたのは鳴滝だった。

「私が……川口玲子です」

囁く様なか細い声でありながらも、全てを包み込むかのような柔らかなその声に、尾関は警戒を解いていた。

190 :ニャンコ坂46:2018/03/13(火) 21:55:05.52 ID:SBnWpmamd.net
>>188
いやいやいやwwww
ぬくぬくとしてたら疲れから直ぐに寝ちゃうって理由だけですから。
そんな敬意を表される程の高尚な事ではありませんってww

191 :名無しって、書けない?:2018/03/14(水) 00:45:00.64 ID:QOMxitK6K.net
ベランダで執筆のうえ更にアメブロまで更新乙です
http://o.8ch.net/13kze.png

192 :ニャンコ坂46:2018/03/14(水) 19:27:17.52 ID:QuKg9LH+dPi.net
>>191
菅井様も大人っぽくなって来ましたね

193 :名無しって、書けない?:2018/03/14(水) 19:51:21.62 ID:QOMxitK6KPi.net
>>192
でも…>>107

194 :ニャンコ坂46:2018/03/14(水) 20:24:45.68 ID:5Ek8K5d0MPi.net
>>193
それは地雷ですぜ!旦那ww

195 :ニャンコ坂46:2018/03/14(水) 20:29:43.72 ID:5Ek8K5d0MPi.net
大人の時間に颯爽と現れるキティちゃん……
う〜ん。マニアには堪らないでしょう。
が!どうフォローしていいのやら……

196 :ニャンコ坂46:2018/03/14(水) 20:30:40.66 ID:5Ek8K5d0MPi.net
「お待ちしておりました……とは? 」

一方の鳴滝は警戒を解く事なく、即座にそう問い返していた。

「秋元市から来た探偵が、シスター長濱の話しを聞きに来るだろうと連絡がありました」

「どなたからですか?」

笑顔を絶やさず彼の問いに答えた川口玲子へと、鳴滝は更に問い返した。

「堂崎教会で受付をしている女性からです」

その言葉に鳴滝は目を閉じて暫しの間沈黙した後、目の前に立つ着物姿の麗人に笑顔を見せた。

「試しているんですか?私を……」

その鳴滝の言葉の意味が分からず、尾関梨香は背後から彼の顔を窺い見た。

「試すとは……どう言う事でしょうか?」

相変わらずの笑顔で、今度は川口玲子が問い返した。その笑顔が今は不自然に思えて、尾関梨香は再び警戒するように鳴滝の影へと身を寄せた。

「堂崎教会の受付の女性へは、フリーライターとしか伝えていません。私が探偵である事は彼女は知らないはずです」

笑顔を見せながらも、そう語る鳴滝の声には人間らしい抑揚は無かった。
その状態の鳴滝についてよく知る尾関は、敢えて静観していた。
鳴滝の声に抑揚が無くなる時……それは右手で顔を覆う時と同じなのだ。
つまり、彼の思考がフル回転している証しだった。ここで何かしらの言葉を挟んで邪魔をすると、後でこっ酷く叱られるのだ。

「あの子を軽くあしらっただけの事はありますね。探偵と言う肩書きは伊達ではない……恐れ入りました」

そう言いつつ、川口玲子は鳴滝へと会釈していた。

「あの子とは……平手友梨奈と受け取ってもよろしいでしょうか?」

「はい。しかし、こんな場所では何ですから、狭いですが家へとお上がり下さい」

そう言った川口玲子は、鳴滝と尾関を誘うように敷地内の家屋へと一人で歩き出した。

197 :ニャンコ坂46:2018/03/15(木) 03:42:44.62 ID:nePP8cqjM.net
その誘いに抗う事なく、鳴滝もその足を進めていた。彼の背後に立つ尾関梨香も、その影を追うように敷地内へと足を踏み入れる。
あっさりと鳴滝の推理を受け入れた川口玲子という女性の長い黒髪に、彼女のこれまでの半生が映し出されているように思えて、闇夜の中ではあったが、尾関は目を凝らしてその後ろ姿を追っていた。
石塀の中には、小さな家庭菜園を傍らに携えた平屋建ての昭和を感じさせる家。武家屋敷とまではいかないが、古き良き時代の片鱗がそこにはあった。

「どうぞ、お上がり下さい」

川口玲子の言葉に誘われるまま、鳴滝は磨りガラスの引き戸の奥へと足を踏み入れる。無論、尾関梨香もその後に続く。
晩秋の冷えた空気に晒されていた尾関梨香の身体に、暖かな空気と共に食欲をそそる香りが漂って来た。

「お昼も召し上がっていらっしゃらないご様子ですので、質素ではありますが夕食をご用意させて頂きました」

それはまるで、鳴滝達がこの島へと足を踏み入れてからここまでを見ていたかの様な言葉だった。

「しかし……」

「初対面の人間に、何故にここまで?とでも仰りたいのでしょう?」

穏やかな威圧。そう表現すれば良いのだろうか。柔らかな物腰でありながら、川口玲子の言葉のひとつひとつに不思議な力が宿っていた。

「ええ……いや……まぁ……」

自らの考えを見透かされたかのように、彼には珍しく鳴滝は動揺していた。それは、やはり尾関梨香が初めて目にする彼の姿だった。

「敵視など致しておりません。でなければ、招き入れはしないでしょう。そうではありませんか?」

「ええ……」

やはり、この川口玲子という女は本当に鳴滝の心を読んでいるのではないか?彼の背後でその様子を見ていた尾関梨香にはそう思えた。
何故なら、彼女の語り口は鳴滝そのものだったからだ。例えるなら、女鳴滝。それしか思い浮かばない。

「さぁ、ご遠慮なく」

「では、お言葉に甘えて」

しかし、あくまで客をもてなす側として振る舞う川口玲子に、鳴滝は素直に彼女に従っていた。

198 :ニャンコ坂46:2018/03/15(木) 04:22:31.29 ID:n+V/65OCM.net
玄関を上がって招き入れられた部屋には、中心にあるテーブルの上に刺身が盛り付けられた大皿が置かれてあった。

「おお……」

尾関梨香の口から、思わずそんな感嘆の声が漏れる。

「せっかく西の外れの島までお越し頂いたのですから、地元のお魚でもと思いまして」

その尾関に対しても、彼女は笑顔で穏やかに言葉を綴った。

「美味しそう!」

「もちろんですとも。獲れたての新鮮なお魚を捌いたものですから。お刺身はお好きですか?」

「はい!三度の飯より大好きです!」

「良かったわ。喜んで頂けたようで」

すっとこどっこいな尾関梨香の言葉に、川口玲子の顔にも自然な笑みが溢れていた。

「早速ですが、平手友梨奈と長濱ねるの件についてお話しを伺いたいのですが」

その女二人の和やかなやり取りに、この訪問の本題を忘れそうになりながらも、鳴滝がそう口を開いて、二人の間を割いた。

「そう急がなくても。つい先頃の小説でもありましたよね?謎解きはディナーの……」

「なるほど。なるほど」

世間では、大事な事ほど二度言うらしいが、この鳴滝においては困った時に使う言葉だった。それを知る尾関は、傍らで人知れず笑みを浮かべていた。

「お刺身だけではと思いまして、長崎ならではの麺料理もお出ししますので、それまではこちらのお刺身をお召し上がり下さい」

まるで、どこかの旅館の仲居のように畏まって頭を下げた玲子へに対し、鳴滝と尾関も少し遅れてその頭を下げた。

「うわっ!ぷりぷり!」

玲子が奥の部屋へと姿を消した後に、早速、その刺身を口に頬張った尾関が口籠もりながらそう言った。

199 :ニャンコ坂46:2018/03/15(木) 04:40:36.74 ID:n+V/65OCM.net
「大事な事だから二度言った」は、三年半ほど前に、とあるゲームアプリのチャットで、私が最初に使ったという事は誰も知らない……。

200 :ニャンコ坂46:2018/03/15(木) 05:31:14.27 ID:ptpFZZQLM.net
「お前は犬か!」

その尾関へと、鳴滝がそう言い放つ。

「何がですか?」

「見ず知らずの人間が差し出した物を、そう簡単に口にするな」

「だって、お腹空いてたから」

「お前って奴は……」

次々と皿に盛られた刺身をその口に運ぶ尾関を見ながら、鳴滝は溜め息混じりの言葉を返す。
だが、鳴滝自身も幾らかの後悔の念は否めなかった。仕事に没頭すると、食さえ忘れてしまう自分自身の悪い癖を自覚していたからだ。
その刺身に舌鼓を打つ尾関を放置して、鳴滝は部屋の中を見渡した。
テレビに本棚。それに付随するかのように置かれた装飾品。どこの家庭にもあるかのような光景ではあったが、その中にあるひとつの写真に鳴滝は目を止めた。

「平手友梨奈……か?」

幾らか色褪せた写真の前に顔を寄せて、鳴滝は自問自答するかのようにそう呟いていた。
写真に写るのは、川口玲子とおぼしき女性と、その周囲に座る五人の幼い少女達。その中の一人に、鳴滝は平手友梨奈の面影を見出していた。
いや、平手友梨奈だけではない。その他の四人についても、その面影を辿る事が出来た。
長濱ねる、上村莉奈、渡辺梨加、そして……長沢菜々香。

「くそったれ……」

自らが推理した最悪の事実を裏付ける証拠を目の前にした鳴滝は、ただ目を閉じた。

「さぁ、お刺身だけでは足りないでしょう?本場のちゃんぽんをどうぞ」

湯気の立ち昇る大きめのお椀を尾関へと差し出した後、川口玲子は写真の前に立つ鳴滝へと目を向けた。

「宿命は変えられません。けれど、運命は変えられます。違いますか?」

そう問いかけた川口玲子へと、鳴滝は閉じた瞼を開いて彼女を見た。

「では、私と貴女との出会いは、運命ですか?それとも宿命ですか?」

問い返した鳴滝の言葉に、彼女は穏やかに微笑んだ。

「勿論、宿命です」

一点の曇りなく答えられた言葉に、鳴滝も彼女と同じく穏やかな笑みを浮かべた。

「では、従う他にはないでしょうね」

その鳴滝の言葉から暫しの沈黙を挟み、川口玲子は鳴滝へと顔を向けた。

「彼女達の運命を……一緒に変えて頂けますか?」

「お任せ下さい。それこそ鳴滝探偵事務所の得意分野です」

穏やかな笑みを失った川口玲子の顔に、再び笑みを浮かべさせたのは、鳴滝のその言葉だった。

201 :ニャンコ坂46:2018/03/15(木) 07:13:09.45 ID:nl+J08Qwd.net
眠い。クソ眠い。
けど、仕事っす!

202 :名無しって、書けない?:2018/03/15(木) 17:08:05.86 ID:FiwW3VtDK.net
お疲れ様です保守
http://o.8ch.net/13lof.png

203 :ニャンコ坂46:2018/03/15(木) 22:16:35.86 ID:WYeIaJy0M.net
>>202
保守ありがとうございます!

