2ちゃんねる ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50    

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

【NIA】ポケモンGO Lv.1340【ポケゴ 】

1 :ピカチュウ :2019/10/11(金) 20:04:46.47 ID:cK8yqyoOM.net
!extend:checked:vvvvvv:1000:512
!extend:checked:vvvvvv:1000:512
スレ立て時↑が3行になるようコピペして下さい

★NGIP必須(以前から粘着しているコピペ荒らしのかまってちゃん。中身のない発言しかしないのでNGしても支障なし)
60.151.78.61

※sage推奨

■日本ポケモンGO 公式サイト
http://www.pokemongo.jp/
■日本ポケモンGO 公式
イベント&アップデート&サポート
http://pokemongolive.com/events
■Niantic ブログ
http://nianticlabs.com/blog-ja
■Pokemon GO 公式ツイッター
http://twitter.com/PokemonGOAppJP?lang=ja

次スレは>>950が宣言してから建ててください
建てられない場合は建てられない旨を宣言するか、または立てられる人が宣言して立ててください
荒らしはNGするかスルー
政治の話題、宣伝、基地外コテ、無関係なツイッター等を貼る荒らし、60.151.78.61に構う行為は全て禁止です


Android
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.nianticlabs.pokemongo
iOS
https://itunes.apple.com/jp/app/pok%C3%A9mon-go/id1094591345?mt=8

前スレ
【NIA】ポケモンGO Lv.1339【ポケゴ 】
http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/pokego/1570668927/
VIPQ2_EXTDAT: checked:vvvvvv:1000:512:: EXT was configured
(deleted an unsolicited ad)

628 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:20:33.30 ID:WOfusfvWd.net
も子どもたちと遊んでいるのです。が、きょうはどうしたのか両腕を胸へ組ん
だまま、苦い顔をしてすわっていました。のみならずそのまた足もとには紙屑
かみくずが一面に散らばっていました。ラップも詩人トックといっしょにたび
たびクラバックには会っているはずです。しかしこの容子ようすに恐れたとみ
え、きょうは丁寧ていねいにお時宜じぎをしたなり、黙って部屋の隅すみに腰
をおろしました。
「どうしたね? クラバック君。」
 僕はほとんど挨拶あいさつの代わりにこう大音楽家へ問いかけました。
「どうするものか? 批評家の阿呆あほうめ! 僕の抒情じょじょう詩はトッ
クの抒情詩と比べものにならないと言やがるんだ。」
「しかし君は音楽家だし、……」
「それだけならば我慢がまんもできる。僕はロックに比べれば、音楽家の名に
価しないと言やがるじゃないか?」
 ロックというのはクラバックとたびたび比べられる音楽家です。が、あいに
く超人倶楽部クラブの会員になっていない関係上、僕は一度も話したことはあ
りません。もっとも嘴の反そり上がった、一癖ひとくせあるらしい顔だけはた
びたび写真でも見かけていました。
「ロックも天才には違いない。しかしロックの音楽は君の音楽にあふれている
近代的情熱を持っていない。」
「君はほんとうにそう思うか?」
「そう思うとも。」
 するとクラバックは立ち上がるが早いか、タナグラの人形をひっつかみ、い
きなり床ゆかの上にたたきつけました。ラップはよほど驚いたとみえ、何か声
をあげて逃げようとしました。が、クラバックはラップや僕にはちょっと「驚
くな」という手真似てまねをした上、今度は冷やかにこう言うのです。
「それは君もまた俗人のように耳を持っていないからだ。僕はロックを恐れて
いる。……」
「君が? 謙遜家けんそんかを気どるのはやめたまえ。」
「だれが謙遜家けんそんかを気どるものか? 第一君たちに気どって見せるく
らいならば、批評家たちの前に気どって見せている。僕は――クラバックは天
才だ。その点ではロックを恐れていない。」
「では何を恐れているのだ?」
「何か正体しょうたいの知れないものを、――言わばロックを支配している星
を。」
「どうも僕には腑ふに落ちないがね。」
「ではこう言えばわかるだろう。ロックは僕の影響を受けない。が、僕はいつ
の間まにかロックの影響を受けてしまうのだ。」
「それは君の感受性の……。」
「まあ、聞きたまえ。感受性などの問題ではない。ロックはいつも安んじてあ
いつだけにできる仕事をしている。しかし僕はいらいらするのだ。それはロッ
クの目から見れば、あるいは一歩の差かもしれない。けれども僕には十哩マイ
ルも違うのだ。」

629 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:21:05.90 ID:2coLgzfjd.net
「しかし先生の英雄曲は……」
 クラバックは細い目をいっそう細め、いまいましそうにラップをにらみつけ
ました。
「黙りたまえ。君などに何がわかる? 僕はロックを知っているのだ。ロック
に平身低頭する犬どもよりもロックを知っているのだ。」
「まあ少し静かにしたまえ。」
「もし静かにしていられるならば、……僕はいつもこう思っている。――僕ら
の知らない何ものかは僕を、――クラバックをあざけるためにロックを僕の前
に立たせたのだ。哲学者のマッグはこういうことをなにもかも承知している。
いつもあの色硝子いろガラスのランタアンの下に古ぼけた本ばかり読んでいる
くせに。」
「どうして?」
「この近ごろマッグの書いた『阿呆あほうの言葉』という本を見たまえ。――

 クラバックは僕に一冊の本を渡す――というよりも投げつけました。それか
らまた腕を組んだまま、突つっけんどんにこう言い放ちました。
「じゃきょうは失敬しよう。」
 僕はしょげ返ったラップといっしょにもう一度往来へ出ることにしました。
人通りの多い往来は相変わらず毛生欅ぶなの並み木のかげにいろいろの店を並
べています。僕らはなんということもなしに黙って歩いてゆきました。すると
そこへ通りかかったのは髪の長い詩人のトックです。トックは僕らの顔を見る
と、腹の袋から手巾ハンケチを出し、何度も額をぬぐいました。
「やあ、しばらく会わなかったね。僕はきょうは久しぶりにクラバックを尋ね
ようと思うのだが、……」
 僕はこの芸術家たちを喧嘩けんかさせては悪いと思い、クラバックのいかに
も不機嫌ふきげんだったことを婉曲えんきょくにトックに話しました。
「そうか。じゃやめにしよう。なにしろクラバックは神経衰弱だからね。……
僕もこの二三週間は眠られないのに弱っているのだ。」
「どうだね、僕らといっしょに散歩をしては?」
「いや、きょうはやめにしよう。おや!」
 トックはこう叫ぶが早いか、しっかり僕の腕をつかみました。しかもいつか
体中からだじゅうに冷汗を流しているのです。
「どうしたのだ?」
「どうしたのです?」

630 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:21:31.87 ID:2coLgzfjd.net
「なにあの自動車の窓の中から緑いろの猿さるが一匹首を出したように見えた
のだよ。」
 僕は多少心配になり、とにかくあの医者のチャックに診察してもらうように
勧めました。しかしトックはなんと言っても、承知する気色けしきさえ見せま
せん。のみならず何か疑わしそうに僕らの顔を見比べながら、こんなことさえ
言い出すのです。
「僕は決して無政府主義者ではないよ。それだけはきっと忘れずにいてくれた
まえ。――ではさようなら。チャックなどはまっぴらごめんだ。」
 僕らはぼんやりたたずんだまま、トックの後ろ姿を見送っていました。僕ら
は――いや、「僕ら」ではありません。学生のラップはいつの間にか往来のま
ん中に脚あしをひろげ、しっきりない自動車や人通りを股目金まためがねにの
ぞいているのです。僕はこの河童かっぱも発狂したかと思い、驚いてラップを
引き起こしました。
「常談じょうだんじゃない。何をしている?」
 しかしラップは目をこすりながら、意外にも落ち着いて返事をしました。
「いえ、あまり憂鬱ゆううつですから、さかさまに世の中をながめて見たので
す。けれどもやはり同じことですね。」
十一
 これは哲学者のマッグの書いた「阿呆あほうの言葉」の中の何章かです。―

        ×
 阿呆はいつも彼以外のものを阿呆であると信じている。
        ×
 我々の自然を愛するのは自然は我々を憎んだり嫉妬しっとしたりしないため
もないことはない。
        ×
 もっとも賢い生活は一時代の習慣を軽蔑けいべつしながら、しかもそのまた
習慣を少しも破らないように暮らすことである。
        ×
 我々のもっとも誇りたいものは我々の持っていないものだけである。
        ×
 何なんびとも偶像を破壊することに異存を持っているものはない。同時にま
た何びとも偶像になることに異存を持っているものはない。しかし偶像の台座
の上に安んじてすわっていられるものはもっとも神々に恵まれたもの、――阿
呆か、悪人か、英雄かである。(クラバックはこの章の上へ爪つめの痕あとを
つけていました。)
        ×
 我々の生活に必要な思想は三千年前ぜんに尽きたかもしれない。我々はただ
古い薪たきぎに新しい炎を加えるだけであろう。
        ×
 我々の特色は我々自身の意識を超越するのを常としている。
        ×
 幸福は苦痛を伴い、平和は倦怠けんたいを伴うとすれば、――?
        ×
 自己を弁護することは他人を弁護することよりも困難である。疑うものは弁
護士を見よ。
        ×
 矜誇きょうか[#ルビの「きょうか」はママ]、愛欲、疑惑――あらゆる罪
は三千年来、この三者から発している。同時にまたおそらくはあらゆる徳も。

631 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:22:49.39 ID:2coLgzfjd.net
物質的欲望を減ずることは必ずしも平和をもたらさない。我々は平和を得る
ためには精神的欲望も減じなければならぬ。(クラバックはこの章の上にも爪
つめの痕あとを残していました。)
   我々は人間よりも不幸である。人間は河童かっぱほど進化していない。(僕
はこの章を読んだ時思わず笑ってしまいました。)
 成すことは成し得ることであり、成し得ることは成すことである。畢竟ひっ
きょう我々の生活はこういう循環論法を脱することはできない。――すなわち
不合理に終始している。
 ボオドレエルは白痴になった後のち、彼の人生観をたった一語に、――女陰
の一語に表白した。しかし彼自身を語るものは必ずしもこう言ったことではな
い。むしろ彼の天才に、――彼の生活を維持するに足る詩的天才に信頼したた
めに胃袋の一語を忘れたことである。(この章にもやはりクラバックの爪の痕
は残っていました。)
 もし理性に終始するとすれば、我々は当然我々自身の存在を否定しなければ
ならぬ。理性を神にしたヴォルテエルの幸福に一生をおわったのはすなわち人
間の河童よりも進化していないことを示すものである

 ある割合に寒い午後です。僕は「阿呆あほうの言葉」を読み飽きましたから
、哲学者のマッグを尋ねに出かけました。するとある寂しい町の角かどに蚊の
ようにやせた河童かっぱが一匹、ぼんやり壁によりかかっていました。しかも
それは紛れもない、いつか僕の万年筆を盗んでいった河童なのです。僕はしめ
たと思いましたから、ちょうどそこへ通りかかった、たくましい巡査を呼びと
めました。
「ちょっとあの河童を取り調べてください。あの河童はちょうど一月ひとつき
ばかり前にわたしの万年筆を盗んだのですから。」
 巡査は右手の棒をあげ、(この国の巡査は剣けんの代わりに水松いちいの棒
を持っているのです。)「おい、君」とその河童へ声をかけました。僕はある
いはその河童は逃げ出しはしないかと思っていました。が、存外落ち着き払っ
て巡査の前へ歩み寄りました。のみならず腕を組んだまま、いかにも傲然ごう
ぜんと僕の顔や巡査の顔をじろじろ見ているのです。しかし巡査は怒おこりも
せず、腹の袋から手帳を出してさっそく尋問にとりかかりました。
「お前の名は?」「グルック。」「職業は?」
「つい二三日前までは郵便配達夫をしていました。」
「よろしい。そこでこの人の申し立てによれば、君はこの人の万年筆を盗んで
いったということだがね。」
「ええ、一月ばかり前に盗みました。」「なんのために?」
「子どもの玩具おもちゃにしようと思ったのです。」
「その子どもは?」
 巡査ははじめて相手の河童へ鋭い目を注ぎました。
「一週間前に死んでしまいました。」
「死亡証明書を持っているかね?」
 やせた河童は腹の袋から一枚の紙をとり出しました。巡査はその紙へ目を通
すと、急ににやにや笑いながら、相手の肩をたたきました。
「よろしい。どうも御苦労だったね。」
 僕は呆気あっけにとられたまま、巡査の顔をながめていました。しかもその
うちにやせた河童は何かぶつぶつつぶやきながら、僕らを後ろにして行ってし
まうのです。僕はやっと気をとり直し、こう巡査に尋ねてみました。
「どうしてあの河童をつかまえないのです?」
「あの河童は無罪ですよ。」
「しかし僕の万年筆を盗んだのは……」
「子どもの玩具にするためだったのでしょう。けれどもその子どもは死んでい
るのです。もし何か御不審だったら、刑法千二百八十五条をお調べなさい。」
 巡査はこう言いすてたなり、さっさとどこかへ行ってしまいました。僕はし
かたがありませんから、「刑法千二百八十五条」を口の中に繰り返し、マッグ
の家うちへ急いでゆきました。哲学者のマッグは客好きです。現にきょうも薄
暗い部屋へやには裁判官のペップや医者のチャックや硝子ガラス会社の社長の
ゲエルなどが集まり、七色なないろの色硝子のランタアンの下に煙草たばこの
煙を立ち昇のぼらせていました。そこに裁判官のペップが来ていたのは何より
も僕には好こうつごうです。僕は椅子いすにかけるが早いか、刑法第千二百八
十五条を検しらべる代わりにさっそくペップへ問いかけました。

632 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:23:37.99 ID:2coLgzfjd.net
「ペップ君、はなはだ失礼ですが、この国では罪人を罰しないのですか?」
 ペップは金口きんぐちの煙草の煙をまず悠々ゆうゆうと吹き上げてから、い
かにもつまらなそうに返事をしました。
「罰しますとも。死刑さえ行なわれるくらいですからね。」
「しかし僕は一月ひとつきばかり前に、……」
 僕は委細を話した後のち、例の刑法千二百八十五条のことを尋ねてみました

「ふむ、それはこういうのです。――『いかなる犯罪を行ないたりといえども
、該がい犯罪を行なわしめたる事情の消失したる後は該犯罪者を処罰すること
を得ず』つまりあなたの場合で言えば、その河童かっぱはかつては親だったの
ですが、今はもう親ではありませんから、犯罪も自然と消滅するのです。」
「それはどうも不合理ですね。」
「常談じょうだんを言ってはいけません。親だった河童も親である河童も同一
に見るのこそ不合理です。そうそう、日本の法律では同一に見ることになって
いるのですね。それはどうも我々には滑稽こっけいです。ふふふふふふふふふ
ふ。」
 ペップは巻煙草をほうり出しながら、気のない薄笑いをもらしていました。
そこへ口を出したのは法律には縁の遠いチャックです。チャックはちょっと鼻
目金はなめがねを直し、こう僕に質問しました。
「日本にも死刑はありますか?」
「ありますとも。日本では絞罪こうざいです。」
 僕は冷然と構えこんだペップに多少反感を感じていましたから、この機会に
皮肉を浴びせてやりました。
「この国の死刑は日本よりも文明的にできているでしょうね?」
「それはもちろん文明的です。」
 ペップはやはり落ち着いていました。
「この国では絞罪などは用いません。まれには電気を用いることもあります。
しかしたいていは電気も用いません。ただその犯罪の名を言って聞かせるだけ
です。」
「それだけで河童は死ぬのですか?」
「死にますとも。我々河童の神経作用はあなたがたのよりも微妙ですからね。

