ハピカビは悪くない

32 ：ピカチュウ：2017/08/05(土) 21:54:15.70 ID:pHxVr8s0M.net

ピカチュウ好きだった私は黄色チームを選んだものの、
仲間が少ないことから体の弱い母を「健康のため」と半ば強引にポケモンGOに引き入れた。

程なくして母はラッキーを孵化させたが当時はまだ珍しく、
羨ましがる私を見て「トレード来たらあげるから、大切に育てるね」
嬉しそうにそう言ってラッキーに『タカシ』と私の名前をつけた。

それから1年ほど経ったある日、レイドの人手が足りず困った私は母を呼んだ。
母の使うポケモンは当然、お気に入りの『タカシ』。
瀕死にしても「可哀想だから」と常に全回復。
レイドが始まると周りから
「ピンクのデブムカつく!」「誰だよ、寄生虫入れたの!」と怒声が聞こえてきた。
私はレイドに負けた怒りと恥ずかしさのあまり母からスマホを取り上げ『タカシ』を博士に送った。

「タカシ、アメになっちゃった…ゴメンね…」
母は悲しそうにつぶやき、それ以来ポケモンGOをやらなくなった。

3ヶ月後、母は病気で死んだ。
遺品を整理をしているとSNSで母の日記が見つかった。
そこには2年前には余命1年あまりと宣告されていたことが書かれていた。
それからの大部分は『タカシ』のことばかり書いてあった。
｢今日たかしからレイドに誘って貰えた。頑張るぞ｣
更新はここで止まっていた。
私は溢れ出す涙をこらえられなかった。