204 :名無しって、書けない?:2018/03/16(金) 11:31:32.50 ID:Q6PkyUs2K.net
ひそかに漢字欅自撮りTVシリーズのコンプリートを狙いつつ保守
http://o.8ch.net/13mi5.png

205 :ニャンコ坂46:2018/03/16(金) 20:04:25.45 ID:8e0eForHd.net
>>204
またまた保守ありがとうございます!
コンプしちゃって下さい

私は昨日から風邪ひいてしまい
グロッキーです(´Д` )
それでも仕事ちう
寝たい

206 :名無しって、書けない?:2018/03/17(土) 07:38:40.18 ID:gxYrZqoxK.net
やっぱり先日のベランダで執筆がたたったんですかね
お大事にしてください
http://o.8ch.net/13nzd.png

コンプリートへ向けてこれで12作目
描きにくいのが残っていくのでなかなか厳しい…

207 :ニャンコ坂46:2018/03/17(土) 12:58:17.48 ID:SKscLPZgd.net
>>206
原因はベランダかぁ(´Д` )やっちまったなぁ
喉が若干やられたままですが、熱も下がって
無事復活しました。

コンプリート頑張って下さい!

208 :ニャンコ坂46:2018/03/17(土) 12:58:53.15 ID:SKscLPZgd.net
「彼女達は、今どこに?」

「近くに居ります」

やっと、出されたちゃんぽんに口をつけた鳴滝が、合間に玲子へと問い、彼女はお茶を出しながらそう答える。
それが尾関梨香には不思議な光景に思えて、じっとその二人を観察していた。まだ会って一時間も経ていないにも関わらず、ずっと昔から知り合いのような。
不躾な鳴滝だが、玲子は玲子で丁寧ながらもその言葉には遠慮がない。

「近くとは?」

「お食事中にするお話ではありません」

尚も問う鳴滝を、ピシャリと玲子が諌める。
それはまるで悪戯小僧が母親に怒られている姿にも思えて、尾関は堪え切れぬ笑いを悟られぬように鳴滝から顔を背けた。

「ですよね」

鳴滝は鳴滝で妙に納得したらしく、ひたすら麺を口に押し込んでいた。

「お嬢さんは、尾関梨香さんでよろしかったかしら?」

忙しく動き回っていた川口玲子が、着物を覆っていた割烹着を外しながら尾関の前に座った。その言葉に、自分が名乗っていなかった事に気付き、尾関は背筋を伸ばした。

「はい。尾関梨香、ぴちぴちの二十歳です」

尾関は、自分でも何故にそんな事を言ったのか分からない。突然、名前を呼ばれた事と、お嬢さんと呼ばれた事にも焦っていたのかもしれない。

「ぴちぴちじゃなくて、ぷくぷくの間違いだ。はい、やり直し!」

当然の様に鳴滝から煽りが入った。だが、今回だけは、それが尾関には助け船にも思えた。初対面の、しかも歳上の女性の前で、ぴちぴちは失礼だったかもしれないと少しばかり彼女も焦っていたからだ。

「尾関梨香。ピカピカの二十歳です!」

やってしまった。鳴滝の煽りに、ついついいつもの調子で言い返してしまった。妙な沈黙がその場を包む。

「こいつの得意技は、自分で自分の墓穴を掘る事なんです。既にお気付きでしょうが」

その沈黙を破ったのは鳴滝のその一言だった。だが、その言葉に、玲子は右手で口元を覆いつつ笑い出した。

「本当に面白い子ですね」

「こいつから面白さを取ったら、ただの狸ですけどね」

209 :ニャンコ坂46:2018/03/17(土) 13:36:28.44 ID:SKscLPZgd.net
その鳴滝の言葉に、尾関は返す言葉もなく黙り込んだ。それは、自らの発言による恥ずかしさからと言うわけではない。

どう言葉にすれば良いのか。目の前にいる鳴滝と玲子の間にある目に見えない共通する何か……とでも言えばいいのか。

自分とは何かが違う感覚で語り合っているような。尾関には、そんな気がしてならなかったのだ。

「デザートをお出ししまょう。鳴滝さんは召し上がられますか?」

やっと、ちゃんぽんのスープまで飲み干した鳴滝へと玲子が問いかけた。

「それが最後の関門であるとするなら、是非にでも」

「関所はこれが最後です」

素直に他人の好意を受け入れられない彼の性格を熟知している自分ならまだしも、初対面の玲子には失礼なのでは?と、冷や汗をかく尾関の予想の斜め上の言葉を玲子は返して来た。

「ありがとうございます。頂きます」

その鳴滝の言葉に、尾関は目を丸くした。
何故なら、彼は甘ったるいものが苦手なのだ。その彼に、砂糖の塊の様なデザートを認めさせるとは……。

「直ぐにお出し致します」

それだけ言い残し、玲子は奥の部屋へと姿を消した。

「大丈夫ですか?」

そこで、すかさず尾関が鳴滝へと小声で問いかけた。

「何言ってんだ?お前」

鳴滝はやはり常套句で返す。

「だって……甘いものは苦手じゃ?」

心配する尾関に構わず、鳴滝は右手の親指を立てた。

「ハニートラップは大好きだ」

「最低……」

そんな二人のやり取りに構わず、玲子はお盆に乗せた何かしらを運んで来た。

「私の得意なデザートです。お口に合えば良いのですが……」

210 :ニャンコ坂46:2018/03/17(土) 18:50:16.42 ID:tIfuTTVbM.net
そう言って、玲子が二人の前に差し出したのは、ココアパウダーがふんだんに振りかけられたガトーショコラであった。

「レイコの……ガトーショコラ……」

「いきなり呼び捨てかよ」

「あ、いえ……すいません」

思わずそう口にしてしまった尾関へと、これまた思わず口にしたような鳴滝の合いの手の如きツッコミが入った。にも関わらず、尾関は鳴滝にではなく川口玲子に対して向き直っていた。

「お気になさらず。さぁ、どうぞ」

まるで小さな子供をあやすかの様に、かの川口玲子の顔には笑顔が溢れる。
これが長濱ねるや平手友梨奈が子供の頃に見ていた世界なのか……そんな思いの中で、尾関はガトーショコラを口に含んだ。

「美味しい……」

それが尾関の素直な言葉だった。おそらくは冷凍されていたのであろうが、程よく溶けたその食感と甘みとが、舌の上で解けて広がる。先に出されたちゃんぽんで火照った口内に、それはちょうどよい刺激だったのだ。

「うん。こいつは……」

甘いものが苦手な酒呑みの鳴滝でさえ、このデザートは口に合ったらしい。

「お気に召して頂けたようで何よりです」

それは穏やかな時間だった。だが、それだけに、尾関は敢えてゆっくりと味わっていた。この後に知る事になるであろう哀しい現実に心構えする為に。

211 :名無しって、書けない?:2018/03/17(土) 19:27:55.57 ID:nJXhE8m6a.net
快気祝いの連続投稿乙でありますm(__)m

212 :名無しって、書けない?:2018/03/17(土) 19:38:28.45 ID:LBsrVknA0.net
>>210
ここで乃木坂ネタですかw
あの回はなぁちゃんの棒読みがおもしろかったですね

213 :ニャンコ坂46:2018/03/17(土) 19:50:41.46 ID:MNt14DPxM.net
>>211
ありがとうございます!
まだ頭がクラクラしていますが、
それで逆にハイテンションになって
後先考えずに書き進めるパワーにww

214 :ニャンコ坂46:2018/03/17(土) 19:51:52.64 ID:MNt14DPxM.net
>>212
分かってくれる人がいて嬉しいです!
大阪さん、なかなかのマニアですねww

215 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 07:33:10.38 ID:XZjdkRKfM.net
ボンボンボンと時を告げる音がした。
その音を数えながら尾関梨香がそちらへと目をやると、そこには今時珍しい柱時計があった。時刻はちょうど九時になったところだ。

振り子の左右の動きに催眠をかけられた様に、尾関はまだ知るはずもない川口玲子と平手友梨奈、長濱ねるの過去へと思いを馳せていた。

「今日はどこへお泊りですか?」

その虚ろな目の尾関へと、玲子が問いかけた。

「それが……」

「良ければ今夜は、こちらにお泊り下さい。時間を気にしていては、ゆっくりとお話しも出来ないでしょうし」

鳴滝と同じく、尾関の一言で全てを察した玲子が鳴滝へと申し入れていた。

「ありがたいです」

言葉少なではあるが、鳴滝には珍しく素直に玲子の厚意を素直に受け入れていた。

「さて、何からお話しすれば良いのか……」

綺麗に片付けられたテーブルの上には湯呑みが三つ。並べられた湯呑みに対するひとつの湯呑みを手にした川口玲子が、躊躇いながらそう口にした。

「まず、あの五人は、平手友梨奈、長濱ねる、上村莉奈、渡辺梨加、そして長沢菜々香で間違いありませんね」

急かす訳ではないだろうが、川口玲子の背後にある写真を指差しながら、鳴滝が本題のひとつへと繋がる問いを投げかけた。

「はい。確かに彼女達です」

「つまり、彼女達は慈愛院という施設にいた子供達だと……」

「ええ。彼女達がどの様な状況からあの施設へと来たのかまでは、私の口からは語れません」

「勿論、そこまでは望んでいません。私が知りたいのは、何があったかだけです」

そこで玲子は一度目を閉じた。背筋を伸ばして座る凛とした姿と長い黒髪。綺麗に整えられた眉に薄化粧。日本人特有の清楚な美しさに、鳴滝はいつしか魅入られていた。

216 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 07:34:01.29 ID:XZjdkRKfM.net
だが、次の瞬間、鳴滝と尾関は衝撃に言葉を失った。

「慟哭を鎮めて生きる。それが、この九年間の私だったように思います」

再び目を開いてそう語った玲子の瞳は金色へと変わっていたのだ。間近で見るその瞳に、二人は呼吸さえ忘れたかのように動け出せずにいた。

「驚かれたでしょう。ごめんなさいね」

尾関へとそう言いつつ笑顔を向けた玲子の目は、瞬時に元の黒へと戻っていた。

「まず、この目の秘密からお話しした方が良いでしょうね」

「ご存知なんですか!」

食いつきそうな勢いで鳴滝が身を乗り出した。その彼へと、玲子はゆっくりと頭を縦に振った。尾関梨香はその間、ぽかんと口を開けたまま彼女を見ている。

「はい。存じ上げております」

「是非、お聞かせください」

そう言った鳴滝は、スーツの内ポケットから取り出した手帳とボールペンをテーブルの上に置いた。

「この島の沖に、いくつもの潜水艦が沈んでいるのをご存知ですか?」

「いえ……」

「第二次世界大戦終結後、GHQによって沈められた日本軍の潜水艦が二十四隻あるそうです。しかし、その海域とは違う場所で、自らの意思で海底で眠りについた潜水艦があります」

「それは?」

「当時、日本の統治下にあった台湾から、ある任務を遂行する為に、この島へとたどり着いた潜水艦です」

「その任務とは?」

「軍事機密の輸送……」

そう予想外の展開に、尾関梨香はただ呆然と二人の会話を聞いていた。ただひとつ、彼女が予感出来きたのは、自分達が踏み込んでは行けない世界へと足を踏み入れようとしている事だけであった。

217 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 07:42:56.55 ID:XZjdkRKfM.net
「軍事機密……」