「それは死刑ばかりではありません。殺人にもその手を使うのがあります――


633 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:24:30.53 ID:oPRr1Mzxd.net
 社長のゲエルは色硝子いろガラスの光に顔中紫に染まりながら、人なつこい
笑顔えがおをして見せました。
「わたしはこの間もある社会主義者に『貴様は盗人ぬすびとだ』と言われたた
めに心臓痲痺まひを[#「痲痺を」は底本では「痳痺を」]起こしかかったも
のです。」
「それは案外多いようですね。わたしの知っていたある弁護士などはやはりそ
のために死んでしまったのですからね。」
 僕はこう口を入れた河童かっぱ、――哲学者のマッグをふりかえりました。
マッグはやはりいつものように皮肉な微笑を浮かべたまま、だれの顔も見ずに
しゃべっているのです。
「その河童はだれかに蛙かえるだと言われ、――もちろんあなたも御承知でし
ょう、この国で蛙だと言われるのは人非人にんぴにんという意味になることぐ
らいは。――己おれは蛙かな? 蛙ではないかな? と毎日考えているうちに
とうとう死んでしまったものです。」
「それはつまり自殺ですね。」
「もっともその河童を蛙だと言ったやつは殺すつもりで言ったのですがね。あ
なたがたの目から見れば、やはりそれも自殺という……」
 ちょうどマッグがこう言った時です。突然その部屋へやの壁の向こうに、―
―たしかに詩人のトックの家に鋭いピストルの音が一発、空気をはね返すよう
に響き渡りました。
十三
 僕らはトックの家へ駆けつけました。トックは右の手にピストルを握り、頭
の皿から血を出したまま、高山植物の鉢植はちうえの中に仰向あおむけになっ
て倒れていました。そのまたそばには雌めすの河童が一匹、トックの胸に顔を
埋うずめ、大声をあげて泣いていました。僕は雌の河童を抱き起こしながら、
(いったい僕はぬらぬらする河童の皮膚に手を触れることをあまり好んではい
ないのですが。)「どうしたのです?」と尋ねました。
「どうしたのだか、わかりません。ただ何か書いていたと思うと、いきなりピ
ストルで頭を打ったのです。ああ、わたしはどうしましょう? qur-r-
r-r-r, qur-r-r-r-r」(これは河童の泣き声です。)
「なにしろトック君はわがままだったからね。」
 硝子ガラス会社の社長のゲエルは悲しそうに頭を振りながら、裁判官のペッ
プにこう言いました。しかしペップは何も言わずに金口きんぐちの巻煙草まき
たばこに火をつけていました。すると今までひざまずいて、トックの創口きず

634 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:25:05.58 ID:Qajc4caQ0.net
恥ずかしゅうなってめっちゃ荒らされてるやん

635 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:25:12.54 ID:oPRr1Mzxd.net
ぐちなどを調べていたチャックはいかにも医者らしい態度をしたまま、僕ら五
人に宣言しました。(実はひとりと四匹しひきとです。)
「もう駄目だめです。トック君は元来胃病でしたから、それだけでも憂鬱ゆう
うつになりやすかったのです。」
「何か書いていたということですが。」
 哲学者のマッグは弁解するようにこう独ひとり語ごとをもらしながら、机の
上の紙をとり上げました。僕らは皆頸くびをのばし、(もっとも僕だけは例外
です。)幅の広いマッグの肩越しに一枚の紙をのぞきこみました。
「いざ、立ちてゆかん。娑婆界しゃばかいを隔つる谷へ。
 岩むらはこごしく、やま水は清く、
 薬草の花はにおえる谷へ。」
 マッグは僕らをふり返りながら、微苦笑といっしょにこう言いました。
「これはゲエテの『ミニヨンの歌』の剽窃ひょうせつですよ。するとトック君
の自殺したのは詩人としても疲れていたのですね。」
 そこへ偶然自動車を乗りつけたのはあの音楽家のクラバックです。クラバッ
クはこういう光景を見ると、しばらく戸口にたたずんでいました。が、僕らの
前へ歩み寄ると、怒鳴どなりつけるようにマッグに話しかけました。
「それはトックの遺言状ゆいごんじょうですか?」
「いや、最後に書いていた詩です。」
「詩?」
 やはり少しも騒がないマッグは髪を逆立さかだてたクラバックにトックの詩
稿を渡しました。クラバックはあたりには目もやらずに熱心にその詩稿を読み
出しました。しかもマッグの言葉にはほとんど返事さえしないのです。
「あなたはトック君の死をどう思いますか?」
「いざ、立ちて、……僕もまたいつ死ぬかわかりません。……娑婆界しゃばか
いを隔つる谷へ。……」
「しかしあなたはトック君とはやはり親友のひとりだったのでしょう?」
「親友? トックはいつも孤独だったのです。……娑婆界を隔つる谷へ、……
ただトックは不幸にも、……岩むらはこごしく……」
「不幸にも?」
「やま水は清く、……あなたがたは幸福です。……岩むらはこごしく。……」
 僕はいまだに泣き声を絶たない雌めすの河童かっぱに同情しましたから、そ
っと肩を抱かかえるようにし、部屋へやの隅すみの長椅子ながいすへつれてい
きました。そこには二歳か三歳かの河童が一匹、何も知らずに笑っているので
す。僕は雌の河童の代わりに子どもの河童をあやしてやりました。するといつ
か僕の目にも涙のたまるのを感じました。僕が河童の国に住んでいるうちに涙
というものをこぼしたのは前にもあとにもこの時だけです。
「しかしこういうわがままの河童といっしょになった家族は気の毒ですね。」
「なにしろあとのことも考えないのですから。」
 裁判官のペップは相変わらず、新しい巻煙草まきたばこに火をつけながら、
資本家のゲエルに返事をしていました。すると僕らを驚かせたのは音楽家のク
ラバックのおお声です。クラバックは詩稿を握ったまま、だれにともなしに呼

636 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:25:17.58 ID:b9VpTv0j0.net
>>599
同じだ。ちゃんと寝たのに眠くてめちゃめちゃ昼寝した。
台風で気圧が低くなってるからなのか?

637 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:26:00.69 ID:oPRr1Mzxd.net
びかけました。
「しめた! すばらしい葬送曲ができるぞ。」
 クラバックは細い目をかがやかせたまま、ちょっとマッグの手を握ると、い
きなり戸口へ飛んでいきました。もちろんもうこの時には隣近所の河童が大勢
、トックの家の戸口に集まり、珍しそうに家の中をのぞいているのです。しか
しクラバックはこの河童たちを遮二無二しゃにむに左右へ押しのけるが早いか
、ひらりと自動車へ飛び乗りました。同時にまた自動車は爆音を立ててたちま
ちどこかへ行ってしまいました。
「こら、こら、そうのぞいてはいかん。」
 裁判官のペップは巡査の代わりに大勢の河童かっぱを押し出した後のち、ト
ックの家の戸をしめてしまいました。部屋へやの中はそのせいか急にひっそり
なったものです。僕らはこういう静かさの中に――高山植物の花の香に交じっ
たトックの血の匂においの中に後始末あとしまつのことなどを相談しました。
しかしあの哲学者のマッグだけはトックの死骸しがいをながめたまま、ぼんや
り何か考えています。僕はマッグの肩をたたき、「何を考えているのです?」
と尋ねました。
「河童の生活というものをね。」
「河童の生活がどうなるのです?」
「我々河童はなんと言っても、河童の生活をまっとうするためには、……」
 マッグは多少はずかしそうにこう小声でつけ加えました。
「とにかく我々河童以外の何ものかの力を信ずることですね。」
一四
 僕に宗教というものを思い出させたのはこういうマッグの言葉です。僕はも
ちろん物質主義者ですから、真面目まじめに宗教を考えたことは一度もなかっ
たのに違いありません。が、この時はトックの死にある感動を受けていたため
にいったい河童の宗教はなんであるかと考え出したのです。僕はさっそく学生
のラップにこの問題を尋ねてみました。
「それは基督教キリストきょう、仏教、モハメット教、拝火教はいかきょうな
ども行なわれています。まず一番勢力のあるものはなんといっても近代教でし
ょう。生活教とも言いますがね。」(「生活教」という訳語は当たっていない
かもしれません。この原語は Quemoocha です。cha は英吉利
イギリス語の ism という意味に当たるでしょう。quemoo の原形
quemal の訳は単に「生きる」というよりも「飯を食ったり、酒を飲
んだり、交合こうごうを行なったり」する意味です。)
「じゃこの国にも教会だの寺院だのはあるわけなのだね?」
「常談じょうだんを言ってはいけません。近代教の大寺院などはこの国第一の
大建築ですよ。どうです、ちょっと見物に行っては?」

638 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:26:23.20 ID:oPRr1Mzxd.net
 ある生温なまあたたかい曇天の午後、ラップは得々とくとくと僕といっしょ
にこの大寺院へ出かけました。なるほどそれはニコライ堂の十倍もある大建築
です。のみならずあらゆる建築様式を一つに組み上げた大建築です。僕はこの
大寺院の前に立ち、高い塔や円まる屋根をながめた時、なにか無気味にさえ感
じました。実際それらは天に向かって伸びた無数の触手しょくしゅのように見
えたものです。僕らは玄関の前にたたずんだまま、(そのまた玄関に比べてみ
ても、どのくらい僕らは小さかったのでしょう!)しばらくこの建築よりもむ
しろ途方もない怪物に近い稀代きだいの大寺院を見上げていました。
 大寺院の内部もまた広大です。そのコリント風の円柱の立った中には参詣さ
んけい人が何人も歩いていました。しかしそれらは僕らのように非常に小さく
見えたものです。そのうちに僕らは腰の曲がった一匹の河童かっぱに出合いま
した。するとラップはこの河童にちょっと頭を下げた上、丁寧ていねいにこう
話しかけました。
「長老、御ご達者なのは何よりもです。」
 相手の河童もお時宜じぎをした後のち、やはり丁寧に返事をしました。
「これはラップさんですか? あなたも相変わらず、――(と言いかけながら
、ちょっと言葉をつがなかったのはラップの嘴くちばしの腐っているのにやっ
と気がついたためだったでしょう。)――ああ、とにかく御丈夫らしいようで
すね。が、きょうはどうしてまた……」
「きょうはこの方かたのお伴をしてきたのです。この方はたぶん御承知のとお
り、――」
 それからラップは滔々とうとうと僕のことを話しました。どうもまたそれは
この大寺院へラップがめったに来ないことの弁解にもなっていたらしいのです

「ついてはどうかこの方の御案内を願いたいと思うのですが。」
 長老は大様おおように微笑しながら、まず僕に挨拶あいさつをし、静かに正
面しょうめんの祭壇を指さしました。
「御案内と申しても、何もお役に立つことはできません。我々信徒の礼拝らい
はいするのは正面の祭壇にある『生命の樹き』です。『生命の樹』にはごらん
のとおり、金と緑との果みがなっています。あの金の果を『善の果』と言い、
あの緑の果を『悪の果』と言います。……」
 僕はこういう説明のうちにもう退屈を感じ出しました。それはせっかくの長
老の言葉も古い比喩ひゆのように聞こえたからです。僕はもちろん熱心に聞い

639 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:26:57.04 ID:SASTOEg90.net
自分がテンプレ変えたスレが伸びないからワッチョイ変えて発狂してるんだろうなぁ
そんなことしても次スレ立てるだけなのに

640 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:27:20.24 ID:CrveCW31d.net
ている容子ようすを装っていました。が、時々は大寺院の内部へそっと目をや
るのを忘れずにいました。
 コリント風の柱、ゴシック風の穹窿きゅうりゅう、アラビアじみた市松いち
まつ模様の床ゆか、セセッションまがいの祈祷机きとうづくえ、――こういう
ものの作っている調和は妙に野蛮な美を具そなえていました。しかし僕の目を
ひいたのは何よりも両側の龕がんの中にある大理石の半身像です。僕は何かそ
れらの像を見知っているように思いました。それもまた不思議ではありません
。あの腰の曲った河童かっぱは「生命の樹」の説明をおわると、今度は僕やラ
ップといっしょに右側の龕の前へ歩み寄り、その龕の中の半身像にこういう説
明を加え出しました。
「これは我々の聖徒のひとり、――あらゆるものに反逆した聖徒ストリントベ
リイです。この聖徒はさんざん苦しんだあげく、スウェデンボルグの哲学のた
めに救われたように言われています。が、実は救われなかったのです。この聖
徒はただ我々のように生活教を信じていました。――というよりも信じるほか
はなかったのでしょう。この聖徒の我々に残した『伝説』という本を読んでご
らんなさい。この聖徒も自殺未遂者だったことは聖徒自身告白しています。」
 僕はちょっと憂鬱ゆううつになり、次の龕がんへ目をやりました。次の龕に
ある半身像は口髭くちひげの太い独逸ドイツ人です。
「これはツァラトストラの詩人ニイチェです。その聖徒は聖徒自身の造った超
人に救いを求めました。が、やはり救われずに気違いになってしまったのです
。もし気違いにならなかったとすれば、あるいは聖徒の数かずへはいることも
できなかったかもしれません。……」
 長老はちょっと黙った後のち、第三の龕がんの前へ案内しました。
「三番目にあるのはトルストイです。この聖徒はだれよりも苦行をしました。
それは元来貴族だったために好奇心の多い公衆に苦しみを見せることをきらっ
たからです。この聖徒は事実上信ぜられない基督キリストを信じようと努力し
ました。いや、信じているようにさえ公言したこともあったのです。しかしと
うとう晩年には悲壮な※(「言+墟のつくり」、第4水準2-88-74)う
そつきだったことに堪たえられないようになりました。この聖徒も時々書斎の
梁はりに恐怖を感じたのは有名です。けれども聖徒の数にはいっているくらい
ですから、もちろん自殺したのではありません。」

