松田里奈「どうすりゃいいんだ・・・」

名無しって、書けない？

本拠地、東京メディアシティで迎えた「欅って、書けない？」の収録

渡辺梨加が返事もできず大炎上、長沢菜々香もやる気を見せず軽く放送事故だった

スタジオに響くMCのため息、スタッフから聞こえる「欅坂はオワコンだな」の声

無言で帰り始めるメンバー達の中、期待の2期生松田は独り楽屋で泣いていた。

ネプリーグで手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できる共演者・・・

それを今の欅坂46で得ることは殆ど不可能と言ってよかった

「どうすりゃいいんだ・・・」松田は悔し涙を流し続けた

どれくらい経ったろうか、松田ははっと目覚めた

どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した

「やれやれ、帰ってブログを更新しなくちゃな」松田は苦笑しながら呟いた

立ち上がって伸びをした時、松田はふと気付いた
「あれ・・・？お客さんがいる・・・？」

楽屋から飛び出した松田が目にしたのは、3階席まで埋めつくさんばかりの観客だった

千切れそうなほどにサイリウムが振られ、地鳴りのように歓声が響いていた

どういうことか分からずに呆然とする松田の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた

「まつりちゃん、今日は頑張ろうね！」声の方に振り返った松田は目を疑った

「す・・・鈴本さん？」　「なんだ松田、居眠りでもしてたのか？」

「ひ・・・平手さん？脱退したはずじゃ・・・」　　「なんだ里奈、かってにてちを脱退させやがって」

「ずーみんさん・・・」　松田は半分パニックになりながらフォーメーション表を見上げた

第67回紅白歌合戦

欅坂46 『サイレントマジョリティー』

１列目:松田　鈴本　平手　今泉　小林

2列目:土生　尾関　守屋　菅井　志田　渡邉

3列目:齋藤　織田　上村　長沢　小池　佐藤　原田　米谷　石森

暫時、唖然としていた松田だったが、全てを理解した時、もはや彼女の心には雲ひとつ無かった

「勝てる・・・勝てるんだ！」

渡辺梨加からピンマイクを受け取り、ステージへ全力疾走する松田、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、ベンチで冷たくなっている松田が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った