そう呟いた鳴滝がその顔を覆おうとした右手を、尾関梨香が左手で掴んで止めた。それが彼女に出来る最高の反抗だった。

「大日本帝国陸軍軍事機密……第404号」

その二人に構わず、玲子は淡々とその名を告げた。そこで、鳴滝は僅かに首を傾げた。

「何故、そこまでご存知なのですか?」

「ある場所に隠されていたそれを、私が最初に見つけたからです」

鳴滝の問いに、玲子は即座にそう答えた。

「ある場所とは……まさか……」

「慈愛院の敷地の一角です」

「それは……その軍事機密とは、一体どの様なものだったのですか?」

流石の鳴滝も、今回ばかりは戸惑っている様だった。単なる女子高生の家出から、殺し屋、ついには大日本帝国陸軍の機密にまで話が及ぶとは想像も出来ないのは当然だろう。
むしろ、尾関梨香の方が落ち着いていた。
彼女は素直に玲子の言葉を受け入れていたからだ。
難しく考えても仕方がない。それはある意味、開き直った者の強味とも言えなくもない。

「私が最初に見た時は、一センチ角の黒い立方体でした。しかし、手の平に乗せると、青へと色を変えながら溶けてしまったのです」

「溶けた?では、もうそれ自体は無くなってしまったのですか?」

「いえ。溶けただけで、液体状のまま私の手の平の中で動いていました」

「動いた?……」

疑問に次ぐ疑問の連想に、鳴滝は目を見開いて固まった。

218 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 07:50:29.99 ID:XZjdkRKfM.net
ここから先は、SPECみたいな能力者バトルを取り入れてみようかと思います。
東村芽依、加藤史帆、渡辺梨加以外は決めていないので、欅坂メンバーで似合いそうな能力案があれば募集します。

219 :名無しって、書けない?:2018/03/18(日) 08:09:59.25 ID:LCBhaZhGK.net
更新お疲れ様ですm(_ _)m
楽しみです

ちなみにアメブロのほうのイラストのタイトルが若干違っているような…まあ、そう見えなくもないのかな?

220 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 08:16:06.86 ID:XZjdkRKfM.net
>>219
あれ?違いました?

221 :名無しって、書けない?:2018/03/18(日) 08:26:01.55 ID:LCBhaZhGK.net
>>220
>>123でほめていただいた時と名前が違うんで(笑)

これは例によって似てない(笑)
http://o.8ch.net/13oxz.png
一応14人クリアで残り3分の1です

222 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 08:31:31.45 ID:XZjdkRKfM.net
>>221
ごめんなさい!
思いっきり間違ってましたww
全然別人の名前だった。
何で気づかなかったんだろう

コンプリート順調に進んでますね
どんどん可愛くなってるし

223 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 18:38:00.86 ID:sK4ooTBDM.net
驚愕する鳴滝の隣で、尾関梨香はあっけらかんとした表情で玲子の話しに耳を傾けていた。その彼女を見た玲子は、安堵したかのように微笑みを見せた。

「黒い物質は、私の鼓動に合わせて脈打つように動いていたのです。まるで生き物のように」

その玲子の言葉で、鳴滝の頭の中に真っ先に浮かんだのは磁性流体と呼ばれるものだ。その物質も同じような動きをするが、その動きは磁場を発生させる磁石によるのであって、玲子の手にしたものとは別物だ。

「その黒い物質と、玲子さんの目とどういう関係があるんですか?」

考え込む鳴滝に代わり、尾関梨香が素朴な疑問を投げかけた。

「私の目がこうなったのは、その黒い物質を触ったからなの」

そう答えを返す玲子の瞳は、一瞬だけ金色へと変わり再び黒へと戻っていた。

「つまり、金色の瞳を持つ者は、その物質に触れたものであると?」

右の人差し指をこめかみに当てながら、鳴滝が目を閉じたまま問い返す。

「そう言う事になります。そして、この金色の瞳は、誰にでも見えるものではないのです」

「と、言いますと?」

「詳しくは断言出来ませんが、ある条件を満たした人間のみが見えるようです」

「試された事があるんですか?」

その問いに、玲子は沈黙した。その沈黙にこそ、彼女が抑えて来た慟哭の意味があるように思えて、鳴滝は静かに彼女の言葉を待った。

224 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 18:45:36.38 ID:sK4ooTBDM.net
雑ですが
ずみこ覚醒バージョン

https://i.imgur.com/j3AfKSS.jpg

225 :名無しって、書けない?:2018/03/18(日) 18:54:03.60 ID:LCBhaZhGK.net
更新乙です
秘密が徐々に明かされる展開にドキドキします
http://o.8ch.net/13pit.png

これで残り5人まで来ました

226 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 19:23:09.54 ID:4xuwTGYgM.net
>>225
小池美波ww
似てるww

227 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 19:28:24.21 ID:4xuwTGYgM.net
暫しの時を挟み、立ち上がった玲子は振り向き様に写真立てへと手を伸ばした。引き寄せた写真を見る彼女の横顔はどこか寂し気で、そこから鳴滝はおおよその見当をつけていた。

「つまり、彼女達で試したと?」

その鳴滝の言葉に、一瞬抗議を含む鋭い視線を見せた玲子だったが、写真を手に鳴滝の前に正座し、彼を見据えた。

「当時の入所していた子供達は、下は三歳から上は十八歳の二十一人でした。その中で、私の瞳の色の変化に気が付いたのは、この五人だけだったのです」

「それから……どうされたんですか?まさか……彼女達にも?」

「はい。黒い物質に触れさせました」

「何故そんな事を……得体の知れない危険なものかも知れないのに」

「彼女達に希望を持って欲しかったのです」

「希望?」

繰り返された言葉に、鳴滝と玲子は互いの目の奥を探るように見つめ合ったまま黙り込んだ。
その二人を、やはり尾関梨香も黙って見つめる。この時の彼女には、若干だが余裕が生まれていた。未知である事に依然変わりはないが、金色の瞳の謎も少しだけ彼女なりに理解出来た。
例えてみれば、幽霊だと思っていた磨りガラスの向こうので揺れる白い影が、どこからか飛んで来たビニール袋だったみたいなものだ。正体さえ分かればなんて事はない。
尾関は自分にそう言い聞かせていた。無論、そんな単純な事ではないのも理解はしているが。
とにかく、尾関は目の前の鳴滝と女鳴滝のやり取りを心のどこかで楽しんでいた。

228 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 19:59:46.24 ID:4yMmidQLM.net
「説明するまでもなく、あの施設にいた子供達は、それぞれの家庭の事情により集まって来た子供達です」

「わかります」

語り出した玲子へと、鳴滝も神妙な面持ちで返す。

「施設に入るまでは、劣悪な環境の中にいた子供もいます。産まれて来た意味さえ、親の愛さえ知らない子も」

「そうだと思います」

玲子の言葉にまるでレールを敷くかのように、鳴滝が言葉を繋げていく。

「だから……せめてあの五人の子供達には、自分を信じて生き抜く力を身につけて欲しかったのです。御理解頂けないかとは思いますが」

「金色の瞳を持つ事が、何故に自分を信じる力になると?」

「あの黒い物質……四〇四号から得られるものはそれだけではありません。様々な特殊な力を得る事が出来るのです」

そこで鳴滝は沈黙した。だが、それは驚愕によるものではなかった。それは、隣でその横顔を見た尾関梨香にも感じ取れた。彼は何かを知っているのだ。
それは、あのショッピングモールの駐車場で口にした『マグス』と呼ばれる存在と関係しているのかもしれない。
尾関梨香自身にしても、きっと昨日までの彼女なら、今の玲子の話しなど鼻で笑い飛ばしていたかもしれない。これまでの案件で対峙して来たインチキ霊能者達に向かうように。
しかし、この島でのたった一日が、彼女を変えてしまった。非日常が彼女の中で日常の一部へと変わりつつあったのかもしれない。

その時、鳴滝のスマートフォンが振動を始めた。取り出した鳴滝の顔が一瞬曇る。

「誰からですか?」

「ああ、モナリザの岡ママだ。申し訳ないのですが、少しお時間を頂きます」

尾関をちらりと見た後、鳴滝は立ち上がって玲子へと頭を下げた。

229 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 20:44:26.36 ID:4yMmidQLM.net
「お待ち下さい」

スマートフォンを片手に玄関へと向かおうとした鳴滝を、玲子が呼び止めた。

「お仕事のお電話なら、それなりにお時間もかかるかもしれません。念のためにこれを」

そう言って玲子が彼に手渡したのはこの家の合鍵だった。

「お借りします」

再び頭を下げて、鳴滝は急ぎ足で出て行った。その様子から、電話の相手が岡ママなどではない事を尾関梨香は気付いていた。
もし、本当に岡ママであれば、即座に切っていた筈だ。それに気付きながらも、何故に尾関梨香は後を追わなかったのか。

彼女は足が痺れて動けなかったのだ。自分の不甲斐なさに歯軋りしつつ、尾関は足の裏を手で押さえていた。

「ゆっくり脚を伸ばして下さい。鳴滝さんが戻って来るまではいいじゃありませんか」

「は……はい」

声を詰まらせなが、尾関は苦悶の表情を浮かべていた。それを見た玲子にも、最初の穏やかな笑みが戻る。

「怖いでしょう?私のような人間は」

「いえ……全然……怖いのはそこじゃなくて……」

「そこじゃなくて?」

「何て言うか……上手く言葉に出来ないんですけど……あ、やっぱりいいです」

前に伸ばした両脚を手で摩りながら、尾関梨香は伏し目がちにそう言っていた。

「きっと尾関さんは寂しくなったのね」

その意外な言葉に、尾関は目を丸くした。

「え?玲子さんの持つ特殊な力って、心を読む事ですか?」

「まさか……同じ女だからこそ、分かる事もあるんですよ」

そう言いつつ、玲子は尾関の湯呑みへとお茶を注ぎ込む。脚の痺れに悶える自分と違い、玲子のそのしなやかな所作に、同じ女と呼ばれた事にどこか恥ずかささえ感じてしまっていた。

230 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 21:04:58.92 ID:4yMmidQLM.net
「きっと尾関さんが怖がっているのは、鳴滝さんが、どこか自分の手の届かない世界へと行ってしまいそうな事なのね」