641 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:27:50.80 ID:CrveCW31d.net
 第四の龕の中の半身像は我々日本人のひとりです。僕はこの日本人の顔を見
た時、さすがに懐なつかしさを感じました。
「これは国木田独歩くにきだどっぽです。轢死れきしする人足にんそくの心も
ちをはっきり知っていた詩人です。しかしそれ以上の説明はあなたには不必要
に違いありません。では五番目の龕の中をごらんください。――」
「これはワグネルではありませんか?」
「そうです。国王の友だちだった革命家です。聖徒ワグネルは晩年には食前の
祈祷きとうさえしていました。しかしもちろん基督教よりも生活教の信徒のひ
とりだったのです。ワグネルの残した手紙によれば、娑婆苦しゃばくは何度こ
の聖徒を死の前に駆りやったかわかりません。」
 僕らはもうその時には第六の龕がんの前に立っていました。
「これは聖徒ストリントベリイの友だちです。子どもの大勢ある細君の代わり
に十三四のクイティの女をめとった商売人上がりの仏蘭西フランスの画家です
。この聖徒は太い血管の中に水夫の血を流していました。が、唇くちびるをご
らんなさい。砒素ひそか何かの痕あとが残っています。第七の龕の中にあるの
は……もうあなたはお疲れでしょう。ではどうかこちらへおいでください。」
 僕は実際疲れていましたから、ラップといっしょに長老に従い、香こうの匂
においのする廊下伝いにある部屋へやへはいりました。そのまた小さい部屋の
隅すみには黒いヴェヌスの像の下に山葡萄やまぶどうが一ふさ献じてあるので
す。僕はなんの装飾もない僧房を想像していただけにちょっと意外に感じまし
た。すると長老は僕の容子ようすにこういう気もちを感じたとみえ、僕らに椅
子いすを薦すすめる前に半ば気の毒そうに説明しました。
「どうか我々の宗教の生活教であることを忘れずにください。我々の神、――
『生命の樹き』の教えは『旺盛おうせいに生きよ』というのですから。……ラ
ップさん、あなたはこのかたに我々の聖書をごらんにいれましたか?」
「いえ、……実はわたし自身もほとんど読んだことはないのです。」
 ラップは頭の皿さらを掻かきながら、正直にこう返事をしました。が、長老
は相変わらず静かに微笑して話しつづけました。
「それではおわかりなりますまい。我々の神は一日のうちにこの世界を造りま
した。(『生命の樹き』は樹というものの、成しあたわないことはないのです
。)のみならず雌めすの河童かっぱを造りました。すると雌の河童は退屈のあ
まり、雄おすの河童を求めました。我々の神はこの嘆きを憐あわれみ、雌の河
童の脳髄のうずいを取り、雄の河童を造りました。我々の神はこの二匹の河童
に『食えよ、交合せよ、旺盛おうせいに生きよ』という祝福を与えました。…
…」

642 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:29:18.24 ID:CButPP3md.net
読んでくれてありがとう。また立ててね

643 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:29:28.16 ID:CButPP3md.net
 僕は長老の言葉のうちに詩人のトックを思い出しました。詩人のトックは不
幸にも僕のように無神論者です。僕は河童ではありませんから、生活教を知ら
なかったのも無理はありません。けれども河童の国に生まれたトックはもちろ
ん「生命の樹」を知っていたはずです。僕はこの教えに従わなかったトックの
最後を憐れみましたから、長老の言葉をさえぎるようにトックのことを話し出
しました。
「ああ、あの気の毒な詩人ですね。」
 長老は僕の話を聞き、深い息をもらしました。
「我々の運命を定めるものは信仰と境遇と偶然とだけです。(もっともあなた
がたはそのほかに遺伝をお数えなさるでしょう。)トックさんは不幸にも信仰
をお持ちにならなかったのです。」
「トックはあなたをうらやんでいたでしょう。いや、僕もうらやんでいます。
ラップ君などは年も若いし、……」
「僕も嘴くちばしさえちゃんとしていればあるいは楽天的だったかもしれませ
ん。」
 長老は僕らにこう言われると、もう一度深い息をもらしました。しかもその
目は涙ぐんだまま、じっと黒いヴェヌスを見つめているのです。
「わたしも実は、――これはわたしの秘密ですから、どうかだれにもおっしゃ
らずにください。――わたしも実は我々の神を信ずるわけにいかないのです。
しかしいつかわたしの祈祷きとうは、――」
 ちょうど長老のこう言った時です。突然部屋へやの戸があいたと思うと、大
きい雌の河童が一匹、いきなり長老へ飛びかかりました。僕らがこの雌の河童
を抱きとめようとしたのはもちろんです。が、雌の河童はとっさの間あいだに
床ゆかの上へ長老を投げ倒しました。
「この爺おやじめ! きょうもまたわたしの財布さいふから一杯やる金かねを
盗んでいったな!」
 十分ばかりたった後のち、僕らは実際逃げ出さないばかりに長老夫婦をあと
に残し、大寺院の玄関を下おりていきました。
「あれではあの長老も『生命の樹』を信じないはずですね。」
 しばらく黙って歩いた後、ラップは僕にこう言いました。が、僕は返事をす
るよりも思わず大寺院を振り返りました。大寺院はどんより曇った空にやはり
高い塔や円屋根まるやねを無数の触手のように伸ばしています。なにか沙漠さ
ばくの空に見える蜃気楼しんきろうの無気味さを漂わせたまま。……
一五
 それからかれこれ一週間の後、僕はふと医者のチャックに珍しい話を聞きま
した。というのはあのトックの家うちに幽霊の出るという話なのです。そのこ
ろにはもう雌めすの河童かっぱはどこかほかへ行ってしまい、僕らの友だちの
詩人の家も写真師のステュディオに変わっていました。なんでもチャックの話
によれば、このステュディオでは写真をとると、トックの姿もいつの間まにか
必ず朦朧もうろうと客の後ろに映っているとかいうことです。もっともチャッ
クは物質主義者ですから、死後の生命などを信じていません。現にその話をし
た時にも悪意のある微笑を浮かべながら、「やはり霊魂というものも物質的存
在とみえますね」などと註釈めいたことをつけ加えていました。僕も幽霊を信
じないことはチャックとあまり変わりません。けれども詩人のトックには親し

644 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:29:32.86 ID:b9VpTv0j0.net
>>639
発達障害って自己評価低いから、自分のしたこと評価されなかったりすると発狂するよね。
まじめんどくせー

645 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:29:50.92 ID:ZIr4KWKu0.net
ギアルのレイドしに行ってくるぜ。
町内放送でサイレン鳴ってただちに避難してくださいとか言ってるけど避難場所と真逆に歩いてやるよ
死んだら骨は拾ってくれ

646 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:30:02.22 ID:CButPP3md.net
見てるよ君のこと

647 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:30:35.47 ID:CButPP3md.net
みを感じていましたから、さっそく本屋の店へ駆けつけ、トックの幽霊に関す
る記事やトックの幽霊の写真の出ている新聞や雑誌を買ってきました。なるほ
どそれらの写真を見ると、どこかトックらしい河童が一匹、老若男女ろうにゃ
くなんにょの河童の後ろにぼんやりと姿を現わしていました。しかし僕を驚か
せたのはトックの幽霊の写真よりもトックの幽霊に関する記事、――ことにト
ックの幽霊に関する心霊学協会の報告です。僕はかなり逐語的にその報告を訳
しておきましたから、下しもに大略を掲げることにしましょう。ただし括弧か
っこの中にあるのは僕自身の加えた註釈なのです。――
 詩人トック君の幽霊に関する報告。(心霊学協会雑誌第八千二百七十四号所
載)
 わが心霊学協会は先般自殺したる詩人トック君の旧居にして現在は××写真
師のステュディオなる□□街第二百五十一号に臨時調査会を開催せり。列席せ
る会員は下しものごとし。(氏名を略す。)
 我ら十七名の会員は心霊協会会長ペック氏とともに九月十七日午前十時三十
分、我らのもっとも信頼するメディアム、ホップ夫人を同伴し、該がいステュ
ディオの一室に参集せり。ホップ夫人は該ステュディオにはいるや、すでに心
霊的空気を感じ、全身に痙攣けいれんを催しつつ、嘔吐おうとすること数回に
及べり。夫人の語るところによれば、こは詩人トック君の強烈なる煙草たばこ
を愛したる結果、その心霊的空気もまたニコティンを含有するためなりという

 我ら会員はホップ夫人とともに円卓をめぐりて黙坐もくざしたり。夫人は三
分二十五秒の後のち、きわめて急劇なる夢遊状態に陥り、かつ詩人トック君の
心霊の憑依ひょういするところとなれり。我ら会員は年齢順に従い、夫人に憑
依せるトック君の心霊と左のごとき問答を開始したり。
 問 君は何ゆえに幽霊に出いずるか?
 答 死後の名声を知らんがためなり。
 問 君――あるいは心霊諸君は死後もなお名声を欲するや?
 答 少なくとも予よは欲せざるあたわず。しかれども予の邂逅かいこうした
る日本の一詩人のごときは死後の名声を軽蔑けいべつしいたり。
 問 君はその詩人の姓名を知れりや?
 答 予は不幸にも忘れたり。ただ彼の好んで作れる十七字詩の一章を記憶す
るのみ。
 問 その詩は如何いかん?
 答「古池や蛙かわず飛びこむ水の音」。
 問 君はその詩を佳作なりとなすや?
 答 予よは必ずしも悪作なりとなさず。ただ「蛙かわず」を「河童かっぱ」
とせんか、さらに光彩陸離こうさいりくりたるべし。

648 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:30:58.81 ID:teGbMdQqd.net
 問 しからばその理由は如何いかん?
 答 我ら河童はいかなる芸術にも河童を求むること痛切なればなり。
 会長ペック氏はこの時にあたり、我ら十七名の会員にこは心霊学協会の臨時
調査会にして合評会がっぴょうかいにあらざるを注意したり。
 問 心霊諸君の生活は如何?
 答 諸君の生活と異なることなし。
 問 しからば君は君自身の自殺せしを後悔するや?
 答 必ずしも後悔せず。予は心霊的生活に倦うまば、さらにピストルを取り
て自活すべし。
 問 自活するは容易なりや否や?
 トック君の心霊はこの問に答うるにさらに問をもってしたり。こはトック君
を知れるものにはすこぶる自然なる応酬おうしゅうなるべし。
 答 自殺するは容易なりや否や?
 問 諸君の生命は永遠なりや?
 答 我らの生命に関しては諸説紛々ふんぷんとして信ずべからず。幸いに我
らの間にも基督教キリストきょう、仏教、モハメット教、拝火教はいかきょう
等の諸宗あることを忘るるなかれ。
 問 君自身の信ずるところは?
 答 予は常に懐疑主義者なり。
 問 しかれども君は少なくとも心霊の存在を疑わざるべし?
 答 諸君のごとく確信するあたわず。
 問 君の交友の多少は如何?
 答 予の交友は古今東西にわたり、三百人を下らざるべし。その著名なるも
のをあぐれば、クライスト、マインレンデル、ワイニンゲル……
 問 君の交友は自殺者のみなりや?
 答 必ずしもしかりとせず。自殺を弁護せるモンテェニュのごときは予が畏
友いゆうの一人いちにんなり。ただ予は自殺せざりし厭世えんせい主義者、―
―ショオペンハウエルの輩はいとは交際せず。
 問 ショオペンハウエルは健在なりや?
 答 彼は目下もっか心霊的厭世主義を樹立し、自活する可否を論じつつあり
。しかれどもコレラも黴菌病ばいきんびょうなりしを知り、すこぶる安堵あん
どせるもののごとし。
 我ら会員は相次いでナポレオン、孔子こうし、ドストエフスキイ、ダアウィ
ン、クレオパトラ、釈迦しゃか、デモステネス、ダンテ、千せんの利休りきゅ
う等の心霊の消息を質問したり。しかれどもトック君は不幸にも詳細に答うる
ことをなさず、かえってトック君自身に関する種々のゴシップを質問したり。

649 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:31:18.73 ID:teGbMdQqd.net
 問 予よの死後の名声は如何いかん?
 答 ある批評家は「群小詩人のひとり」と言えり。
 問 彼は予が詩集を贈らざりしに怨恨えんこんを含めるひとりなるべし。予
の全集は出版せられしや?
 答 君の全集は出版せられたれども、売行きはなはだ振わざるがごとし。
 問 予の全集は三百年の後のち、――すなわち著作権の失われたる後、万人
ばんにんの購あがなうところとなるべし。予の同棲どうせいせる女友だちは如
何?
 答 彼女は書肆しょしラック君の夫人となれり。
 問 彼女はいまだ不幸にもラックの義眼なるを知らざるなるべし。予が子は
如何?
 答 国立孤児院にありと聞けり。
 トック君はしばらく沈黙せる後、新たに質問を開始したり。
 問 予が家は如何?
 答 某写真師のステュディオとなれり。
 問 予の机はいかになれるか?
 答 いかなれるかを知るものなし。
 問 予は予の机の抽斗ひきだしに予の秘蔵せる一束ひとたばの手紙を――し
かれどもこは幸いにも多忙なる諸君の関するところにあらず。今やわが心霊界
はおもむろに薄暮に沈まんとす。予は諸君と訣別けつべつすべし。さらば。諸
君。さらば。わが善良なる諸君。
 ホップ夫人は最後の言葉とともにふたたび急劇に覚醒かくせいしたり。我ら
十七名の会員はこの問答の真なりしことを上天の神に誓って保証せんとす。(
なおまた我らの信頼するホップ夫人に対する報酬ほうしゅうはかつて夫人が女
優たりし時の日当にっとうに従いて支弁したり。)
一六
 僕はこういう記事を読んだ後のち、だんだんこの国にいることも憂鬱ゆうう
つになってきましたから、どうか我々人間の国へ帰ることにしたいと思いまし
た。しかしいくら探さがして歩いても、僕の落ちた穴は見つかりません。その
うちにあのバッグという漁夫りょうしの河童の話には、なんでもこの国の街ま
ちはずれにある年をとった河童が一匹、本を読んだり、笛ふえを吹いたり、静
かに暮らしているということです。僕はこの河童に尋ねてみれば、あるいはこ
の国を逃げ出す途みちもわかりはしないかと思いましたから、さっそく街はず
れへ出かけてゆきました。しかしそこへ行ってみると、いかにも小さい家の中
に年をとった河童どころか、頭の皿も固まらない、やっと十二三の河童が一匹

650 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:31:27.11 ID:x1wM/MN8p.net
18時までにはこのスレ埋めろよ!
頑張れ!