「まさか!そんな事ありませんて!へい!」

動揺から尾関の言葉がべらんめぇ口調になっていた。

「大丈夫……大丈夫ですよ」

落ち着いた玲子の声に、尾関は心が穏やかになっていくのを感じていた。

「確かに、彼は何か他の人とは違うようですね」

「やっぱり……」

少しばかり肩を落としたように見えるその尾関へと、玲子はそっと湯呑みを差し出した。

「彼の持つ力は、本来、人間に備わっている第六感の強いものだと思います。広い意味で言えば、霊能力と言ってもいいのかしら」

「はぁ……」

語り出した玲子の話しの意図が読めず、尾関は思わずそう口にしていた。

「それに対して、黒い物質に触れた私達の力は超能力と呼ぶべきね」

「霊能力と超能力って、違うものなんですか?」

「そうねぇ。分かり易く例えれば……」

その頃になると、玲子の語り口も鳴滝のを前にしている時から比べれば、かなり親近感を憶えるまでに柔らかくなっていた。

「発現する力をお水に例えれば、私達の力はこれと同じね」

玲子がそう言ってテーブルの上に白いポットを置いて見せた。

231 :ニャンコ坂46:2018/03/18(日) 23:17:31.60 ID:Vktb8u0qM.net
「ポット……ですか?」

痺れの治った脚で正座し直した尾関は、少し前のめりになりながら問い返した。

「そう。私達の力はこのポットの中のお水と一緒で、一度に使える量には限りがあるの。勿論、人によってポットの大きさは違うのでしょうけれど」

そう言った玲子は、意味あり気な苦笑いを浮かべた。

「じゃあ、霊能力の方は?」

「それちらは水道のお水みたいなものかしら。ほぼ無限と言っても過言ではないでしょうね」

「霊能力、最強じゃないっすか!」

この時、玲子は理解した。この尾関梨香という人間は、興奮した時にべらんめぇ口調になる事を。

「そうでもないの。むしろ、その逆かもしれない」

「何でですか?力を使いたい放題じゃないですか」

「本物の霊能力者。そう呼ばれる人達は、蛇口のひとつでしかないの。元栓を止められれば、ただの飾りでしかないわ」

そう言って、憂いるように目を伏せた玲子の表情を見た尾関梨香の中に、彼女なりのひとつの仮説が湧き上がった。

「ひょっとして……玲子さんは元々……ですか?」

仮説を立証させるべく言葉を発した尾関梨香だったが、肝心の一言を言いそびれてしまっていた。

「そうなの。私も鳴滝さんと同じような人間だったわ」

玲子のその言葉により、尾関梨香の仮説が立証された。そして、同時に彼女の心に突き刺さっていた疑問の棘も消えた。
この家に来てからの鳴滝と玲子を結ぶ、目に見えない何かの繋がり。それが、たった今、ようやく分かったのだ。
だが、尾関は葛藤していた。何故なら、それを認める事は、自分と鳴滝の間に越えられない壁を自ら築き上げてしまうかのように思えてならなかったからだ。

232 :名無しって、書けない?:2018/03/19(月) 10:22:39.46 ID:8+mvDOutK.net
昨日は怒涛の更新乙でした

こちらもコンプリートまで残り2人になりました
http://o.8ch.net/13pz2.png

233 :ニャンコ坂46:2018/03/19(月) 21:16:41.31 ID:7JZ8wr9gM.net
>>232
コンプリートまで、あと一歩ですね(^_^)
楽しみにしています!

234 :名無しって、書けない?:2018/03/19(月) 21:25:08.08 ID:8+mvDOutK.net
>>233
すいませんw
連投になっちゃうからここには書きませんでしたけど
しましたw

ラスト↓
http://o.8ch.net/13qkh.png

235 :名無しって、書けない?:2018/03/19(月) 21:30:38.62 ID:dzN8qTJCa.net
めっちゃ深い展開になってきてるじゃないっすか!?

236 :名無しって、書けない?:2018/03/20(火) 12:51:09.60 ID:jYPrTr2hK.net
アメブロも更新乙です
http://o.8ch.net/13qjo.png

237 :ニャンコ坂46:2018/03/21(水) 09:54:30.29 ID:kLQ1gHAFM.net
>>234
>>236
コンプリートお疲れ様でした!
偉業を成し遂げましたねww

>>235
さらにややこしく
なります

238 :ニャンコ坂46:2018/03/21(水) 19:24:15.76 ID:7jXZY4ySM.net
「大丈夫……大丈夫ですよ」

尾関の葛藤を見抜いたのであろうか。
川口玲子が再びその言葉を口にした。

「尾関さんの一番の武器は、その素直さだと思います」

「そ……そうっすか……」

いきなり何を言い出すのか?と戸惑った尾関の口から出た言葉はそれだった。

「その素直さがあれば、鳴滝さんをも超える事が出来ますよ」

「でも、私は勘が鈍いと言うか、よく怒られてます」

そう言た尾関は溜め息をひとつつき、肩を堕としてうな垂れた。

「では、第六感を鍛える方法を伝授しましょう。我流ですが、それでもよろしければ」

「鍛えれるものなんですか?第六感って」

「うな垂れているよりかは、いくらか前向きではありませんか」

眉を潜めた尾関梨香へと、玲子は呆れ顔でそう進言していた。

「ダメ元でやってみます!」

玲子の言葉に何かが吹っ切れたのか、尾関が声高に宣言する。

「ダメ元で……ですね。では、こちらへ」

彼女の失言に苦笑いで答え、玲子は尾関を誘うように、縁側の廊下を奥へと進んで行った。尾関もすかさずその後を追う。
前を歩く玲子の後を追いつつ、その長い黒髪の放つ漆黒の妖艶さに惹き込まれそうになった尾関の前に、照明の灯りと共に現れたのはタイル貼りの小ぢんまりとした浴室だった。

239 :ニャンコ坂46:2018/03/21(水) 19:48:36.17 ID:JyV1FMRoM.net
「ここで……第六感?」

何かしらの道場のような部屋を想像していた尾関梨香にとっては、拍子抜け以外の何物でもなかったようだ。

「生活に活かせるものは、やはり普段の生活の中からしか生まれないものですよ。第六感なんて、言うほど特別なものでもないのですから」

今や尾関梨香の師匠となった玲子のその顔からは、笑みはいつしか消え去っていた。その変化に気付いた尾関は、ただ黙って彼女の動きへと目を向ける。
その尾関の目の前で、玲子は浴槽に波々と張られた湯気立つお湯で手の平を濡らし、シャンプーの雫を一滴垂らして泡立てた。

「さぁ、手を出して」

玲子のその言葉に差し出された尾関の手の平の上には、ひと塊りの真っ白な泡が乗せられた。

「その泡を両手で軽く押してみて下さい。互いの手の平が触れないように」

玲子に言われるがまま、尾関梨香は挟んだ泡を両手で押していた。細かな泡から僅かな弾力を感じる。

「今度は少し離して」

ゆっくりと手を離すと、引っ張られる感覚が手の平に伝わる。

「それが気のイメージです。その感覚を憶えておいて下さいね」

そう言うと、玲子は尾関の手の泡をシャワーで洗い流した。

「次はこの浴槽のお水の表面に手の平を乗せてみて下さい」

事務的に繰り出される玲子の指示に素直に従い、尾関は微かに温もりを残す水の表面へと両手の平を当てた。

240 :ニャンコ坂46:2018/03/21(水) 20:15:00.01 ID:G7blQxlnM.net
「では、目を閉じて水を感じて」

目を閉じて意識を集中させた手の平に、緩やかな水のうねりが伝わって来た。
そのうねりに手の平を任せていると、指の先から徐々に水と一体化していくような不思議な感覚に襲われて、尾関梨香は思わず水面から手を上げてしまった。

「この水面の感覚が、練り上げられた気の感覚と近いものです。憶えておいて下さい」

「あの……」

流石の尾関も疑問の声を上げた。

「さっきから気の感覚と言ってますけど、それが第六感と関係あるんですか?」

「ええ、もちろんですとも。第六感を高める為に最も必要なものはイメージする力。そのイメージする力に必要なものは、素直な心です」

尚も事務的に、玲子は尾関へと語る。その彼女の前で尾関は首を傾げた。

「よく……分からないんですけど」

その尾関の言葉に、玲子はその奥を覗き込むかのように彼女の瞳を真っ直ぐに見据えた。

「ひょっとして……鳴滝さんは、たまに何もない場所を見つめていたりする事はありませんか?」

「確かに!猫みたいに、何もないところをじっと見てたりします」

唐突な問いではあったが、尾関にはいくつも思い当たる節があり、ついついそう即答していた。

「見てみたいと思いませんか?彼が見ている世界を」

意味あり気な玲子の問いかけに、尾関は一瞬戸惑った。それを見てしまったら、もう逃れられない。何からどう逃れられないのかさえ分からないが、彼女の中の何かが激しく警鐘を鳴らしていたのだ。

241 :ニャンコ坂46:2018/03/21(水) 21:05:15.65 ID:paCvcXkFM.net
「怖いのならここまでにしましょう。第六感など無くても、人は生きて行けるのですから。でも……」

尾関梨香の戸惑いに気付いた玲子が、寂し気にそう呟いた。

「でも……何ですか?」

尾関は堪らず、その玲子が言いそびれた言葉の続きを求めていた。

「ここから先の彼にとって、貴女は足手まといになるだけです。互いが心を痛める前に、
自ら身を引く決断も必要になるでしょう」

「納得出来ません!いきなり何を言い出すんですか?」

「これから貴方達が踏み込もうとしている世界は、言わば魔界。この国の法律でも手出し出来ないのです。ましてや、その法律に従う警察は言うに及ばず」

重みを帯びた玲子の声に、尾関は次の言葉を失い、ただ目の前の玲子の目を見つめ返した。

「頼れるものは己のみ。他人の心配などしている暇などないのです」

「それは極論です」

玲子の静かな威圧に怯みながらも、尾関が何とか言い返した。

「果たしてそうでしょうか?己を持たぬ者達が、いくら寄り集まったところで何かを成し得るとは思えません」

玲子の声に、更に深みが増して行く。その声に呑み込まれそうになりながらも、尾関は必死に抵抗していた。

「私は私。それの何が悪いんですか?」

「利己主義と個人主義は違うのです」

「ますます意味がわからない!」

そこで尾関がついに感情を露わにした。

「個を持たぬ者達の集まりは脆いのです。物言わぬ大衆(サイレントマジョリティ)に、何かを変える力など無いのです」

242 :ニャンコ坂46:2018/03/22(木) 20:31:38.73 ID:oRM0Rgf/M.net
トリアエズ

https://i.imgur.com/5q8FBmF.jpg

243 :ニャンコ坂46:2018/03/23(金) 04:26:57.69 ID:3rFXVbd4M.net
「それぞれが自己主張ばかりしていたら、纏まるものも纏まらないじゃないですか!」

それでも尾関梨香は喰い下がった。もう、引くに引けない。今日、会ったばかりの玲子に、幾度も危機を一緒に乗り越えて来た鳴滝との時間を、全否定されているような気がしてならなかったのだ。
全てを悟ったかのような彼女の態度が、いくらか癪に触った事もあるが。

「自己を確立しなさい。まず、己が何者であるかを知りなさい」

「急にそんな事言われたって、出来るわけありません」

「出来ないではなくて、そうしようとしないだけでしょう?」

狭い風呂場で、女二人が哲学的な論争を交わす。それは側から見れば何とも滑稽に思えた。しかし、当の本人達は大真面目に睨み合っている。

「だって、学校ではそんな事教えてくれませんでしたし」

「当然です。個を無くす為の教育ですもの」

「とにかく!」

そこで尾関がついに声を荒げた。

「私は私のやり方で、鳴さんとやって行きます!」

その尾関梨香の言葉に呼応するかの様に、玲子の瞳があの金色へと変わっていた。

「あなたに何が出来るの?」

何処かで聞いた言葉と何処かで見た瞳。
そうだ。あの煉瓦造りの教会で、ライフル女に言われた言葉。
あの時、何も言い返せなかった自分への後悔と、再び答えるべき言葉を見出せない自分への絶望感が尾関を包み込んだ。

「目を閉じて」

不意に差し向けられた玲子の声に、尾関は大人しく従っていた。

「何が見えても、目を開けないで」

その言葉と共に、尾関の額に玲子の人差し指が当てられた。

「何?……これ?」

漆黒の空間に光り輝く青い星々。あるものは小さく、またあるものは大きく光を放つ。それはいつか見た宇宙の写真のような。その中において、一際輝きを放つ星があった。

244 :ニャンコ坂46:2018/03/23(金) 20:28:04.57 ID:/JqTXcsvM.net
「中心で輝く星の色は?」

尾関の中に拡がる宇宙の奥から、玲子の声が響いた。

「黄色……」

「それが貴女自身の力を示す色です」

「これが私の力の色?」

「尾関さんの中に眠っている力です。それを活かすか眠らせたままにしておくかは、貴女次第……」

そう言った玲子が尾関の額から指を離すと、尾関が見ていた星々は瞬時にその光を消していた。

「何故、あんなものを私に見せたんですか?」

不可思議な世界を垣間見てしまった興奮を抑えつつ、尾関は努めて冷静に玲子へとそう問いかけた。

「百聞は一見にしかず。口でいくら説明しても、信じて頂けないでしょう?」

「信じる信じない以前に、頼んでもいないんですけど」

「余計な事でしたかしら?」

売り言葉に買い言葉。不満そうに眉をひそめて抗議する尾関梨香に、いつしか玲子も語気が強くなっていた。

「何の力か知りませんけど、私には必要ありませんから」

「そうですか。そこまで仰るなら、これ以上は干渉する事は避けましょう。但し……」

大人しく引き退るかと思われた玲子が、最後に含みを持たせた眼差しを尾関梨香へと向けた。

「鳴滝さんは、命を落とす事になるでしょう。貴女が変わらなければ……」

「どう言う事ですか?」

「それが彼の運命と言う事です」

「そんなの、無茶苦茶な屁理屈ですよ!」

「どう捉えようと、それも尾関さんの自由です。貴女が菅井友香と出逢った事も、運命の歯車のひとつでしかなかったのですから」

感情を露わにする尾関梨香とは対照的に、淡々と、そして機械的に川口玲子はその口から言葉を紡ぎ出す。その抑揚のない語り方が、考え込む鳴滝と何処かが似ていて、それが更に尾関の感情を煽っていた。

245 :名無しって、書けない?:2018/03/24(土) 07:15:25.61 ID:3pukx4QsK.net
乙です
http://o.8ch.net/13va1.png

246 :ニャンコ坂46:2018/03/24(土) 19:45:19.56 ID:gNtkL5BSM.net
>>245
こちらこそ、保守ありがとうございます!
( ̄^ ̄)ゞ

247 :ニャンコ坂46:2018/03/24(土) 19:45:44.43 ID:gNtkL5BSM.net
「他人の運命を勝手に押し付けないで下さい!それに、鳴さんは玲子さんが思っている程、弱くはありませんから」

「そうね。彼は強いわ。けれど、彼がこれから相手にしようとしているのは、人でありながら人ならざる者なのです。彼の力をもってしても敵うかどうか」

腰に手を当てた臨戦態勢の尾関に対し、玲子はいつしか落ち着き払っていた。その態度が益々どこか鳴滝に似ていて、尾関もついつい声を荒げていた。

「そんなに強い相手なら、私がいくら頑張ったって敵いっこないじゃないですか」

「そうではありません。尾関さんだからこそ出来る事があるのです」

「その、私だからこそ出来る事とやらを教えて頂きましょうか?」

この問答が無意味だと知りつつ、尾関はどうにも後には引けなくなっていた。

「では……まず、その猫背を治す事から始めましょうか」

「あ……はい」

予想の斜め上からの指摘に、尾関は思わず胸を張って直立していた。

「綺麗ですよ。女性の猫背はみっともありませんからね」

「以後、気を付けます。あ、いや、そう言う事ではなくて……え?そこですか?」

直立不動のままで自問自答する尾関梨香を見て、玲子は口元を手で隠して笑顔を見せた。

「この人間世界には、男性か女性しかいません。そして、貴女は女性です。まず、自分が女性である事を自覚して下さい」

「そんな事……知ってます」

玲子のペースに引き込まれている事を感じて抗いつつも、今の尾関にはそう答えるしか出来なかった。

「自らが女である事を自覚した女性に、勝てる男性なんていません。第六感より女の勘。
それこそが尾関さんの武器であり、女性にしか出来ない事なのです」

幾らか謎めいてはいたが、その玲子の言葉は尾関にも何となくではあるが理解出来た。
尾関流に言えば、つまりはこう言う事だ。
女、舐めんなよ。その一言であった。

248 :名無しって、書けない?:2018/03/24(土) 20:10:34.38 ID:XI2wFzERa.net
やべえ、ぐうたら探偵物語だと思っていたら壮大な世界観を孕んだ物語に目眩を覚えます

ちなみに僕も昔気功やってて手から気を出せます

体の中に気を回す修練てイメージする力が鍛えられるせいか妄想体質になってしまいましたがw

249 :ニャンコ坂46:2018/03/25(日) 18:24:18.37 ID:cTdmAiSCM.net
>>248
気功やってたって何気に凄いww

ぐうたら探偵をこれからどうするか悩み中

250 :名無しって、書けない?:2018/03/25(日) 18:45:06.19 ID:jeETyd8+K.net
自分は昔、自立訓練法をやってたから身体の皮膚温を微妙に上げられたぜ←もう多分無理
http://o.8ch.net/13wzd.png

251 :ニャンコ坂46:2018/03/25(日) 22:15:17.67 ID:GByffqgtM.net
>>250
チワンさんまでww

252 :ニャンコ坂46:2018/03/26(月) 18:46:33.44 ID:3CZsy901M.net
トリホ

https://i.imgur.com/PS8qZAa.jpg

253 :ニャンコ坂46:2018/03/26(月) 19:14:13.03 ID:bujv163HM.net
少し時を戻し、川口邸を出た鳴滝はスマートフォンを耳に当てたまま歩き出していた。

「よぉ、芽依ちゃん。電話待ってたよ」

「誤解してるんじゃないかと思って。あの紙人形は、あたしがやったんじゃないから」

スマートフォンから響く声は、東村芽依のものだった。

「ほう……」

鳴滝はそう言うと、スーツのポケットから取り出したペン型のライトで足元の一点を照らしてしゃがみこんだ。

「信じてないみたいね」

「いや、そう言うわけじゃない」

鳴滝がじっと見つめているのは、地面に刻まれた二本の細い轍。おそらくはバイクのものだろう。

「あと、マグスって奴も本当に知らないから」

「だろうな」

敷地の奥へと続く二本の線は途中で途切れていたが、鳴滝はその先の闇へと足を進めた。

「ねぇ、ちゃんと聞いてる?」

「ああ、聞いてるよ」

芽依の問いかけに気の無い返事をしつつ、
鳴滝が見つけたのは川口邸の裏手に隠れるようにして立つ離れの一軒家だった。

「とにかく、あたしはおじ様を敵に回すつもりは、これっぽっちもないからね」

「ビンゴ!」

手にしたライトが照らし出した離れの軒下に、青いビニールシートを被ったバイクを発見した鳴滝が思わずそう口にしていた。

「ビンゴ?何言ってるの?」

「ああ、いや、こっちの話だ。それより、そんな事を言うためだけに、わざわざ電話して来たわけじゃないだろう?」

そう問い返しつつ、鳴滝は離れの一軒家の玄関らしきドアの前に立った。

254 :ニャンコ坂46:2018/03/26(月) 20:08:34.56 ID:74PLCKMjM.net
「それがさぁ、おじ様達のいる家の前の道に、変な奴等がうろついてるんだけど。気付いてないかと思ってさ」

「変な奴等? 」

「男が三人。見た感じ地元の人間みたいだけど」

芽依の言葉に、鳴滝は離れの一軒家の玄関に背を向けて速足で歩き出した。

「日焼けの仕方と、筋肉のつき方からして漁師かな。ちょっとふらついてるから、多分酔っ払い」

「近くにいるのか?」

「あたし?そっちから見えない離れたところにいるよ」

芽依の言葉を聞き終える前に、鳴滝は敷地から外の道へと一歩足を踏み出していた。

「この暗がりでも、そこまで見えるのか?」

「あたしには『見える』の」

見渡すと、確かに向かいの石塀に寄りかかる様に男三人が並んで立っていた。
中央に立つのは五十代前後の男で、この寒空の下にも関わらず、上は白いティシャツ一枚しか身につけていない。
ボディビルダーとは違い、必要最低限の無駄の無い筋肉は真っ黒に日焼けして、ティシャツの白をより一層際立たせている。
その右隣に立つ男は、髪を金髪に染めて眉毛もあるのか無いのかわからぬほど細く剃っている。だが、まだ幼さの残る顔付きから、まだ十代なのかもしれない。
そして左隣りの男は、中央に立つ親分らしき男に負けず劣らずの筋骨隆々な体格で、黒い短髪の下の表情は、他の二人とは違い落ち着き払っている。

「化け物屋敷のお客さんって、あんたね?」

中央の親玉が、にやけた顔で鳴滝へとふらふらと歩み寄って来た。漂って来たのは独特な香りを放つ酒の匂い。おそらくは芋焼酎だろう。九州と言う土地柄を考えれば、別段不思議でも無いのだが。

「化け物屋敷とは?」

「とは?……あんた、東京から来たとね?」

鳴滝の口調を揶揄う様に、親玉の男が問い返して来た。

「まぁ、その近くかな」

「そんな遠かとこから、何ばしに来たとね?」

255 :ニャンコ坂46:2018/03/26(月) 20:43:29.21 ID:QGnB5XpeM.net
「何をしに来たか?その前に、あんたらこそこんな所で何をしてるんだ?」

酔っ払い相手に如何なものかと思いつつ、鳴滝も少し強気で問い返す。

「おいたちは、化け物屋敷に珍しく余所者が入って行ったって聞いたけん、見に来ただけたい!」

「だから、その化け物屋敷ってのは何なんだよ?」

「あんた知らんとね?ここに住んどるおなご(女)は、目の色が夜になると金色になる化け物っちゅう女たい」

「それが……どうした?」

横暴な態度の男に対し、鳴滝は鼻の頭が触れそうになるまで顔を近づけて問い返していた。

「あんたん為ば思うて言うとると。あの女に関わるとろくな事なかったい!はよ、逃げない」

「はぁん?」

その声を上げ時には、既に鳴滝は親玉の襟首を掴んで引き寄せていた。

「あんたが、彼女の何を知ってるってんだ?」

「のぼせ上がんな!あの女のせいで、子供達が死んだと!あんおなごは化け物たい」

「化け物化け物って……勝手に決めつけるんじゃねえぞ」

そう言い終わる前に、鳴滝は渾身の力で親玉を投げ飛ばしていた。

「なんや!きさん!(貴様)」

そう叫んで最初に殴り掛かって来たのは、金髪の例の若い男の方だった。鳴滝はその彼の右手拳を左手の甲で受け流し、右の手の平で彼の顎を打ち抜いた。
気を失なって崩れ落ちる金髪の奥で、残る一人は腕を組んで鳴滝を見据えていた。