651 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:31:44.07 ID:teGbMdQqd.net
iPhoneSE

652 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:31:54.49 ID:teGbMdQqd.net
、悠々ゆうゆうと笛を吹いていました。僕はもちろん間違まちがった家へはい
ったではないかと思いました。が、念のために名をきいてみると、やはりバッ
グの教えてくれた年よりの河童に違いないのです。
「しかしあなたは子どものようですが……」
「お前さんはまだ知らないのかい? わたしはどういう運命か、母親の腹を出
た時には白髪頭しらがあたまをしていたのだよ。それからだんだん年が若くな
り、今ではこんな子どもになったのだよ。けれども年を勘定すれば生まれる前
を六十としても、かれこれ百十五六にはなるかもしれない。」
 僕は部屋へやの中を見まわしました。そこには僕の気のせいか、質素な椅子
いすやテエブルの間に何か清らかな幸福が漂っているように見えるのです。
「あなたはどうもほかの河童よりもしあわせに暮らしているようですね?」
「さあ、それはそうかもしれない。わたしは若い時は年よりだったし、年をと
った時は若いものになっている。従って年よりのように欲にも渇かわかず、若
いもののように色にもおぼれない。とにかくわたしの生涯はたといしあわせで
はないにもしろ、安らかだったのには違いあるまい。」
「なるほどそれでは安らかでしょう。」
「いや、まだそれだけでは安らかにはならない。わたしは体からだも丈夫じょ
うぶだったし、一生食うに困らぬくらいの財産を持っていたのだよ。しかし一
番しあわせだったのはやはり生まれてきた時に年よりだったことだと思ってい
る。」
 僕はしばらくこの河童かっぱと自殺したトックの話だの毎日医者に見てもら
っているゲエルの話だのをしていました。が、なぜか年をとった河童はあまり
僕の話などに興味のないような顔をしていました。
「ではあなたはほかの河童のように格別生きていることに執着しゅうじゃくを
持ってはいないのですね?」
 年をとった河童は僕の顔を見ながら、静かにこう返事をしました。
「わたしもほかの河童のようにこの国へ生まれてくるかどうか、一応父親に尋
ねられてから母親の胎内を離れたのだよ。」
「しかし僕はふとした拍子に、この国へ転ころげ落ちてしまったのです。どう
か僕にこの国から出ていかれる路みちを教えてください。」
「出ていかれる路は一つしかない。」
「というのは?」
「それはお前さんのここへ来た路だ。」
 僕はこの答えを聞いた時になぜか身の毛がよだちました。

653 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:32:31.52 ID:cTDqYSnzd.net
「その路があいにく見つからないのです。」
 年をとった河童は水々しい目にじっと僕の顔を見つめました。それからやっ
と体からだを起こし、部屋へやの隅すみへ歩み寄ると、天井からそこに下がっ
ていた一本の綱つなを引きました。すると今まで気のつかなかった天窓が一つ
開きました。そのまた円まるい天窓の外には松や檜ひのきが枝を張った向こう
に大空が青あおと晴れ渡っています。いや、大きい鏃やじりに似た槍やりヶ岳
たけの峯もそびえています。僕は飛行機を見た子どものように実際飛び上がっ
て喜びました。
「さあ、あすこから出ていくがいい。」
 年をとった河童はこう言いながら、さっきの綱を指さしました。今まで僕の
綱と思っていたのは実は綱梯子つなばしごにできていたのです。
「ではあすこから出さしてもらいます。」
「ただわたしは前もって言うがね。出ていって後悔しないように。」
「大丈夫だいじょうぶです。僕は後悔などはしません。」
 僕はこう返事をするが早いか、もう綱梯子をよじ登っていました。年をとっ
た河童の頭の皿をはるか下にながめながら。
一七
 僕は河童かっぱの国から帰ってきた後のち、しばらくは我々人間の皮膚の匂
においに閉口しました。我々人間に比べれば、河童は実に清潔なものです。の
みならず我々人間の頭は河童ばかり見ていた僕にはいかにも気味の悪いものに
見えました。これはあるいはあなたにはおわかりにならないかもしれません。
しかし目や口はともかくも、この鼻というものは妙に恐ろしい気を起こさせる
ものです。僕はもちろんできるだけ、だれにも会わない算段をしました。が、
我々人間にもいつか次第に慣れ出したとみえ、半年ばかりたつうちにどこへで
も出るようになりました。ただそれでも困ったことは何か話をしているうちに
うっかり河童の国の言葉を口に出してしまうことです。
「君はあしたは家うちにいるかね?」
「Qua」
「なんだって?」
「いや、いるということだよ。」
 だいたいこういう調子だったものです。
 しかし河童の国から帰ってきた後、ちょうど一年ほどたった時、僕はある事

654 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:32:50.46 ID:cTDqYSnzd.net
業の失敗したために……(S博士はかせは彼がこう言った時、「その話はおよ
しなさい」と注意をした。なんでも博士の話によれば、彼はこの話をするたび
に看護人の手にもおえないくらい、乱暴になるとかいうことである。)
 ではその話はやめましょう。しかしある事業の失敗したために僕はまた河童
の国へ帰りたいと思い出しました。そうです。「行ゆきたい」のではありませ
ん。「帰りたい」と思い出したのです。河童の国は当時の僕には故郷のように
感ぜられましたから。
 僕はそっと家うちを脱け出し、中央線の汽車へ乗ろうとしました。そこをあ
いにく巡査につかまり、とうとう病院へ入れられたのです。僕はこの病院へは
いった当座も河童の国のことを想おもいつづけました。医者のチャックはどう
しているでしょう? 哲学者のマッグも相変わらず七色なないろの色硝子いろ
ガラスのランタアンの下に何か考えているかもしれません。ことに僕の親友だ
った嘴くちばしの腐った学生のラップは、――あるきょうのように曇った午後
です。こんな追憶にふけっていた僕は思わず声をあげようとしました。それは
いつの間まにはいってきたか、バッグという漁夫りょうしの河童が一匹、僕の
前にたたずみながら、何度も頭を下げていたからです。僕は心をとり直した後
のち、――泣いたか笑ったかも覚えていません。が、とにかく久しぶりに河童
の国の言葉を使うことに感動していたことはたしかです。
「おい、バッグ、どうして来た?」
「へい、お見舞いに上がったのです。なんでも御病気だとかいうことですから
。」
「どうしてそんなことを知っている?」
「ラディオのニウスで知ったのです。」
 バッグは得意そうに笑っているのです。
「それにしてもよく来られたね?」
「なに、造作ぞうさはありません。東京の川や掘割りは河童には往来も同様で
すから。」
 僕は河童かっぱも蛙かえるのように水陸両棲りょうせいの動物だったことに
今さらのように気がつきました。
「しかしこの辺には川はないがね。」
「いえ、こちらへ上がったのは水道の鉄管を抜けてきたのです。それからちょ
っと消火栓しょうかせんをあけて……」
「消火栓をあけて?」
「旦那だんなはお忘れなすったのですか? 河童にも機械屋のいるということ
を。」
 それから僕は二三日ごとにいろいろの河童の訪問を受けました。僕の病はS
博士はかせによれば早発性痴呆症そうはつせいちほうしょうということです。
しかしあの医者のチャックは(これははなはだあなたにも失礼に当たるのに違

655 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:33:25.23 ID:zUTwsq4gd.net
いありません。)僕は早発性痴呆症患者ではない、早発性痴呆症患者はS博士
をはじめ、あなたがた自身だと言っていました。医者のチャックも来るくらい
ですから、学生のラップや哲学者のマッグの見舞いにきたことはもちろんです
。が、あの漁夫りょうしのバッグのほかに昼間はだれも尋ねてきません。こと
に二三匹いっしょに来るのは夜、――それも月のある夜です。僕はゆうべも月
明りの中に硝子ガラス会社の社長のゲエルや哲学者のマッグと話をしました。
のみならず音楽家のクラバックにもヴァイオリンを一曲弾ひいてもらいました
。そら、向こうの机の上に黒百合くろゆりの花束がのっているでしょう? あ
れもゆうべクラバックが土産みやげに持ってきてくれたものです。……
 (僕は後ろを振り返ってみた。が、もちろん机の上には花束も何ものってい
なかった。)
 それからこの本も哲学者のマッグがわざわざ持ってきてくれたものです。ち
ょっと最初の詩を読んでごらんなさい。いや、あなたは河童の国の言葉を御存
知になるはずはありません。では代わりに読んでみましょう。これは近ごろ出
版になったトックの全集の一冊です。――
 (彼は古い電話帳をひろげ、こういう詩をおお声に読みはじめた。)
――椰子やしの花や竹の中に
  仏陀ぶっだはとうに眠っている。
  路みちばたに枯れた無花果いちじゅくといっしょに
  基督キリストももう死んだらしい。
  しかし我々は休まなければならぬ
  たとい芝居しばいの背景の前にも。
  (そのまた背景の裏を見れば、継ぎはぎだらけのカンヴァスばかりだ?)
――
 けれども僕はこの詩人のように厭世的えんせいてきではありません。河童た
ちの時々来てくれる限りは、――ああ、このことは忘れていました。あなたは
僕の友だちだった裁判官のペップを覚えているでしょう。あの河童は職を失っ
た後のち、ほんとうに発狂してしまいました。なんでも今は河童の国の精神病
院にいるということです。僕はS博士はかせさえ承知してくれれば、見舞いに
いってやりたいのですがね……。

656 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:34:48.63 ID:G1dwvOvia.net
>>654
お前さっきからうるさいぞ!

657 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:35:13.71 ID:ntAlncCy0.net
>>656
触るべからず

658 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:35:13.96 ID:zUTwsq4gd.net
僕は硝子ガラス会社の社長のゲエルに不思議にも好意を持っていました。ゲエ
ルは資本家中の資本家です。おそらくはこの国の河童かっぱの中でも、ゲエル
ほど大きい腹をした河童は一匹もいなかったのに違いありません。しかし茘枝
れいしに似た細君や胡瓜きゅうりに似た子どもを左右にしながら、安楽椅子い
すにすわっているところはほとんど幸福そのものです。僕は時々裁判官のペッ
プや医者のチャックにつれられてゲエル家けの晩餐ばんさんへ出かけました。
またゲエルの紹介状を持ってゲエルやゲエルの友人たちが多少の関係を持って
いるいろいろの工場も見て歩きました。そのいろいろの工場の中でもことに僕
におもしろかったのは書籍製造会社の工場です。僕は年の若い河童の技師とこ
の工場の中へはいり、水力電気を動力にした、大きい機械をながめた時、今さ
らのように河童の国の機械工業の進歩に驚嘆しました。なんでもそこでは一年
間に七百万部の本を製造するそうです。が、僕を驚かしたのは本の部数ではあ
りません。それだけの本を製造するのに少しも手数のかからないことです。な
にしろこの国では本を造るのにただ機械の漏斗形じょうごがたの口へ紙とイン
クと灰色をした粉末とを入れるだけなのですから。それらの原料は機械の中へ
はいると、ほとんど五分とたたないうちに菊版きくばん、四六版しろくばん、
菊半裁版きくはんさいばんなどの無数の本になって出てくるのです。僕は瀑た
きのように流れ落ちるいろいろの本をながめながら、反そり身になった河童の
技師にその灰色の粉末はなんと言うものかと尋ねてみました。すると技師は黒
光りに光った機械の前にたたずんだまま、つまらなそうにこう返事をしました

「これですか? これは驢馬ろばの脳髄ですよ。ええ、一度乾燥させてから、
ざっと粉末にしただけのものです。時価は一噸とん二三銭ですがね。」
 もちろんこういう工業上の奇蹟は書籍製造会社にばかり起こっているわけで
はありません。絵画製造会社にも、音楽製造会社にも、同じように起こってい
るのです。実際またゲエルの話によれば、この国では平均一か月に七八百種の
機械が新案され、なんでもずんずん人手を待たずに大量生産が行なわれるそう
です。従ってまた職工の解雇かいこされるのも四五万匹を下らないそうです。
そのくせまだこの国では毎朝新聞を読んでいても、一度も罷業ひぎょうという
字に出会いません。僕はこれを妙に思いましたから、ある時またペップやチャ
ックとゲエル家の晩餐に招かれた機会にこのことをなぜかと尋ねてみました。
「それはみんな食ってしまうのですよ。」
 食後の葉巻をくわえたゲエルはいかにも無造作むぞうさにこう言いました。
しかし「食ってしまう」というのはなんのことだかわかりません。すると鼻目
金はなめがねをかけたチャックは僕の不審を察したとみえ、横あいから説明を
加えてくれました。

659 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:35:58.76 ID:zUTwsq4gd.net
あなたしかいないよwムキュキュwムキュウw

660 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:36:28.90 ID:zUTwsq4gd.net
「その職工をみんな殺してしまって、肉を食料に使うのです。ここにある新聞
をごらんなさい。今月はちょうど六万四千七百六十九匹の職工が解雇かいこさ
れましたから、それだけ肉の値段も下がったわけですよ。」
「職工は黙って殺されるのですか?」
「それは騒いでもしかたはありません。職工屠殺法しょっこうとさつほうがあ
るのですから。」
 これは山桃やまももの鉢植はちうえを後ろに苦い顔をしていたペップの言葉
です。僕はもちろん不快を感じました。しかし主人公のゲエルはもちろん、ペ
ップやチャックもそんなことは当然と思っているらしいのです。現にチャック
は笑いながら、あざけるように僕に話しかけました。
「つまり餓死がししたり自殺したりする手数を国家的に省略してやるのですね
。ちょっと有毒瓦斯ガスをかがせるだけですから、たいした苦痛はありません
よ。」
「けれどもその肉を食うというのは、……」
「常談じょうだんを言ってはいけません。あのマッグに聞かせたら、さぞ大笑
いに笑うでしょう。あなたの国でも第四階級の娘たちは売笑婦になっているで
はありませんか? 職工の肉を食うことなどに憤慨したりするのは感傷主義で
すよ。」
 こういう問答を聞いていたゲエルは手近いテエブルの上にあったサンドウィ
ッチの皿を勧めながら、恬然てんぜんと僕にこう言いました。
「どうです? 一つとりませんか? これも職工の肉ですがね。」
 僕はもちろん辟易へきえきしました。いや、そればかりではありません。ペ
ップやチャックの笑い声を後ろにゲエル家けの客間を飛び出しました。それは
ちょうど家々の空に星明かりも見えない荒れ模様の夜です。僕はその闇やみの
中を僕の住居すまいへ帰りながら、のべつ幕なしに嘔吐へどを吐きました。夜
目にも白しらじらと流れる嘔吐を。

 しかし硝子ガラス会社の社長のゲエルは人なつこい河童かっぱだったのに違
いません。僕はたびたびゲエルといっしょにゲエルの属している倶楽部クラブ
へ行き、愉快に一晩を暮らしました。これは一つにはその倶楽部はトックの属
している超人倶楽部よりもはるかに居心いごころのよかったためです。のみな
らずまたゲエルの話は哲学者のマッグの話のように深みを持っていなかったに
せよ、僕には全然新しい世界を、――広い世界をのぞかせました。ゲエルは、
いつも純金の匙さじに珈琲カッフェの茶碗ちゃわんをかきまわしながら、快活
にいろいろの話をしたものです。

661 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:36:58.02 ID:zUTwsq4gd.net
 なんでもある霧の深い晩、僕は冬薔薇ふゆそうびを盛った花瓶かびんを中に
ゲエルの話を聞いていました。それはたしか部屋へや全体はもちろん、椅子い
すやテエブルも白い上に細い金の縁ふちをとったセセッション風の部屋だった
ように覚えています。ゲエルはふだんよりも得意そうに顔中に微笑をみなぎら
せたまま、ちょうどそのころ天下を取っていた Quorax 党内閣のこと
などを話しました。クオラックスという言葉はただ意味のない間投詞かんとう
しですから、「おや」とでも訳すほかはありません。が、とにかく何よりも先
に「河童全体の利益」ということを標榜ひょうぼうしていた政党だったのです

「クオラックス党を支配しているものは名高い政治家のロッペです。『正直は
最良の外交である』とはビスマルクの言った言葉でしょう。しかしロッペは正
直を内治ないちの上にも及ぼしているのです。……」
「けれどもロッペの演説は……」
「まあ、わたしの言うことをお聞きなさい。あの演説はもちろんことごとく※
(「言+墟のつくり」、第4水準2-88-74)うそです。が、※(「言+
墟のつくり」、第4水準2-88-74)ということはだれでも知っています
から、畢竟ひっきょう正直と変わらないでしょう、それを一概に※(「言+墟
のつくり」、第4水準2-88-74)と言うのはあなたがただけの偏見です
よ。我々河童かっぱはあなたがたのように、……しかしそれはどうでもよろし
い。わたしの話したいのはロッペのことです。ロッペはクオラックス党を支配
している、そのまたロッペを支配しているものは Pou-Fou 新聞の(
この『プウ・フウ』という言葉もやはり意味のない間投詞かんとうしです。も
し強しいて訳すれば、『ああ』とでも言うほかはありません。)社長のクイク
イです。が、クイクイも彼自身の主人というわけにはゆきません。クイクイを
支配しているものはあなたの前にいるゲエルです。」
「けれども――これは失礼かもしれませんけれども、プウ・フウ新聞は労働者
の味かたをする新聞でしょう。その社長のクイクイもあなたの支配を受けてい
るというのは、……」
「プウ・フウ新聞の記者たちはもちろん労働者の味かたです。しかし記者たち
を支配するものはクイクイのほかはありますまい。しかもクイクイはこのゲエ
ルの後援を受けずにはいられないのです。」
 ゲエルは相変わらず微笑しながら、純金の匙さじをおもちゃにしています。
僕はこういうゲエルを見ると、ゲエル自身を憎むよりも、プウ・フウ新聞の記
者たちに同情の起こるのを感じました。するとゲエルは僕の無言にたちまちこ

662 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:37:23.19 ID:2nB9lxXk0.net
今進化させたら大地のちから覚え…るわけないよなw

663 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:37:46.36 ID:aGeMcC5jd.net
の同情を感じたとみえ、大きい腹をふくらませてこう言うのです。
「なに、プウ・フウ新聞の記者たちも全部労働者の味かたではありませんよ。
少なくとも我々河童というものはだれの味かたをするよりも先に我々自身の味
かたをしますからね。……しかしさらに厄介やっかいなことにはこのゲエル自
身さえやはり他人の支配を受けているのです。あなたはそれをだれだと思いま
すか? それはわたしの妻ですよ。美しいゲエル夫人ですよ。」
 ゲエルはおお声に笑いました。
「それはむしろしあわせでしょう。」
「とにかくわたしは満足しています。しかしこれもあなたの前だけに、――河
童でないあなたの前だけに手放しで吹聴ふいちょうできるのです。」
「するとつまりクオラックス内閣はゲエル夫人が支配しているのですね。」
「さあそうも言われますかね。……しかし七年前まえの戦争などはたしかにあ
る雌めすの河童のために始まったものに違いありません。」
「戦争? この国にも戦争はあったのですか?」
「ありましたとも。将来もいつあるかわかりません。なにしろ隣国のある限り
は、……」
 僕は実際この時はじめて河童の国も国家的に孤立していないことを知りまし
た。ゲエルの説明するところによれば、河童かっぱはいつも獺かわうそを仮設
敵にしているということです。しかも獺は河童に負けない軍備を具そなえてい
るということです。僕はこの獺を相手に河童の戦争した話に少なからず興味を
感じました。(なにしろ河童の強敵に獺のいるなどということは「水虎考略す
いここうりゃく」の著者はもちろん、「山島民譚集さんとうみんたんしゅう」
の著者柳田国男やなぎだくにおさんさえ知らずにいたらしい新事実ですから。

「あの戦争の起こる前にはもちろん両国とも油断せずにじっと相手をうかがっ
ていました。というのはどちらも同じように相手を恐怖していたからです。そ
こへこの国にいた獺が一匹、ある河童の夫婦を訪問しました。そのまた雌めす
の河童というのは亭主を殺すつもりでいたのです。なにしろ亭主は道楽者でし
たからね。おまけに生命保険のついていたことも多少の誘惑になったかもしれ
ません。」
「あなたはその夫婦を御存じですか?」
「ええ、――いや、雄おすの河童だけは知っています。わたしの妻などはこの
河童を悪人のように言っていますがね。しかしわたしに言わせれば、悪人より
もむしろ雌の河童につかまることを恐れている被害妄想ひがいもうぞうの多い
狂人です。……そこでこの雌の河童は亭主のココアの茶碗ちゃわんの中へ青化
加里せいかかりを入れておいたのです。それをまたどう間違まちがえたか、客
の獺に飲ませてしまったのです。獺はもちろん死んでしまいました。それから
……」

664 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:38:15.34 ID:aGeMcC5jd.net
白々しい自演^^

665 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:38:20.75 ID:y3DaXgeW0.net
覚えるよ(動揺)

666 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:38:26.25 ID:aGeMcC5jd.net
「それから戦争になったのですか?」
「ええ、あいにくその獺は勲章を持っていたものですからね。」
「戦争はどちらの勝ちになったのですか?」
「もちろんこの国の勝ちになったのです。三十六万九千五百匹の河童たちはそ
のために健気けなげにも戦死しました。しかし敵国に比べれば、そのくらいの
損害はなんともありません。この国にある毛皮という毛皮はたいてい獺の毛皮
です。わたしもあの戦争の時には硝子ガラスを製造するほかにも石炭殻がらを
戦地へ送りました。」
「石炭殻を何にするのですか?」
「もちろん食糧にするのです。我々は、河童は腹さえ減れば、なんでも食うの
にきまっていますからね。」
「それは――どうか怒おこらずにください。それは戦地にいる河童たちには…
…我々の国では醜聞しゅうぶんですがね。」
「この国でも醜聞には違いありません。しかしわたし自身こう言っていれば、
だれも醜聞にはしないものです。哲学者のマッグも言っているでしょう。『汝
なんじの悪は汝自ら言え。悪はおのずから消滅すべし。』……しかもわたしは
利益のほかにも愛国心に燃え立っていたのですからね。」
 ちょうどそこへはいってきたのはこの倶楽部クラブの給仕です。給仕はゲエ
ルにお時宜じぎをした後のち、朗読でもするようにこう言いました。
「お宅のお隣に火事がございます。」
「火――火事!」
 ゲエルは驚いて立ち上がりました。僕も立ち上がったのはもちろんです。が
、給仕は落ち着き払って次の言葉をつけ加えました。
「しかしもう消し止めました。」
 ゲエルは給仕を見送りながら、泣き笑いに近い表情をしました。僕はこうい
う顔を見ると、いつかこの硝子ガラス会社の社長を憎んでいたことに気づきま
した。が、ゲエルはもう今では大資本家でもなんでもないただの河童かっぱに
なって立っているのです。僕は花瓶かびんの中の冬薔薇ふゆそうびの花を抜き
、ゲエルの手へ渡しました。
「しかし火事は消えたといっても、奥さんはさぞお驚きでしょう。さあ、これ
を持ってお帰りなさい。」
「ありがとう。」
 ゲエルは僕の手を握りました。それから急ににやりと笑い、小声にこう僕に
話しかけました。
「隣はわたしの家作かさくですからね。火災保険の金だけはとれるのですよ。

 僕はこの時のゲエルの微笑を――軽蔑けいべつすることもできなければ、憎
悪ぞうおすることもできないゲエルの微笑をいまだにありありと覚えています


667 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:38:32.93 ID:b9VpTv0j0.net
早く終わっちまえ

668 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:39:00.39 ID:JzcvOp4Ed.net
、悠々ゆうゆうと笛を吹いていました。僕はもちろん間違まちがった家へはい
ったではないかと思いました。が、念のために名をきいてみると、やはりバッ
グの教えてくれた年よりの河童に違いないのです。
「しかしあなたは子どものようですが……」
「お前さんはまだ知らないのかい? わたしはどういう運命か、母親の腹を出
た時には白髪頭しらがあたまをしていたのだよ。それからだんだん年が若くな
り、今ではこんな子どもになったのだよ。けれども年を勘定すれば生まれる前
を六十としても、かれこれ百十五六にはなるかもしれない。」
 僕は部屋へやの中を見まわしました。そこには僕の気のせいか、質素な椅子
いすやテエブルの間に何か清らかな幸福が漂っているように見えるのです。
「あなたはどうもほかの河童よりもしあわせに暮らしているようですね?」
「さあ、それはそうかもしれない。わたしは若い時は年よりだったし、年をと
った時は若いものになっている。従って年よりのように欲にも渇かわかず、若
いもののように色にもおぼれない。とにかくわたしの生涯はたといしあわせで
はないにもしろ、安らかだったのには違いあるまい。」
「なるほどそれでは安らかでしょう。」
「いや、まだそれだけでは安らかにはならない。わたしは体からだも丈夫じょ
うぶだったし、一生食うに困らぬくらいの財産を持っていたのだよ。しかし一
番しあわせだったのはやはり生まれてきた時に年よりだったことだと思ってい
る。」
 僕はしばらくこの河童かっぱと自殺したトックの話だの毎日医者に見てもら
っているゲエルの話だのをしていました。が、なぜか年をとった河童はあまり
僕の話などに興味のないような顔をしていました。
「ではあなたはほかの河童のように格別生きていることに執着しゅうじゃくを
持ってはいないのですね?」
 年をとった河童は僕の顔を見ながら、静かにこう返事をしました。
「わたしもほかの河童のようにこの国へ生まれてくるかどうか、一応父親に尋
ねられてから母親の胎内を離れたのだよ。」
「しかし僕はふとした拍子に、この国へ転ころげ落ちてしまったのです。どう
か僕にこの国から出ていかれる路みちを教えてください。」
「出ていかれる路は一つしかない。」
「というのは?」
「それはお前さんのここへ来た路だ。」
 僕はこの答えを聞いた時になぜか身の毛がよだちました。

669 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:39:15.35 ID:JzcvOp4Ed.net
「その路があいにく見つからないのです。」
 年をとった河童は水々しい目にじっと僕の顔を見つめました。それからやっ
と体からだを起こし、部屋へやの隅すみへ歩み寄ると、天井からそこに下がっ
ていた一本の綱つなを引きました。すると今まで気のつかなかった天窓が一つ
開きました。そのまた円まるい天窓の外には松や檜ひのきが枝を張った向こう
に大空が青あおと晴れ渡っています。いや、大きい鏃やじりに似た槍やりヶ岳
たけの峯もそびえています。僕は飛行機を見た子どものように実際飛び上がっ
て喜びました。
「さあ、あすこから出ていくがいい。」
 年をとった河童はこう言いながら、さっきの綱を指さしました。今まで僕の
綱と思っていたのは実は綱梯子つなばしごにできていたのです。
「ではあすこから出さしてもらいます。」
「ただわたしは前もって言うがね。出ていって後悔しないように。」
「大丈夫だいじょうぶです。僕は後悔などはしません。」
 僕はこう返事をするが早いか、もう綱梯子をよじ登っていました。年をとっ
た河童の頭の皿をはるか下にながめながら。
一七
 僕は河童かっぱの国から帰ってきた後のち、しばらくは我々人間の皮膚の匂
においに閉口しました。我々人間に比べれば、河童は実に清潔なものです。の
みならず我々人間の頭は河童ばかり見ていた僕にはいかにも気味の悪いものに
見えました。これはあるいはあなたにはおわかりにならないかもしれません。
しかし目や口はともかくも、この鼻というものは妙に恐ろしい気を起こさせる
ものです。僕はもちろんできるだけ、だれにも会わない算段をしました。が、
我々人間にもいつか次第に慣れ出したとみえ、半年ばかりたつうちにどこへで
も出るようになりました。ただそれでも困ったことは何か話をしているうちに
うっかり河童の国の言葉を口に出してしまうことです。
「君はあしたは家うちにいるかね?」
「Qua」
「なんだって?」
「いや、いるということだよ。」
 だいたいこういう調子だったものです。
 しかし河童の国から帰ってきた後、ちょうど一年ほどたった時、僕はある事

670 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:39:44.50 ID:JzcvOp4Ed.net
次スレ早くたてて^^

671 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:39:57.84 ID:JzcvOp4Ed.net
業の失敗したために……(S博士はかせは彼がこう言った時、「その話はおよ
しなさい」と注意をした。なんでも博士の話によれば、彼はこの話をするたび
に看護人の手にもおえないくらい、乱暴になるとかいうことである。)
 ではその話はやめましょう。しかしある事業の失敗したために僕はまた河童
の国へ帰りたいと思い出しました。そうです。「行ゆきたい」のではありませ
ん。「帰りたい」と思い出したのです。河童の国は当時の僕には故郷のように
感ぜられましたから。
 僕はそっと家うちを脱け出し、中央線の汽車へ乗ろうとしました。そこをあ
いにく巡査につかまり、とうとう病院へ入れられたのです。僕はこの病院へは
いった当座も河童の国のことを想おもいつづけました。医者のチャックはどう
しているでしょう? 哲学者のマッグも相変わらず七色なないろの色硝子いろ
ガラスのランタアンの下に何か考えているかもしれません。ことに僕の親友だ
った嘴くちばしの腐った学生のラップは、――あるきょうのように曇った午後
です。こんな追憶にふけっていた僕は思わず声をあげようとしました。それは
いつの間まにはいってきたか、バッグという漁夫りょうしの河童が一匹、僕の
前にたたずみながら、何度も頭を下げていたからです。僕は心をとり直した後
のち、――泣いたか笑ったかも覚えていません。が、とにかく久しぶりに河童
の国の言葉を使うことに感動していたことはたしかです。
「おい、バッグ、どうして来た?」
「へい、お見舞いに上がったのです。なんでも御病気だとかいうことですから
。」
「どうしてそんなことを知っている?」
「ラディオのニウスで知ったのです。」
 バッグは得意そうに笑っているのです。
「それにしてもよく来られたね?」
「なに、造作ぞうさはありません。東京の川や掘割りは河童には往来も同様で
すから。」
 僕は河童かっぱも蛙かえるのように水陸両棲りょうせいの動物だったことに
今さらのように気がつきました。
「しかしこの辺には川はないがね。」
「いえ、こちらへ上がったのは水道の鉄管を抜けてきたのです。それからちょ
っと消火栓しょうかせんをあけて……」
「消火栓をあけて?」
「旦那だんなはお忘れなすったのですか? 河童にも機械屋のいるということ
を。」
 それから僕は二三日ごとにいろいろの河童の訪問を受けました。僕の病はS
博士はかせによれば早発性痴呆症そうはつせいちほうしょうということです。
しかしあの医者のチャックは(これははなはだあなたにも失礼に当たるのに違

672 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:40:12.67 ID:SASTOEg90.net
緊急エリアメールびびった