「かかって来いよ」

彼には珍しく、鳴滝が先に挑発していた。
その言葉を受けて、残る短髪の男が左足を軸に右脚の蹴りを繰り出した。その脚を両腕で受け止めた鳴滝へと、間髪入れず男の左拳が襲いかかる。
それを間一髪かわした鳴滝へと、背後から細い包丁の刃が差し向けられた。

256 :ニャンコ坂46:2018/03/26(月) 21:08:26.46 ID:aTM0SEWhM.net
「余所者が、偉そうにすんな」

そう言い放ったのは親玉の男だ。その黒い腕の先に握られていたのは、魚を捌く為の柳刃包丁と呼ばれる刃物だった。

「やれんのかよ?魚は捌けても、人を捌いた事ねぇだろうが」

喉元に刃物を突きつけられても尚、鳴滝は強気にそう言い返す。

「やってやろうやんか。覚悟せんかい」

その言葉とほぼ同時に、細い包丁の刃先が鈍い金属音と共に砕け散った。

「痛っ!」

包丁から伝わった衝撃に、自らの右手を抑えつつ、親玉の男が踞る。
何が起こったか、見当もつかず呆然とする短髪の男の前で、鳴滝だけが笑みを浮かべていた。

「化け物なんて勝手にレッテル貼って忌み嫌う前に、てめぇらの無知を恥じろ!」

そう叫ぶと同時に、鳴滝は目の前で立ち竦む短髪の男の顎を右肘で下から打ち上げる。不意打ちを喰らった男は、そのまま背後へとまるで棒切れの様に倒れ込んでいた。

「お前……俺を殺す気か?」

まだ通話状態のままにしてあったスマートフォンを耳に当てた鳴滝が言った。

「ちゃんと包丁だけを狙って撃ち抜いたんだから、褒めてよね」

その鳴滝のスマートフォンから、そんな東村芽依の声が響いた。

「いや、危な過ぎるだろ?手元が狂ったら俺に弾が当たってたぞ」

「あたし、絶対外さないから」

その芽依の言葉に、鳴滝は苦笑いで溜め息をひとつ漏らし、側で踞る親玉の後頭部へと止めの蹴りを繰り出していた。

257 :名無しって、書けない?:2018/03/27(火) 12:36:48.91 ID:NH5jXNxKK.net
めいめいが凄腕すぎて感動w
http://o.8ch.net/13yru.png

258 :ニャンコ坂46:2018/03/27(火) 18:02:20.96 ID:BG8sFQdtd.net
>>257
すずもん、カッコいい!

めいめいの凄腕の謎をこれから解き明かす予定

259 :ニャンコ坂46:2018/03/27(火) 18:02:45.74 ID:BG8sFQdtd.net
「芽依ちゃん、君はなかなかの策士だな」

「何のこと?」

「ちょっと待ってろ」

そう言った鳴滝はスマートフォンを内ポケットへと入れて、気を失って道に横たわる男達を石塀へと引きずり寄せていた。

「こいつらをけしかけたのは君だろ?」

再びスマートフォンを耳へと当てた鳴滝の言葉はそれだった。

「どうしてそう思ったの?」

「君が、こいつらを漁師だと言ったからさ」

川口邸から出た表の道路を、鳴滝は右へと向かって歩き出した。刃物が砕けた飛んだ方向から推測して、狙撃ポイントはそちら側になる。
芽依の使用するライフルの射程距離から考えると、そう遠くない場所に彼女達はいるはずだ。

「それだけの事で?」

「それはこちらのセリフだな。あの身なりだけで、彼等を漁師だと普通は判断出来ない」

「何となくそう思っただけよ」

「それに料理人ならともかく、その辺の漁師が柳刃包丁みたいな長い刃物は持ち歩かないさ」

「飲み屋で借りて来たんじゃない?」

「包丁は料理人の命だぜ。ましてや酔っ払いに貸したとなると、下手すりゃ殺人幇助になりかねない」

「それはそうかもね」

電話の向こう側の東村芽依は、あっけらかんとしている。その姿を探すべく、鳴滝は一人通りを歩く。

「それに『どうしてそう思ったの』なんて言い方は、答えを知っている人間のものだからな」

「おじ様、細かい事を気にするんだね」

「運が悪い事に、俺はその細かい事を気にするのが仕事の探偵なんだよ」

そう答えつつ鳴滝が歩く武家屋敷通りの先は少しばかり下り坂になっており、石畳が終わった所で信号機が待ち構えていた。

260 :ニャンコ坂:2018/03/28(水) 19:46:54.28 ID:6fu2qOKwM.net
とり

261 :ニャンコ坂46:2018/03/28(水) 20:04:33.06 ID:Z1BerneZM.net
「そこにいたのか」

信号機の先に続く道路の路肩に停められている赤い軽自動車を見つけた鳴滝が呟いた。
跳ね上げられたハッチバックドアの中で、長い銃身のライフルを構えた人影が何とか確認出来た。

「おいおい、何丁のライフルを持ってるんだよ?」

助手席の背もたれに寄りかかり、荷台で東村芽依が抱えているライフルは昼間のものとは明らかに違う形をしていた。

「TPOで使い分けてるの」

「何者なんだよ、君らは」

そこで鳴滝の進行を阻むように、信号機が青から黄色、そして赤へと変わっていた。

「探偵なら、自分で調べたら?」

「金にならない仕事はしない主義なんでね」

「そのうち嫌でも知る事になるかもよ」

そう言った東村芽依がハッチバックのドアを閉めるのと同時に、軽自動車のブレーキランプが点灯した。

信号機は未だに赤。鳴滝はスマートフォンを耳に当てたまま、交差点の一角で立ち竦んでいた。

「何故、俺を試す」

鳴滝のその問いかけに、芽依からの返答は無かった。そして軽自動車は走り出す。

「クロウは本当にこの島に来てるのか?」

走り去る車のテールランプを見ながら、鳴滝は尚も問いかける。

「来てるよ。今も何処からか見てるかも」

そこで、やっと芽依の声が返ってきた。

262 :ニャンコ坂46:2018/03/28(水) 20:53:33.40 ID:X3eC4tqqM.net
「そのクロウが現れた時、君らはどうするつもりなんだ?」

「そんなの決まってるじゃない」

芽依がそう答えた時には、彼女達の乗る車は突き当たりの角を右へと曲がって姿を消してしまった。
ようやく青へと変わった信号機へと背を向けて、鳴滝は尾関梨香が待つ川口邸へと向けて坂道を登り始めた。

「殺し屋の殺し屋たるクロウを殺して名を挙げるつもりか?」

「まさか。クロウを仕留める。それがボスの命令。ただそれだけ」

「そんなに簡単に仕留めれる奴じゃないだろう」

「あたし達なら出来るわ」

「何故、そう言い切れる?」

「あたし達は最強だから」

そこで鳴滝は足を止めて、道の先へと目を凝らした。彼が端へと寄せた男達の姿が無い。
目を覚まして逃げ帰ったのか、それとも……
最悪の予感に鳴滝は走り出した。
川口邸の前に辿り着いた鳴滝の前に、石畳の奥から、金髪の若い男が投げ飛ばされたように転がり出た。
反射的に鳴滝は男のこめかみへと蹴りを入れ、石畳の奥へと目を向けた。
通りの脇に立つ街灯の淡い光の中に立つひとつの人影ある。だが、それはあの男達のものではない。

「探したぜ、平手友梨奈」

そこに立つのは、紛れもなく鳴滝がここまで追って来たその本人だ。ライブハウスで着ていた赤いジャケットを羽織り、闇の奥から鳴滝を見据えていた。
そして、その背後から長濱ねるも姿を現した。こちらも無表情に鳴滝へと目を向けている。

「殺してないだろうな?」

平手友梨奈の両脇に横たわる二人の男に気付いた鳴滝が、揶揄うように問いかけた。

「殺す価値さえないよ」

それが鳴滝が初めて聞いた平手友梨奈の声だった。

263 :ニャンコ坂46:2018/03/29(木) 18:30:31.17 ID:7GSMIv+DMNIKU.net
トリアエズホシュ

https://i.imgur.com/vstF6H1.jpg
https://i.imgur.com/lBlQq0O.jpg

264 :ニャンコ坂46:2018/03/29(木) 19:41:06.60 ID:lcuI+9I/MNIKU.net
「なんだよ、そのやりきった感満載のドヤ顔は」

男二人をいとも簡単に打ち倒す腕に感心しつつも、その見下すような眼差しが鳴滝の癪に触ったらしい。

「別に」

前髪を右手で掻きあげて、平手友梨奈は首を傾げながらそう言った。十代の子供にありがちな反抗的な態度に、鳴滝は苦笑いを浮かべる。
これが尾関梨香だったら、その鼻を摘んでやるところなのだが。

「とにかく、俺は敵じゃない。菅井友香もな」

「だから、なに?」

「だから……もう逃げ回るな」

「僕は逃げてなんかいない」

確かに、ただ逃げ回っているわけでもない。実際、鳴滝に襲いかかって来たのだから。

「ああ、そうだ……」

そこで鳴滝は、何かを思い出したような声を上げた。

「ほら、忘れ物だ」

鳴滝はそう言うと、内ポケットから取り出したハンカチに包まれたダガーナイフを平手友梨奈へと差し出した。
だが、彼女は直ぐには受け取ろうとしなかった。ジャケットのポケットへと両手を入れたまま、鳴滝の真意を探るかのように彼の目を見つめていた。

「昼間の続きをやるかい?」

265 :ニャンコ坂46:2018/03/29(木) 20:44:41.27 ID:7F7LR+aKMNIKU.net
鳴滝の意味深な言葉と同時に、平手友梨奈は右足でダガーナイフを持つ彼の手を蹴り上げた。
反射的に後ろへと下がった鳴滝の目の前で、宙を舞うナイフを平手友梨奈が受け取り、その切っ先を彼へと突き出す。
鳴滝は向けられたナイフを持つ平手友梨奈の腕を、弧を描くように左手で掴み取り、右手を添えて身体の回転を加えて捻り上げた。
堪らずナイフを離した平手友梨奈だったが、自らも身体を回転させて鳴滝の拘束から逃れつつ、彼の右足へと蹴りを打ち込んだ。
衝撃に膝から崩れ落ちるかと思われた鳴滝だったが、彼はその体重移動を利用して引き寄せた平手友梨奈の襟首を締め上げた。