673 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:40:34.86 ID:slzdzh9Md.net
ふむ。2つスレをみたが
俺はこっちに賛成する。

674 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:40:46.23 ID:slzdzh9Md.net
みを感じていましたから、さっそく本屋の店へ駆けつけ、トックの幽霊に関す
る記事やトックの幽霊の写真の出ている新聞や雑誌を買ってきました。なるほ
どそれらの写真を見ると、どこかトックらしい河童が一匹、老若男女ろうにゃ
くなんにょの河童の後ろにぼんやりと姿を現わしていました。しかし僕を驚か
せたのはトックの幽霊の写真よりもトックの幽霊に関する記事、――ことにト
ックの幽霊に関する心霊学協会の報告です。僕はかなり逐語的にその報告を訳
しておきましたから、下しもに大略を掲げることにしましょう。ただし括弧か
っこの中にあるのは僕自身の加えた註釈なのです。――
 詩人トック君の幽霊に関する報告。(心霊学協会雑誌第八千二百七十四号所
載)
 わが心霊学協会は先般自殺したる詩人トック君の旧居にして現在は××写真
師のステュディオなる□□街第二百五十一号に臨時調査会を開催せり。列席せ
る会員は下しものごとし。(氏名を略す。)
 我ら十七名の会員は心霊協会会長ペック氏とともに九月十七日午前十時三十
分、我らのもっとも信頼するメディアム、ホップ夫人を同伴し、該がいステュ
ディオの一室に参集せり。ホップ夫人は該ステュディオにはいるや、すでに心
霊的空気を感じ、全身に痙攣けいれんを催しつつ、嘔吐おうとすること数回に
及べり。夫人の語るところによれば、こは詩人トック君の強烈なる煙草たばこ
を愛したる結果、その心霊的空気もまたニコティンを含有するためなりという

 我ら会員はホップ夫人とともに円卓をめぐりて黙坐もくざしたり。夫人は三
分二十五秒の後のち、きわめて急劇なる夢遊状態に陥り、かつ詩人トック君の
心霊の憑依ひょういするところとなれり。我ら会員は年齢順に従い、夫人に憑
依せるトック君の心霊と左のごとき問答を開始したり。
 問 君は何ゆえに幽霊に出いずるか?
 答 死後の名声を知らんがためなり。
 問 君――あるいは心霊諸君は死後もなお名声を欲するや?
 答 少なくとも予よは欲せざるあたわず。しかれども予の邂逅かいこうした
る日本の一詩人のごときは死後の名声を軽蔑けいべつしいたり。
 問 君はその詩人の姓名を知れりや?
 答 予は不幸にも忘れたり。ただ彼の好んで作れる十七字詩の一章を記憶す
るのみ。
 問 その詩は如何いかん?
 答「古池や蛙かわず飛びこむ水の音」。
 問 君はその詩を佳作なりとなすや?
 答 予よは必ずしも悪作なりとなさず。ただ「蛙かわず」を「河童かっぱ」
とせんか、さらに光彩陸離こうさいりくりたるべし。

675 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:41:09.31 ID:slzdzh9Md.net
 僕は長老の言葉のうちに詩人のトックを思い出しました。詩人のトックは不
幸にも僕のように無神論者です。僕は河童ではありませんから、生活教を知ら
なかったのも無理はありません。けれども河童の国に生まれたトックはもちろ
ん「生命の樹」を知っていたはずです。僕はこの教えに従わなかったトックの
最後を憐れみましたから、長老の言葉をさえぎるようにトックのことを話し出
しました。
「ああ、あの気の毒な詩人ですね。」
 長老は僕の話を聞き、深い息をもらしました。
「我々の運命を定めるものは信仰と境遇と偶然とだけです。(もっともあなた
がたはそのほかに遺伝をお数えなさるでしょう。)トックさんは不幸にも信仰
をお持ちにならなかったのです。」
「トックはあなたをうらやんでいたでしょう。いや、僕もうらやんでいます。
ラップ君などは年も若いし、……」
「僕も嘴くちばしさえちゃんとしていればあるいは楽天的だったかもしれませ
ん。」
 長老は僕らにこう言われると、もう一度深い息をもらしました。しかもその
目は涙ぐんだまま、じっと黒いヴェヌスを見つめているのです。
「わたしも実は、――これはわたしの秘密ですから、どうかだれにもおっしゃ
らずにください。――わたしも実は我々の神を信ずるわけにいかないのです。
しかしいつかわたしの祈祷きとうは、――」
 ちょうど長老のこう言った時です。突然部屋へやの戸があいたと思うと、大
きい雌の河童が一匹、いきなり長老へ飛びかかりました。僕らがこの雌の河童
を抱きとめようとしたのはもちろんです。が、雌の河童はとっさの間あいだに
床ゆかの上へ長老を投げ倒しました。
「この爺おやじめ! きょうもまたわたしの財布さいふから一杯やる金かねを
盗んでいったな!」
 十分ばかりたった後のち、僕らは実際逃げ出さないばかりに長老夫婦をあと
に残し、大寺院の玄関を下おりていきました。
「あれではあの長老も『生命の樹』を信じないはずですね。」
 しばらく黙って歩いた後、ラップは僕にこう言いました。が、僕は返事をす
るよりも思わず大寺院を振り返りました。大寺院はどんより曇った空にやはり
高い塔や円屋根まるやねを無数の触手のように伸ばしています。なにか沙漠さ
ばくの空に見える蜃気楼しんきろうの無気味さを漂わせたまま。……
一五
 それからかれこれ一週間の後、僕はふと医者のチャックに珍しい話を聞きま
した。というのはあのトックの家うちに幽霊の出るという話なのです。そのこ
ろにはもう雌めすの河童かっぱはどこかほかへ行ってしまい、僕らの友だちの
詩人の家も写真師のステュディオに変わっていました。なんでもチャックの話
によれば、このステュディオでは写真をとると、トックの姿もいつの間まにか
必ず朦朧もうろうと客の後ろに映っているとかいうことです。もっともチャッ
クは物質主義者ですから、死後の生命などを信じていません。現にその話をし
た時にも悪意のある微笑を浮かべながら、「やはり霊魂というものも物質的存
在とみえますね」などと註釈めいたことをつけ加えていました。僕も幽霊を信
じないことはチャックとあまり変わりません。けれども詩人のトックには親し

676 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:42:01.67 ID:slzdzh9Md.net
ている容子ようすを装っていました。が、時々は大寺院の内部へそっと目をや
るのを忘れずにいました。
 コリント風の柱、ゴシック風の穹窿きゅうりゅう、アラビアじみた市松いち
まつ模様の床ゆか、セセッションまがいの祈祷机きとうづくえ、――こういう
ものの作っている調和は妙に野蛮な美を具そなえていました。しかし僕の目を
ひいたのは何よりも両側の龕がんの中にある大理石の半身像です。僕は何かそ
れらの像を見知っているように思いました。それもまた不思議ではありません
。あの腰の曲った河童かっぱは「生命の樹」の説明をおわると、今度は僕やラ
ップといっしょに右側の龕の前へ歩み寄り、その龕の中の半身像にこういう説
明を加え出しました。
「これは我々の聖徒のひとり、――あらゆるものに反逆した聖徒ストリントベ
リイです。この聖徒はさんざん苦しんだあげく、スウェデンボルグの哲学のた
めに救われたように言われています。が、実は救われなかったのです。この聖
徒はただ我々のように生活教を信じていました。――というよりも信じるほか
はなかったのでしょう。この聖徒の我々に残した『伝説』という本を読んでご
らんなさい。この聖徒も自殺未遂者だったことは聖徒自身告白しています。」
 僕はちょっと憂鬱ゆううつになり、次の龕がんへ目をやりました。次の龕に
ある半身像は口髭くちひげの太い独逸ドイツ人です。
「これはツァラトストラの詩人ニイチェです。その聖徒は聖徒自身の造った超
人に救いを求めました。が、やはり救われずに気違いになってしまったのです
。もし気違いにならなかったとすれば、あるいは聖徒の数かずへはいることも
できなかったかもしれません。……」
 長老はちょっと黙った後のち、第三の龕がんの前へ案内しました。
「三番目にあるのはトルストイです。この聖徒はだれよりも苦行をしました。
それは元来貴族だったために好奇心の多い公衆に苦しみを見せることをきらっ
たからです。この聖徒は事実上信ぜられない基督キリストを信じようと努力し
ました。いや、信じているようにさえ公言したこともあったのです。しかしと
うとう晩年には悲壮な※(「言+墟のつくり」、第4水準2-88-74)う
そつきだったことに堪たえられないようになりました。この聖徒も時々書斎の
梁はりに恐怖を感じたのは有名です。けれども聖徒の数にはいっているくらい
ですから、もちろん自殺したのではありません。」

677 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:42:46.03 ID:slzdzh9Md.net
あ、これからその回線使ったらバレちゃうね

678 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:42:59.68 ID:slzdzh9Md.net
びかけました。
「しめた! すばらしい葬送曲ができるぞ。」
 クラバックは細い目をかがやかせたまま、ちょっとマッグの手を握ると、い
きなり戸口へ飛んでいきました。もちろんもうこの時には隣近所の河童が大勢
、トックの家の戸口に集まり、珍しそうに家の中をのぞいているのです。しか
しクラバックはこの河童たちを遮二無二しゃにむに左右へ押しのけるが早いか
、ひらりと自動車へ飛び乗りました。同時にまた自動車は爆音を立ててたちま
ちどこかへ行ってしまいました。
「こら、こら、そうのぞいてはいかん。」
 裁判官のペップは巡査の代わりに大勢の河童かっぱを押し出した後のち、ト
ックの家の戸をしめてしまいました。部屋へやの中はそのせいか急にひっそり
なったものです。僕らはこういう静かさの中に――高山植物の花の香に交じっ
たトックの血の匂においの中に後始末あとしまつのことなどを相談しました。
しかしあの哲学者のマッグだけはトックの死骸しがいをながめたまま、ぼんや
り何か考えています。僕はマッグの肩をたたき、「何を考えているのです?」
と尋ねました。
「河童の生活というものをね。」
「河童の生活がどうなるのです?」
「我々河童はなんと言っても、河童の生活をまっとうするためには、……」
 マッグは多少はずかしそうにこう小声でつけ加えました。
「とにかく我々河童以外の何ものかの力を信ずることですね。」
一四
 僕に宗教というものを思い出させたのはこういうマッグの言葉です。僕はも
ちろん物質主義者ですから、真面目まじめに宗教を考えたことは一度もなかっ
たのに違いありません。が、この時はトックの死にある感動を受けていたため
にいったい河童の宗教はなんであるかと考え出したのです。僕はさっそく学生
のラップにこの問題を尋ねてみました。
「それは基督教キリストきょう、仏教、モハメット教、拝火教はいかきょうな
ども行なわれています。まず一番勢力のあるものはなんといっても近代教でし
ょう。生活教とも言いますがね。」(「生活教」という訳語は当たっていない
かもしれません。この原語は Quemoocha です。cha は英吉利
イギリス語の ism という意味に当たるでしょう。quemoo の原形
quemal の訳は単に「生きる」というよりも「飯を食ったり、酒を飲
んだり、交合こうごうを行なったり」する意味です。)
「じゃこの国にも教会だの寺院だのはあるわけなのだね?」
「常談じょうだんを言ってはいけません。近代教の大寺院などはこの国第一の
大建築ですよ。どうです、ちょっと見物に行っては?」

679 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:43:16.89 ID:slzdzh9Md.net
ぐちなどを調べていたチャックはいかにも医者らしい態度をしたまま、僕ら五
人に宣言しました。(実はひとりと四匹しひきとです。)
「もう駄目だめです。トック君は元来胃病でしたから、それだけでも憂鬱ゆう
うつになりやすかったのです。」
「何か書いていたということですが。」
 哲学者のマッグは弁解するようにこう独ひとり語ごとをもらしながら、机の
上の紙をとり上げました。僕らは皆頸くびをのばし、(もっとも僕だけは例外
です。)幅の広いマッグの肩越しに一枚の紙をのぞきこみました。
「いざ、立ちてゆかん。娑婆界しゃばかいを隔つる谷へ。
 岩むらはこごしく、やま水は清く、
 薬草の花はにおえる谷へ。」
 マッグは僕らをふり返りながら、微苦笑といっしょにこう言いました。
「これはゲエテの『ミニヨンの歌』の剽窃ひょうせつですよ。するとトック君
の自殺したのは詩人としても疲れていたのですね。」
 そこへ偶然自動車を乗りつけたのはあの音楽家のクラバックです。クラバッ
クはこういう光景を見ると、しばらく戸口にたたずんでいました。が、僕らの
前へ歩み寄ると、怒鳴どなりつけるようにマッグに話しかけました。
「それはトックの遺言状ゆいごんじょうですか?」
「いや、最後に書いていた詩です。」
「詩?」
 やはり少しも騒がないマッグは髪を逆立さかだてたクラバックにトックの詩
稿を渡しました。クラバックはあたりには目もやらずに熱心にその詩稿を読み
出しました。しかもマッグの言葉にはほとんど返事さえしないのです。
「あなたはトック君の死をどう思いますか?」
「いざ、立ちて、……僕もまたいつ死ぬかわかりません。……娑婆界しゃばか
いを隔つる谷へ。……」
「しかしあなたはトック君とはやはり親友のひとりだったのでしょう?」
「親友? トックはいつも孤独だったのです。……娑婆界を隔つる谷へ、……
ただトックは不幸にも、……岩むらはこごしく……」
「不幸にも?」
「やま水は清く、……あなたがたは幸福です。……岩むらはこごしく。……」
 僕はいまだに泣き声を絶たない雌めすの河童かっぱに同情しましたから、そ
っと肩を抱かかえるようにし、部屋へやの隅すみの長椅子ながいすへつれてい
きました。そこには二歳か三歳かの河童が一匹、何も知らずに笑っているので
す。僕は雌の河童の代わりに子どもの河童をあやしてやりました。するといつ
か僕の目にも涙のたまるのを感じました。僕が河童の国に住んでいるうちに涙
というものをこぼしたのは前にもあとにもこの時だけです。
「しかしこういうわがままの河童といっしょになった家族は気の毒ですね。」
「なにしろあとのことも考えないのですから。」
 裁判官のペップは相変わらず、新しい巻煙草まきたばこに火をつけながら、
資本家のゲエルに返事をしていました。すると僕らを驚かせたのは音楽家のク
ラバックのおお声です。クラバックは詩稿を握ったまま、だれにともなしに呼

680 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:43:39.80 ID:pzWoPDmad.net
 社長のゲエルは色硝子いろガラスの光に顔中紫に染まりながら、人なつこい
笑顔えがおをして見せました。
「わたしはこの間もある社会主義者に『貴様は盗人ぬすびとだ』と言われたた
めに心臓痲痺まひを[#「痲痺を」は底本では「痳痺を」]起こしかかったも
のです。」
「それは案外多いようですね。わたしの知っていたある弁護士などはやはりそ
のために死んでしまったのですからね。」
 僕はこう口を入れた河童かっぱ、――哲学者のマッグをふりかえりました。
マッグはやはりいつものように皮肉な微笑を浮かべたまま、だれの顔も見ずに
しゃべっているのです。
「その河童はだれかに蛙かえるだと言われ、――もちろんあなたも御承知でし
ょう、この国で蛙だと言われるのは人非人にんぴにんという意味になることぐ
らいは。――己おれは蛙かな? 蛙ではないかな? と毎日考えているうちに
とうとう死んでしまったものです。」
「それはつまり自殺ですね。」
「もっともその河童を蛙だと言ったやつは殺すつもりで言ったのですがね。あ
なたがたの目から見れば、やはりそれも自殺という……」
 ちょうどマッグがこう言った時です。突然その部屋へやの壁の向こうに、―
―たしかに詩人のトックの家に鋭いピストルの音が一発、空気をはね返すよう
に響き渡りました。
十三
 僕らはトックの家へ駆けつけました。トックは右の手にピストルを握り、頭
の皿から血を出したまま、高山植物の鉢植はちうえの中に仰向あおむけになっ
て倒れていました。そのまたそばには雌めすの河童が一匹、トックの胸に顔を
埋うずめ、大声をあげて泣いていました。僕は雌の河童を抱き起こしながら、
(いったい僕はぬらぬらする河童の皮膚に手を触れることをあまり好んではい
ないのですが。)「どうしたのです?」と尋ねました。
「どうしたのだか、わかりません。ただ何か書いていたと思うと、いきなりピ
ストルで頭を打ったのです。ああ、わたしはどうしましょう? qur-r-
r-r-r, qur-r-r-r-r」(これは河童の泣き声です。)
「なにしろトック君はわがままだったからね。」
 硝子ガラス会社の社長のゲエルは悲しそうに頭を振りながら、裁判官のペッ
プにこう言いました。しかしペップは何も言わずに金口きんぐちの巻煙草まき
たばこに火をつけていました。すると今までひざまずいて、トックの創口きず

681 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:44:08.98 ID:pzWoPDmad.net
「ペップ君、はなはだ失礼ですが、この国では罪人を罰しないのですか?」
 ペップは金口きんぐちの煙草の煙をまず悠々ゆうゆうと吹き上げてから、い
かにもつまらなそうに返事をしました。
「罰しますとも。死刑さえ行なわれるくらいですからね。」
「しかし僕は一月ひとつきばかり前に、……」
 僕は委細を話した後のち、例の刑法千二百八十五条のことを尋ねてみました

「ふむ、それはこういうのです。――『いかなる犯罪を行ないたりといえども
、該がい犯罪を行なわしめたる事情の消失したる後は該犯罪者を処罰すること
を得ず』つまりあなたの場合で言えば、その河童かっぱはかつては親だったの
ですが、今はもう親ではありませんから、犯罪も自然と消滅するのです。」
「それはどうも不合理ですね。」
「常談じょうだんを言ってはいけません。親だった河童も親である河童も同一
に見るのこそ不合理です。そうそう、日本の法律では同一に見ることになって
いるのですね。それはどうも我々には滑稽こっけいです。ふふふふふふふふふ
ふ。」
 ペップは巻煙草をほうり出しながら、気のない薄笑いをもらしていました。
そこへ口を出したのは法律には縁の遠いチャックです。チャックはちょっと鼻
目金はなめがねを直し、こう僕に質問しました。
「日本にも死刑はありますか?」
「ありますとも。日本では絞罪こうざいです。」
 僕は冷然と構えこんだペップに多少反感を感じていましたから、この機会に
皮肉を浴びせてやりました。
「この国の死刑は日本よりも文明的にできているでしょうね?」
「それはもちろん文明的です。」
 ペップはやはり落ち着いていました。
「この国では絞罪などは用いません。まれには電気を用いることもあります。
しかしたいていは電気も用いません。ただその犯罪の名を言って聞かせるだけ
です。」
「それだけで河童は死ぬのですか?」
「死にますとも。我々河童の神経作用はあなたがたのよりも微妙ですからね。

「それは死刑ばかりではありません。殺人にもその手を使うのがあります――


682 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:44:25.93 ID:Z4P9qjm/M.net
こういう荒らしをする人間ってどんな人なんだろ
可哀想な人生だな

683 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:44:26.70 ID:pzWoPDmad.net
はやくたててにょん埋まっちゃうにょん

684 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:44:47.72 ID:XJer5j4tp.net
こwwwwwゆwwwwwコピペを持ってくるって事はww
効いてる翔子wwwwwwwですなwwwwwww🤣

台風ネタも出かけてる煽りも
ゴキブリアフィリエイト
ホイミソ堂ポケりんって無職の屑野郎が今までしとるんやぞwwwww
実際ポケGOで死者でたらコイツの責任ゾwwwww

685 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:44:53.07 ID:krfJH2oOd.net
物質的欲望を減ずることは必ずしも平和をもたらさない。我々は平和を得る
ためには精神的欲望も減じなければならぬ。(クラバックはこの章の上にも爪
つめの痕あとを残していました。)
   我々は人間よりも不幸である。人間は河童かっぱほど進化していない。(僕
はこの章を読んだ時思わず笑ってしまいました。)
 成すことは成し得ることであり、成し得ることは成すことである。畢竟ひっ
きょう我々の生活はこういう循環論法を脱することはできない。――すなわち
不合理に終始している。
 ボオドレエルは白痴になった後のち、彼の人生観をたった一語に、――女陰
の一語に表白した。しかし彼自身を語るものは必ずしもこう言ったことではな
い。むしろ彼の天才に、――彼の生活を維持するに足る詩的天才に信頼したた
めに胃袋の一語を忘れたことである。(この章にもやはりクラバックの爪の痕
は残っていました。)
 もし理性に終始するとすれば、我々は当然我々自身の存在を否定しなければ
ならぬ。理性を神にしたヴォルテエルの幸福に一生をおわったのはすなわち人
間の河童よりも進化していないことを示すものである

 ある割合に寒い午後です。僕は「阿呆あほうの言葉」を読み飽きましたから
、哲学者のマッグを尋ねに出かけました。するとある寂しい町の角かどに蚊の
ようにやせた河童かっぱが一匹、ぼんやり壁によりかかっていました。しかも
それは紛れもない、いつか僕の万年筆を盗んでいった河童なのです。僕はしめ
たと思いましたから、ちょうどそこへ通りかかった、たくましい巡査を呼びと
めました。
「ちょっとあの河童を取り調べてください。あの河童はちょうど一月ひとつき
ばかり前にわたしの万年筆を盗んだのですから。」
 巡査は右手の棒をあげ、(この国の巡査は剣けんの代わりに水松いちいの棒
を持っているのです。)「おい、君」とその河童へ声をかけました。僕はある
いはその河童は逃げ出しはしないかと思っていました。が、存外落ち着き払っ
て巡査の前へ歩み寄りました。のみならず腕を組んだまま、いかにも傲然ごう
ぜんと僕の顔や巡査の顔をじろじろ見ているのです。しかし巡査は怒おこりも
せず、腹の袋から手帳を出してさっそく尋問にとりかかりました。
「お前の名は?」「グルック。」「職業は?」
「つい二三日前までは郵便配達夫をしていました。」
「よろしい。そこでこの人の申し立てによれば、君はこの人の万年筆を盗んで
いったということだがね。」
「ええ、一月ばかり前に盗みました。」「なんのために?」
「子どもの玩具おもちゃにしようと思ったのです。」
「その子どもは?」
 巡査ははじめて相手の河童へ鋭い目を注ぎました。
「一週間前に死んでしまいました。」
「死亡証明書を持っているかね?」
 やせた河童は腹の袋から一枚の紙をとり出しました。巡査はその紙へ目を通
すと、急ににやにや笑いながら、相手の肩をたたきました。
「よろしい。どうも御苦労だったね。」
 僕は呆気あっけにとられたまま、巡査の顔をながめていました。しかもその
うちにやせた河童は何かぶつぶつつぶやきながら、僕らを後ろにして行ってし
まうのです。僕はやっと気をとり直し、こう巡査に尋ねてみました。
「どうしてあの河童をつかまえないのです?」
「あの河童は無罪ですよ。」
「しかし僕の万年筆を盗んだのは……」
「子どもの玩具にするためだったのでしょう。けれどもその子どもは死んでい
るのです。もし何か御不審だったら、刑法千二百八十五条をお調べなさい。」
 巡査はこう言いすてたなり、さっさとどこかへ行ってしまいました。僕はし
かたがありませんから、「刑法千二百八十五条」を口の中に繰り返し、マッグ
の家うちへ急いでゆきました。哲学者のマッグは客好きです。現にきょうも薄
暗い部屋へやには裁判官のペップや医者のチャックや硝子ガラス会社の社長の
ゲエルなどが集まり、七色なないろの色硝子のランタアンの下に煙草たばこの
煙を立ち昇のぼらせていました。そこに裁判官のペップが来ていたのは何より
も僕には好こうつごうです。僕は椅子いすにかけるが早いか、刑法第千二百八
十五条を検しらべる代わりにさっそくペップへ問いかけました。

686 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:45:14.55 ID:krfJH2oOd.net
こんなとこで回線ストック消費していいの?w

687 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:45:28.74 ID:krfJH2oOd.net
「なにあの自動車の窓の中から緑いろの猿さるが一匹首を出したように見えた
のだよ。」
 僕は多少心配になり、とにかくあの医者のチャックに診察してもらうように
勧めました。しかしトックはなんと言っても、承知する気色けしきさえ見せま
せん。のみならず何か疑わしそうに僕らの顔を見比べながら、こんなことさえ
言い出すのです。
「僕は決して無政府主義者ではないよ。それだけはきっと忘れずにいてくれた
まえ。――ではさようなら。チャックなどはまっぴらごめんだ。」
 僕らはぼんやりたたずんだまま、トックの後ろ姿を見送っていました。僕ら
は――いや、「僕ら」ではありません。学生のラップはいつの間にか往来のま
ん中に脚あしをひろげ、しっきりない自動車や人通りを股目金まためがねにの
ぞいているのです。僕はこの河童かっぱも発狂したかと思い、驚いてラップを
引き起こしました。
「常談じょうだんじゃない。何をしている?」
 しかしラップは目をこすりながら、意外にも落ち着いて返事をしました。
「いえ、あまり憂鬱ゆううつですから、さかさまに世の中をながめて見たので
す。けれどもやはり同じことですね。」
十一
 これは哲学者のマッグの書いた「阿呆あほうの言葉」の中の何章かです。―

        ×
 阿呆はいつも彼以外のものを阿呆であると信じている。
        ×
 我々の自然を愛するのは自然は我々を憎んだり嫉妬しっとしたりしないため
もないことはない。
        ×
 もっとも賢い生活は一時代の習慣を軽蔑けいべつしながら、しかもそのまた
習慣を少しも破らないように暮らすことである。
        ×
 我々のもっとも誇りたいものは我々の持っていないものだけである。
        ×
 何なんびとも偶像を破壊することに異存を持っているものはない。同時にま
た何びとも偶像になることに異存を持っているものはない。しかし偶像の台座
の上に安んじてすわっていられるものはもっとも神々に恵まれたもの、――阿
呆か、悪人か、英雄かである。(クラバックはこの章の上へ爪つめの痕あとを
つけていました。)
        ×
 我々の生活に必要な思想は三千年前ぜんに尽きたかもしれない。我々はただ
古い薪たきぎに新しい炎を加えるだけであろう。
        ×
 我々の特色は我々自身の意識を超越するのを常としている。
        ×
 幸福は苦痛を伴い、平和は倦怠けんたいを伴うとすれば、――?
        ×
 自己を弁護することは他人を弁護することよりも困難である。疑うものは弁
護士を見よ。
        ×
 矜誇きょうか[#ルビの「きょうか」はママ]、愛欲、疑惑――あらゆる罪
は三千年来、この三者から発している。同時にまたおそらくはあらゆる徳も。

688 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:46:07.44 ID:krfJH2oOd.net
ぽけもんのためにいっぱいよういしたかいせんごちゃんねるのじえんにつかえてよかったね

689 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:46:19.56 ID:krfJH2oOd.net
「しかし先生の英雄曲は……」
 クラバックは細い目をいっそう細め、いまいましそうにラップをにらみつけ
ました。
「黙りたまえ。君などに何がわかる? 僕はロックを知っているのだ。ロック
に平身低頭する犬どもよりもロックを知っているのだ。」
「まあ少し静かにしたまえ。」
「もし静かにしていられるならば、……僕はいつもこう思っている。――僕ら
の知らない何ものかは僕を、――クラバックをあざけるためにロックを僕の前
に立たせたのだ。哲学者のマッグはこういうことをなにもかも承知している。
いつもあの色硝子いろガラスのランタアンの下に古ぼけた本ばかり読んでいる
くせに。」
「どうして?」
「この近ごろマッグの書いた『阿呆あほうの言葉』という本を見たまえ。――

 クラバックは僕に一冊の本を渡す――というよりも投げつけました。それか
らまた腕を組んだまま、突つっけんどんにこう言い放ちました。
「じゃきょうは失敬しよう。」
 僕はしょげ返ったラップといっしょにもう一度往来へ出ることにしました。
人通りの多い往来は相変わらず毛生欅ぶなの並み木のかげにいろいろの店を並
べています。僕らはなんということもなしに黙って歩いてゆきました。すると
そこへ通りかかったのは髪の長い詩人のトックです。トックは僕らの顔を見る
と、腹の袋から手巾ハンケチを出し、何度も額をぬぐいました。
「やあ、しばらく会わなかったね。僕はきょうは久しぶりにクラバックを尋ね
ようと思うのだが、……」
 僕はこの芸術家たちを喧嘩けんかさせては悪いと思い、クラバックのいかに
も不機嫌ふきげんだったことを婉曲えんきょくにトックに話しました。
「そうか。じゃやめにしよう。なにしろクラバックは神経衰弱だからね。……
僕もこの二三週間は眠られないのに弱っているのだ。」
「どうだね、僕らといっしょに散歩をしては?」
「いや、きょうはやめにしよう。おや!」
 トックはこう叫ぶが早いか、しっかり僕の腕をつかみました。しかもいつか
体中からだじゅうに冷汗を流しているのです。
「どうしたのだ?」
「どうしたのです?」