「憶えておけ。本物の殺し屋ってのは、道具なんて持ち歩かない」

掴まれた左手を背中へと回され、動きを封じられた平手友梨奈の背後から鳴滝が低い声で囁いた。

「現場にある物で遂行するんだ。その方が足がつかないからな。だが、究極の殺し屋ってのは……」

そこまで語った鳴滝は、左手の人差し指と中指を彼女の喉元へと当てた。

「己自身が凶器だ」

平手友梨奈は目を見開いた。それは彼の言葉によるものではない。背後から伝わる氷のような彼の殺気によるものだった。

「やめなさい!」

川口玲子の甲高い声が響いた。

「何をしているんですか!」

「教育的指導を兼ねた実戦訓練です」

「そんな指導は必要ありません!」

飄々と答えた鳴滝の声に、川口玲子の整った眉が吊り上がった。

266 :ニャンコ坂46:2018/03/29(木) 21:11:34.21 ID:OjK5Ro3YMNIKU.net
「ですよね」

その言葉と共に鳴滝は平手友梨奈の拘束を解いた。だが、彼女は立ち竦んでいた。魂を抜かれたように。

「こんな時間に近所迷惑です!」

「いや、これには事情がありまして……」

頭を掻きながら言い訳を始めた鳴滝に構わず、川口玲子は背後に控えていた尾関梨香からバケツを受け取り、足元で気を失っている男達へとその中の水をぶちまけていた。

「ここで何をしているんですか!不法侵入です。警察を呼びますよ」

奇声を上げて目を覚ました男達へと、川口玲子の喝が飛んだ。

「ちっと待てって!おいたちも訳がわからんと。もう来んけん、直ぐ帰るけん」

そう言って慌てて立ち上がった親玉の男の前で、鳴滝は拾い上げたダガーナイフを手に不敵な笑みを浮かべた。

「オプションで銃刀法違反も付けてやろうか?」

「それはおいたちのもんやなか!違うて!」

「じゃあ、あの包丁は誰のだよ?」

「ごめんて!見逃してくれ」

手を合わせて懇願しながら通りへと出た親玉の男に続き、短髪の男も逃げるように後に続いた。まだ気を失ったままの金髪の男を抱き抱えるようにして、男三人は去って行った。

「なんだか……疲れたな」

その後ろ姿を見ながら鳴滝が呟いた。

「お話しする事はまだありますが、今夜はこれでお休み下さい。お風呂も準備してありますから」

先程の般若のような顔から一転し、川口玲子は穏やかな声でそう鳴滝へと勧めた。

「しかし……」

振り返って平手友梨奈と長濱ねるを見た鳴滝が訝しげに言葉を切った。

「この子達は、もう逃げも隠れも致しません」

267 :ニャンコ坂46:2018/03/29(木) 21:29:33.21 ID:YqocqFslMNIKU.net
「逃げ隠れはしないでしょうが、襲って来られるのは御免です」

その鳴滝の視線は、立ち尽くす平手友梨奈へと向けられていた。

「あれは……サプライズだから……」

「いや、あれはサプライズとは言わない。トラップって呼ぶんだよ」

鳴滝の視線に俯いた平手友梨奈へと、鳴滝のツッコミが入る。

「どっちだって同じだよ」

「本物のナイフ使ったサプライズは、もう殺人未遂と変わらない」

「僕は……殺し屋なんかじゃない」

その平手友梨奈の言葉が沈黙を呼んだ。晩秋の冷たい風がその場にいる者達の高揚を下げながら吹き抜けて行く。

「何処で誰に訓練されたんだ? 」

鳴滝が不意に問いかけた。

「僕が……父親と呼んでいた男だよ」

「父親?」

そこで鳴滝は説明を求めるように川口玲子へと視線を向けた。だが、彼女は目を閉じて沈黙を貫くのみだった。

268 :名無しって、書けない?:2018/03/29(木) 22:38:18.58 ID:0GJlVmKZKNIKU.net
アメブロも合わせての更新乙です
てちこ登場にドキドキです

最近欅坂板でのお絵描きのモチベが下がり気味でしてなかなか貢献できずすまんです
ひらがなちゃんの番組が始まってもあまり変わらないようなら引っ越しも考えております(笑)

269 :ニャンコ坂46:2018/03/30(金) 18:28:44.04 ID:DxQlaIABM.net
>>268
チワンさんのイラストのファンの私としては
チワンさんが引っ越してしまうのは寂しいので
がなちゃん達には頑張ってもらわないと(´ー`)

270 :ニャンコ坂46:2018/03/30(金) 21:11:05.61 ID:wNwR8WcDM.net
沈黙する玲子に代わり平手友梨奈が口を開こうとしたその時、彼女の頭を鳴滝の手の平がそっと押さえ込んだ。

「本当に辛かった事は、そう簡単に誰かに話せるものじゃない。だから、今は無理をするな。話したくなった時に聞かせてくれ。ただし……」

そう言った鳴滝は、平手友梨奈の両肩を掴んで彼女の顔を覗き込んだ。

「これだけは信じてくれ。俺は君達を守るためにここまで来たんだ。どんな奴が相手だろうと、俺がぶっ飛ばしてやる」

「僕は一人でも……」

彼の言葉に反論しようとした平手友梨奈の頬を、鳴滝は両手で押さえ込んでいた。

「一人きりじゃ、大人にはなれないんだよ。自分以外の誰かとの関わりの中でしか、人は成長出来ないんだ」

目を丸くした平手友梨奈を見て、鳴滝はやっといつもの彼らしい悪戯な笑みを浮かべた。

「ガキはガキらしく、大人に甘えておけ」

「僕はガキじゃない!」

鳴滝の手を振りほどき、平手友梨奈が叫ぶ。
その彼女の前で、鳴滝は腕を組んで尚も笑みを浮かべていた。

「俺に勝てたら、ガキじゃないと認めてやる」

挑発するかのような彼の言葉に、平手友梨奈が再び身構えた時、その横を尾関梨香がつかつかと鳴滝の前へと進み出たと思われた瞬間、鳴滝は膝から崩れ落ちていた。

「これ以上、話しをややこしくしないで下さい!」

「お前、自分が馬鹿力だと、いい加減に自覚しろ!」

鳴滝を沈めたのは、尾関梨香の得意技である渾身のローキックだった。

271 :ニャンコ坂46:2018/03/31(土) 19:14:02.66 ID:8r12PyM6M.net
「高校生相手に大人気なく挑発するような人間に、手加減する必要は無いと思いますけど?」

「力加減も出来ない女に諭されているかと思うと、なんだか悲しくなって来るよ」

「自分だって、女子高生相手に本気出してたじゃないですか」

「本気?あれが俺の本気だと思ったのか?ちゃんちゃら可笑しいぜ。ぺったんこ狸君」

「ぺったんこ狸?何ですか、それ?」

そこで尾関は眉を顰めて首を傾げた。

「自分の胸に手を当てて、よく考えてみろ」

鳴滝のその言葉を受けて、尾関梨香は素直に自らの左手を胸へと当てた。

「それが全ての答えだよ。ぺったんこ狸君」

シャーロック・ホームズを気取りつつ、尾関梨香をワトソン君に見立てた鳴滝が、その右手の人差し指を立てていた。

「おりゃ!」

気合いの声と共に、尾関のローキックが再び炸裂したのはその直後だった。

「てめぇ!同じ所に何度も蹴りいれんな!」

そう叫んだ鳴滝は、既に左脚を押さえて崩れ落ちていた。

「セクハラおやじへの正当な制裁です」

鳴滝の前で仁王立ちした尾関が腕を組んで言い放つ。

「探偵が事実を伝えて何が悪い」

「真実は違います。私は着痩せするタイプなんです!」

腰に両手を当てて胸を張った尾関を、鳴滝は寂しげな表情で見上げた。

「うん……まぁ……そう言う事にしておこう」

272 :ニャンコ坂46:2018/03/31(土) 20:07:44.99 ID:gs9sD1iBM.net
「何ですか?その哀れむような目は?」

膝を着いて踞る鳴滝を上から目線で尾関が煽る。それでも尚、鳴滝は哀し気に尾関を見上げていた。

「言いたい事があるなら、はっきり言ったらどうですか?」

その彼の煮え切らない態度に、堪らず尾関が答えを急かした。

「ロッククライマーでも躊躇しそうな断崖絶壁だなぁ……と、そう思っただけさ」

「せいっ!」

鳴滝が語り終わる前に、尾関の気合いの声が重なった。再び繰り出されるであろう彼女の蹴りに、両腕を交差して身構えた鳴滝の予想を裏切り、尾関が繰り出したのは頭上から振り下ろされた鉄拳だった。

「いっ!……」

言葉にならない声と共に、彼は頭を抑えて完全に崩れ落ちていた。

「もう、それぐらいにして下さい」

その二人の攻防を、呆れた声で川口玲子が止めに入った。

「鳴滝さんは不謹慎過ぎます。いくら部下とは言え、体型をどうこう指摘するのは女性に対して余りにも失礼です」

「おっしゃる通りです。以後、慎みます」

玲子の正論に、抗う言葉を今の鳴滝には見出せなかったようだ。

「尾関さんも、暴力に訴えるのは謹んで下さい。自らを女性と主張するのであれば」

「すいません……」

尾関梨香も返す言葉もなく目を伏せた。

その一連の流れを、平手友梨奈はただ沈黙と共に見守っていた。彼女をそうさせていたのは、あるひとつの疑問からだった。
玄関から中へと入った川口玲子に続き、長濱ねると鳴滝が後を追う。
その鳴滝に続き歩き出した尾関の肩を、平手友梨奈が背後から引き留めた。

273 :ニャンコ坂46:2018/03/31(土) 20:36:27.53 ID:gs9sD1iBM.net
「ちょっと……いいかな?」

自らの疑問の答えを得るべく、平手友梨奈は控えめに尾関へとそう問いかけていた。

「どうしたの」

自らの上司たる鳴滝の命を狙い、彼にも引けを取らない体術を持つ平手友梨奈の声に、尾関梨香は戸惑いながらも何とかそう答えていた。

「何故?」

「何故って、何が?」

彼女の意図が読めず、尾関は素直にそう問い返していた。

「何故、君の蹴りはあの人を倒せるの?」

「そんな事聞かれも……ただ思い切り蹴ってるだけだから」

「怖くないの?」

「何が?」

「あの人が」

「大丈夫だよ。だって鳴さん、女子供には手を挙げない人だし。だから、こっちはやりたい放題!」

そう言った尾関は、ついついいつもの調子で親指を立てた右拳を突き出していた。

「でも……さっきは僕を抑えつけたよ」

「あれは私もびっくりしたな。初めて見たかも。でもさ……」

尾関は笑顔を浮かべた。自分でも何故だか分からない。ただ、笑顔が湧き上がって来たのだ。

「それって友梨奈ちゃんの事、子供とは見てないって事じゃない?ちゃんと一人前と認めてるんだと思う」

「そうかな……」

「きっとそうだよ。でなきゃ、本気で向き合ったりしないよ」

俯くように目を伏せた平手友梨奈に、尾関は励ますかのようにそんな言葉を投げかけていた。

「本気で……向き合う?」

「そう。あの人ってさ、口は悪いけど根は優しいんだよね。それだけに不器用って言うか……何て言ったらいいんだろう?素直じゃないって言うか……」

「何となく……分かった」

困り顔の尾関へと、平手友梨奈が初めて笑顔を見せた。その彼女の笑顔に、尾関梨香も笑顔で応える。

「正直に言うとさ、友梨奈ちゃんが羨ましいよ……。私は何も出来なくて……格好悪いよね」

274 :ニャンコ坂46:2018/04/01(日) 19:01:09.87 ID:Qx5vwQrYM.net
とりあえず

https://i.imgur.com/VXUhKEF.jpg

275 :ニャンコ坂46:2018/04/02(月) 18:52:17.23 ID:sCgTkfDwM.net
モチベが上がりません(´ー`)

276 :名無しって、書けない?:2018/04/02(月) 19:36:58.11 ID:qhHwv/iy0.net
>>275
そんな時を耐えてこそ、本当の物語が生まれて来るんでしょうね
作家は天職でないと勤まらない
つくづくそう思いますな

ところで、ずっと気になってたのですが、タイトルの『欅坂の道化師』にはどんな思い込められているのでしょうか
包み隠したようでありながら、とても素敵なタイトルですので、気になります

277 :ニャンコ坂46:2018/04/02(月) 19:52:50.00 ID:t4yaAUuHM.net
>>276
ありがとうございますm(_ _)m
物語りを書く人間にありがちな「これでいいの?」的な底無し沼にはまりかけてます。ラストまで知っている書き手だからこそ陥る罠なんですが。
「欅坂の道化師」の意味は、すっかり存在感をなくした守屋エージェンシーの立花涼介が解き明かしてくれます。それまでのんびりとお待ち下さい。

278 :ニャンコ坂46:2018/04/02(月) 19:53:41.19 ID:t4yaAUuHM.net
「格好悪くなんかないよ。あの人を追い込めるんだから」

今度は平手友梨奈が尾関梨香を励ます側に廻っていた。

「私には手加減してるからね」

尾関の笑顔は、いつしか苦笑いへと変わっていた。

「僕はそうは思わないな」

真剣な顔付きで平手友梨奈が言った。その表情に、尾関も自然と真顔になっていた。

「どう言うこと?」

「あの人……ただの格闘技の経験者ってだけじゃないよね?」

平手友梨奈の問い掛けに、尾関梨香は声を詰まらせた。目の前に立つ彼女の瞳を見つめたまま沈黙するしかなかった。
答えようにも知らないのだ。鳴滝の過去を。

「自慢する訳じゃないけれど、僕だってそれなりに訓練はして来た。それでも、あの人には敵わなかった」

「それは、ほら、同じ探偵でも鳴さんの場合は厄介な案件ばかりに首を突っ込む人だから」

苦し紛れに何とかそう答えたものの、尾関自身もよく分からない答えだと感じて、その戸惑いから視線を平手友梨奈から庭の花壇へと向けていた。

「そうだよね。型にはまった動きじゃないから、実戦で鍛えて来たんだと思う。だからこそ……」

何かを言いかけて沈黙した平手友梨奈に、尾関梨香は無意識に彼女へと視線を戻していた。

「尾関さんの打撃を防げないのが見ていて不思議だった。何故だろう?って……」

尾関梨香の視線に応えるように、平手友梨奈が語り出した。

「きっと尾関さんの打撃は、あの人でも予測出来ないんじゃないかな?」

「いやいや、ただ本気を出す程の相手じゃないからだよ。弱い者イジメはしない人だから」

平手友梨奈の推測に、照れ隠しではなく本気で尾関は困り果てていた。そこまで深く考た事など無く、本能の赴くままにローキックを繰り出していたのだから。

279 :名無しって、書けない?:2018/04/02(月) 23:04:53.54 ID:lKlWhYsYa.net
>>278
モチべ低下の中ご苦労様でありますm(__)m

280 :ニャンコ坂46:2018/04/03(火) 05:22:41.13 ID:zMSW4oAkM.net
>>279
保守ありがとうございますm(_ _)m
絶不調でございます……

281 :ニャンコ坂46:2018/04/03(火) 05:24:24.39 ID:zMSW4oAkM.net
「尾関さんは弱くない」

あの鳴滝に対し、強さにおいては及ばずとも遠からず。そんな平手友梨奈のその言葉に、尾関梨香は彼女の目を見つめて硬直していた。

「だって……あの人が認めて側に置いている人なんだから」

続けて語られた平手友梨奈の言葉に、尾関はますます動揺していた。

「認められてなんかいないよ。あの人、私の事を狸だって言ってるし。聞いてたでしょ?」

「狸は化ける。あの人はそう言いたいだけなんだと思う」

動揺にあたふたする尾関梨香を鎮めたのは、平手友梨奈のその一言だった。

「化ける?」

自分より年下の平手友梨奈の大人びたその言葉に、尾関梨香は即座にそう問い返していた。

「尾関さんの可能性。あの人はそれを誰よりも知っているのかも」

「そんな大袈裟な。鳴さんは、そこまで繊細じゃないから」

度重なる動揺からようやく自分を取り戻しかけた尾関が、上から目線で平手友梨奈へそうと言い放った。

「繊細だからこそ、素直になれないんじゃないかな?」

すぐさま返された彼女の言葉に、尾関は目を見開いた。
そんな事は尾関自身もよく分かっている。だが、それをこの短時間で見抜いた平手友梨奈と言う少女の感受性の強さと存在感に、尾関は自身を失いかけていた。
とても敵いっこない。自分より年下の彼女だが、きっと自分の想像も出来ない程の修羅場を見てきたのだろう。その想いが強くなればなる程、何故だが鳴滝が遠い存在になって行く気がして尾関は目を伏せて俯いていた。

「尾関さんが羨ましいよ」

不意に投げかけられた平手友梨奈の言葉に、尾関は無言で彼女の顔を見た。

「もう少し早くあの人に会えてたら、僕も変われたかもしれないな」

「何言ってるの?友梨奈ちゃんはまだまだこれからじゃない」

彼女の意図を理解出来ぬまま、尾関は即座にそう言い返していた。

282 :ニャンコ坂46:2018/04/03(火) 05:54:29.16 ID:NuDAsIzzM.net
「そうかな……未来が見えないんだ……僕には……」

その彼女の言葉に返す言葉が見つからず、尾関も黙り込んだ時、川口邸の玄関のドアが勢い良く開かれた。

「なんだ。狸とカワウソが喧嘩しているのかと思ったら、お前達だったのか」

そこに玄関から顔を出したのは鳴滝だった。

「カワウソって……」

「ちょろちょろとすばしっこいところとか似てないか?あと、顔もそれっぽいだろ?」

呆れ顔の尾関へと、隣に立つ平手友梨奈を指差しながら鳴滝が呟いた。

「失礼ですよ!」

「仕方ないだろ。俺は繊細な男だから」

「ひょっとして……話しを聞いてたんですか?」

そう言って尾関梨香は眉間に皺を寄せた。

「色気の無いガールズトークだったな」

「最低……」

「文句は中で聞くから、さっさと中へ入れ。風邪ひいちまうぞ」

鳴滝の進言にも女二人は彼の顔を見つめたまま動こうとしなかった。だが、その瞳の奥に秘めた思いはそれぞれに違っていた。

「あのなぁ……」

今度は鳴滝が呆れ顔で一歩外へと踏み出した。

「どんな金持ちでも過去には戻れない。
お前と俺とで積み重ねて来た時間を奪う事は出来ないんだ。それとも、簡単に超えられる程の薄っぺらい関係だったのか?」

尾関へとそう語った鳴滝は、その目を平手友梨奈へと向けた。

「未来なんて見えなくて当たり前だ。だからこそ希望って言葉があるんだ。それに、出逢いに早いも遅いもないんだ。変えられない過去に拘るより、変えていける未来を信じて馬鹿やってる方が、よっぽど楽しいぜ。だろ?」

僅かに平手友梨奈の顔に笑みを確認した鳴滝は、再びひとり玄関の中へと入った。

「分かったらさっさと入れ。小動物コンビ」

それだけ言い残し、彼は奥の部屋へと姿を消した。

283 :ニャンコ坂46:2018/04/03(火) 19:32:57.72 ID:U0GhvTZTM.net
とりあえず保守

284 :ニャンコ坂46:2018/04/03(火) 20:03:32.55 ID:U0GhvTZTM.net
どうも続きが書ける気がしないので、板違いと知りつつ、いつだったかに約束したヤクザ屋さん関係の経験談を書いてみます。

まずは超ライトなものから。

過去に、修羅の国と呼ばれる九州の福岡で仕事をしていた時のお話し。

新規のお客様で、どこからどう見てもヤクザ屋さんだと分かる人がいました。
人相の悪さに加えて、ブランド物のスーツを粋に着こなしたその人は虎キチと言う類いの人間で、阪神タイガースが試合で負けた翌日は頗る機嫌が悪い人だったのは記憶しています。
まぁ、それは可愛い部類に入りますが、ある日、訪問した最中に彼の携帯に電話がかかって来ました。

「はぁ?自殺した?」

彼の衝撃的な返答に、私は直ぐにでも帰りたかったんです。でも動けない。

「馬鹿野郎!鑑識が来るまで中に入るな、ボケ!」

鑑識?え?どう言うこと?
唖然とする私に、彼がやっと自分の身分を明かしてくれました。

「ワシ、京都府警のモンや。詐欺師追っかけてここまで来たんや」

おいおい……どっちがヤクザ屋さんが見分けつきませんって……。まぁ、確かにそのマンションはウィークリーだったので、違和感は感じてましたけどね。

「怪しい奴おったら連絡してや」

そんな事言われても……。
怪しい奴なら幾らでも知ってはいましたが、それでもお客様。人命に関わる証拠を出せない限り、そうそう簡単に情報を提供なんて出来ません。
いわゆるオレオレ詐欺の元締めのヤクザ屋さんを追いかけて、福岡まで来ていたらしいです。大変な仕事ですよね。警察って。

285 :ニャンコ坂46:2018/04/03(火) 20:27:10.61 ID:7Otwi3CDM.net
これも福岡での経験談。
私のいた業界では、ヤクザマンションと呼ばれる物件がありました。
とにかくヤクザ屋さん入居率が高いマンションがあったのです。
そのマンションの一室に居を構えるヤクザ屋さんが私の顧客だった時がありました。

「なぁ?このシミ落ちるかいな?」

ある日、そのヤクザ屋さんが私にブルゾンの袖口についた食べこぼしであろう茶色いシミを見せて来ました。

「さぁ……どうでしょう?」

そう答えつつ、私は呆然としていました。
何故なら、そのブルゾンを差し出したヤクザ屋さんのスウェットが、血まみれだったからです。
彼自身は怪我などしていない様子だったので、その血はおそらくは返り血。

「この服、気に入っとるとやけど」

「クリーニング屋さんに相談された方が良いかと……」

「それもそうやな」

床に敷かれた虎の皮製の敷物の上で頷くヤクザ屋さん。
それから一ヶ月以上、連絡が取れなくなりました。留守電にメッセージを残すも、返答無し。
ついに殺られたか……そう思っていた時、ヤクザ屋さんから連絡が来ました。

「おいは何もしとらんとに、サツが……」

要約すると、この一ヶ月以上は鉄格子の中にいたそうです。

いやいや……あれだけの返り血を浴びるって、傷害事件起こしてるやろ……。

意味がわからない。血まみれなのに、袖口の小さなシミが気になるなるなんて……。

不思議な人達ですよね。ヤクザ屋さんって。

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