690 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:46:49.74 ID:krfJH2oOd.net
も子どもたちと遊んでいるのです。が、きょうはどうしたのか両腕を胸へ組ん
だまま、苦い顔をしてすわっていました。のみならずそのまた足もとには紙屑
かみくずが一面に散らばっていました。ラップも詩人トックといっしょにたび
たびクラバックには会っているはずです。しかしこの容子ようすに恐れたとみ
え、きょうは丁寧ていねいにお時宜じぎをしたなり、黙って部屋の隅すみに腰
をおろしました。
「どうしたね? クラバック君。」
 僕はほとんど挨拶あいさつの代わりにこう大音楽家へ問いかけました。
「どうするものか? 批評家の阿呆あほうめ! 僕の抒情じょじょう詩はトッ
クの抒情詩と比べものにならないと言やがるんだ。」
「しかし君は音楽家だし、……」
「それだけならば我慢がまんもできる。僕はロックに比べれば、音楽家の名に
価しないと言やがるじゃないか?」
 ロックというのはクラバックとたびたび比べられる音楽家です。が、あいに
く超人倶楽部クラブの会員になっていない関係上、僕は一度も話したことはあ
りません。もっとも嘴の反そり上がった、一癖ひとくせあるらしい顔だけはた
びたび写真でも見かけていました。
「ロックも天才には違いない。しかしロックの音楽は君の音楽にあふれている
近代的情熱を持っていない。」
「君はほんとうにそう思うか?」
「そう思うとも。」
 するとクラバックは立ち上がるが早いか、タナグラの人形をひっつかみ、い
きなり床ゆかの上にたたきつけました。ラップはよほど驚いたとみえ、何か声
をあげて逃げようとしました。が、クラバックはラップや僕にはちょっと「驚
くな」という手真似てまねをした上、今度は冷やかにこう言うのです。
「それは君もまた俗人のように耳を持っていないからだ。僕はロックを恐れて
いる。……」
「君が? 謙遜家けんそんかを気どるのはやめたまえ。」
「だれが謙遜家けんそんかを気どるものか? 第一君たちに気どって見せるく
らいならば、批評家たちの前に気どって見せている。僕は――クラバックは天
才だ。その点ではロックを恐れていない。」
「では何を恐れているのだ?」
「何か正体しょうたいの知れないものを、――言わばロックを支配している星
を。」
「どうも僕には腑ふに落ちないがね。」
「ではこう言えばわかるだろう。ロックは僕の影響を受けない。が、僕はいつ
の間まにかロックの影響を受けてしまうのだ。」
「それは君の感受性の……。」
「まあ、聞きたまえ。感受性などの問題ではない。ロックはいつも安んじてあ
いつだけにできる仕事をしている。しかし僕はいらいらするのだ。それはロッ
クの目から見れば、あるいは一歩の差かもしれない。けれども僕には十哩マイ
ルも違うのだ。」

691 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:47:33.84 ID:F3Y8dCoEd.net
も子どもたちと遊んでいるのです。が、きょうはどうしたのか両腕を胸へ組ん
だまま、苦い顔をしてすわっていました。のみならずそのまた足もとには紙屑
かみくずが一面に散らばっていました。ラップも詩人トックといっしょにたび
たびクラバックには会っているはずです。しかしこの容子ようすに恐れたとみ
え、きょうは丁寧ていねいにお時宜じぎをしたなり、黙って部屋の隅すみに腰
をおろしました。
「どうしたね? クラバック君。」
 僕はほとんど挨拶あいさつの代わりにこう大音楽家へ問いかけました。
「どうするものか? 批評家の阿呆あほうめ! 僕の抒情じょじょう詩はトッ
クの抒情詩と比べものにならないと言やがるんだ。」
「しかし君は音楽家だし、……」
「それだけならば我慢がまんもできる。僕はロックに比べれば、音楽家の名に
価しないと言やがるじゃないか?」
 ロックというのはクラバックとたびたび比べられる音楽家です。が、あいに
く超人倶楽部クラブの会員になっていない関係上、僕は一度も話したことはあ
りません。もっとも嘴の反そり上がった、一癖ひとくせあるらしい顔だけはた
びたび写真でも見かけていました。
「ロックも天才には違いない。しかしロックの音楽は君の音楽にあふれている
近代的情熱を持っていない。」
「君はほんとうにそう思うか?」
「そう思うとも。」
 するとクラバックは立ち上がるが早いか、タナグラの人形をひっつかみ、い
きなり床ゆかの上にたたきつけました。ラップはよほど驚いたとみえ、何か声
をあげて逃げようとしました。が、クラバックはラップや僕にはちょっと「驚
くな」という手真似てまねをした上、今度は冷やかにこう言うのです。
「それは君もまた俗人のように耳を持っていないからだ。僕はロックを恐れて
いる。……」
「君が? 謙遜家けんそんかを気どるのはやめたまえ。」
「だれが謙遜家けんそんかを気どるものか? 第一君たちに気どって見せるく
らいならば、批評家たちの前に気どって見せている。僕は――クラバックは天
才だ。その点ではロックを恐れていない。」
「では何を恐れているのだ?」
「何か正体しょうたいの知れないものを、――言わばロックを支配している星
を。」
「どうも僕には腑ふに落ちないがね。」
「ではこう言えばわかるだろう。ロックは僕の影響を受けない。が、僕はいつ
の間まにかロックの影響を受けてしまうのだ。」
「それは君の感受性の……。」
「まあ、聞きたまえ。感受性などの問題ではない。ロックはいつも安んじてあ
いつだけにできる仕事をしている。しかし僕はいらいらするのだ。それはロッ
クの目から見れば、あるいは一歩の差かもしれない。けれども僕には十哩マイ
ルも違うのだ。」

692 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:47:47.19 ID:LfN5Y7PQa.net
この台風の中ジムのポケモン帰ってきたわ
キチガイかよ

693 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:47:58.96 ID:F3Y8dCoEd.net
読んでくれて感謝です君しかいないよ?w

694 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:48:25.61 ID:F3Y8dCoEd.net
「その路があいにく見つからないのです。」
 年をとった河童は水々しい目にじっと僕の顔を見つめました。それからやっ
と体からだを起こし、部屋へやの隅すみへ歩み寄ると、天井からそこに下がっ
ていた一本の綱つなを引きました。すると今まで気のつかなかった天窓が一つ
開きました。そのまた円まるい天窓の外には松や檜ひのきが枝を張った向こう
に大空が青あおと晴れ渡っています。いや、大きい鏃やじりに似た槍やりヶ岳
たけの峯もそびえています。僕は飛行機を見た子どものように実際飛び上がっ
て喜びました。
「さあ、あすこから出ていくがいい。」
 年をとった河童はこう言いながら、さっきの綱を指さしました。今まで僕の
綱と思っていたのは実は綱梯子つなばしごにできていたのです。
「ではあすこから出さしてもらいます。」
「ただわたしは前もって言うがね。出ていって後悔しないように。」
「大丈夫だいじょうぶです。僕は後悔などはしません。」
 僕はこう返事をするが早いか、もう綱梯子をよじ登っていました。年をとっ
た河童の頭の皿をはるか下にながめながら。
一七
 僕は河童かっぱの国から帰ってきた後のち、しばらくは我々人間の皮膚の匂
においに閉口しました。我々人間に比べれば、河童は実に清潔なものです。の
みならず我々人間の頭は河童ばかり見ていた僕にはいかにも気味の悪いものに
見えました。これはあるいはあなたにはおわかりにならないかもしれません。
しかし目や口はともかくも、この鼻というものは妙に恐ろしい気を起こさせる
ものです。僕はもちろんできるだけ、だれにも会わない算段をしました。が、
我々人間にもいつか次第に慣れ出したとみえ、半年ばかりたつうちにどこへで
も出るようになりました。ただそれでも困ったことは何か話をしているうちに
うっかり河童の国の言葉を口に出してしまうことです。
「君はあしたは家うちにいるかね?」
「Qua」
「なんだって?」
「いや、いるということだよ。」
 だいたいこういう調子だったものです。
 しかし河童の国から帰ってきた後、ちょうど一年ほどたった時、僕はある事

695 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:51:27.65 ID:9CNjwKLud.net
自治荒らしクンの成敗は以上つぎはコピペ荒らしクンに天罰です

696 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:51:57.86 ID:XfkVzNE8M.net
ttps://i.imgur.com/D1j9eIF.jpg

うおおお

697 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:53:42.18 ID:5CCKQ+eh0.net
台風の中雨ざらしで真っ青になってんじゃん
かわいそう

698 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:54:39.27 ID:XJer5j4tp.net
こwwwwwゆwwwwwコピペを持ってくるって事はww
効いてる翔子wwwwwwwですなwwwwwww🤣

台風ネタも出かけてる煽りも
ゴキブリアフィリエイト
ホイミソ堂ポケりんって無職の屑野郎が今までしとるんやぞwwwww
実際ポケGOで死者でたらコイツの責任ゾwwwww


ちなみに暴風の深夜からジム潰すやつ湧いとるから
余裕で位置偽装やぞwwそいつらwwwwwww

699 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:55:23.30 ID:W7QjV9pm0.net
色違い実装はされたってことか

700 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:55:33.62 ID:FveyPxnd0.net
日本防人隊@JapanSakimori 2h
「サトウのごはん」等のいわゆるパック飯を #非常食 にしている方へ電子レンジもガスもお湯も使わないでホカホカで食べる方法をご紹介します。

@カイロ(ホッカイロ)を1個パック飯の上に置く(事前に振っておくと尚良)
Aバスタオル等でぐるぐるに巻いて包み込む
B15?20分待つ

以上

701 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 14:57:08.95 ID:FveyPxnd0.net
大根フット@AM_Shaggai 8h
ネットリテラシーの話をするよ
停電したときに思わず「停電した」ってつぶやきたくなっても絶対しないでね。
過去に突然停電してネットで停電情報確認したら自分が住んでる地域のごく狭い範囲だけだったこととかあるから、検索したら住所ほぼ割れちゃいます。

702 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:00:26.90 ID:SASTOEg90.net
アプリ警告出たな

703 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:01:31.98 ID:DW574X2Ed.net
うんこをやろう
            ゙'.    '.;`i  i、 ノ  .、″
             ゙'.     ,ト `i、  `i、    .、″
                |    .,.:/""  ゙‐,. `    /
             `  .,-''ヽ"`    ヽ,,,、   !
                、,、‐'゙l‐、      .丿 : ':、
               、/ヽヽ‐ヽ、;,,,,,,,,,-.ッ:''`  .,"-、
              ,r"ツぃ丶  ``````   ../  `i、
          ,.イ:、ヽ/ー`-、-ヽヽヽ、−´    .l゙`-、
         _,,l゙-:ヽ,;、、             、、丶  ゙i、,,、
        ,<_ l_ヽ冫`'`-、;,,,、、、、.............,,,,、.-`":    │ `i、
      、、::|、、、ヽ,、、.    ```: : : ```      、.、'`  .|丶、
     .l","ヽ、,"、,"'、ぃ、、,、、、、.、、、.、、、_、.,,.ヽ´    l゙  ゙).._
    ,、':゙l:、、`:ヽ、`:、  : `"```¬――'''"`゙^`     : ..、丶  .l゙ `ヽ
   ,i´.、ヽ".、".、"'ヽヽ;,:、........、           、、...,,,、−‘`   、‐   |゙゙:‐,
  ,.-l,i´.、".`ヽ,,,.".`   `゙゙'"`'-ー"``"``r-ー`'":      _.‐′  丿  ,!
 j".、'ヽ,".、".、"`''`ー、._、、、           、._,、..-‐:'''′   .、,:"  丿
 ゙l,"`"`''ヽヽ"`"`  ```゙'''"ヽ∠、、、、ぃ-`''''": `      、._./`  ._/`
  `'i`ヽヽヽ`''ーi、、、: :                   、.,-‐'`   、/`
   ``ヽン'`"`  : `~``―ヽ::,,,,,,,,,,.....................,,,,.ー'``^    ,、‐'"`
      `"'゙―-、,,,,..、、               : ..,、ー'"'`
           : `‘"`―---------‐ヽ``"''''''""

704 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:01:49.32 ID:FveyPxnd0.net
アバンギャルド河津?お天気キャスター@makotokawazu 36m
台風の目が見えなくなったとか勢力が落ちてきたとかで安心している人がいるようですが、むしろこれから状況は悪化する一方です。

フリーザで言えばまだあと2回変身を残している…その意味がわかるでしょうか。漫画でもだいたい先に勝ったと思って油断した方が負けています。最後まで油断しないで。
http://pbs.twimg.com/media/EGp3-QQVUAUvVbt.jpg

705 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:02:05.07 ID:DW574X2Ed.net
  ::::::::::::::::::::                        ::::::::::/ ):::::::::
:::::(\:::::::                _人           / / ):::::::::::
:::::/\\             ノ⌒ 丿        /  / /ヽ::::::::::::
:::: ヽ \\         _/   ::(        /  / / /::::::::::::::::
:::: ( \ \\      /     :::::::\      l  三 / / ):::::::::::::::
:::::::ヽ ヽ . ミヽヽ     (     :::::::;;;;;;;)    /   二 / /::::::::::::::::::
::::::: ( \ ヽミ ヽヽ    \_―― ̄ ̄::::::::::  /    二 ___/ヽ ...::::::::::::::
::::... /ヽ ヽ ニ ヽヽ  ノ ̄     :::::::::::::: //   ニ _______/   ...:::::::::
:::.   ヽ____  ニ ヽ (     .::::::::::::::;;;;//    ニ ____ノ     .....::::::::::
      ヽ___,  ニ/ ̄――――― ̄ ̄::::::::\ ニ ___ノ +   + ....:::::::::
        ヽニ -‐(        :::::::::::::::::::::::::::::::::≡ __ノ+ ┼ *:::::::::
         ヽ---\__::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ_ +  ┼  .::::::::::
 :::::...     + ┼ +   +    ー-、___~'''''ー-、   :....::::::::::::
  :::::::....     + ┼    *+     +~~'''ヽ ..:...::::::::::::::::::::
   :::::::::::::::::.....    +   * .   ┼  :....:::::::::::::::::
    ::::::::::::::::::::....: + *     +   .....:::::::::::::::::

706 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:02:17.46 ID:DW574X2Ed.net
  ::::::::::::::::::::                        ::::::::::/ ):::::::::
:::::(\:::::::                _人           / / ):::::::::::
:::::/\\             ノ⌒ 丿        /  / /ヽ::::::::::::
:::: ヽ \\         _/   ::(        /  / / /::::::::::::::::
:::: ( \ \\      /     :::::::\      l  三 / / ):::::::::::::::
:::::::ヽ ヽ . ミヽヽ     (     :::::::;;;;;;;)    /   二 / /::::::::::::::::::
::::::: ( \ ヽミ ヽヽ    \_―― ̄ ̄::::::::::  /    二 ___/ヽ ...::::::::::::::
::::... /ヽ ヽ ニ ヽヽ  ノ ̄     :::::::::::::: //   ニ _______/   ...:::::::::
:::.   ヽ____  ニ ヽ (     .::::::::::::::;;;;//    ニ ____ノ     .....::::::::::
      ヽ___,  ニ/ ̄――――― ̄ ̄::::::::\ ニ ___ノ +   + ....:::::::::
        ヽニ -‐(        :::::::::::::::::::::::::::::::::≡ __ノ+ ┼ *:::::::::
         ヽ---\__::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ_ +  ┼  .::::::::::
 :::::...     + ┼ +   +    ー-、___~'''''ー-、   :....::::::::::::
  :::::::....     + ┼    *+     +~~'''ヽ ..:...::::::::::::::::::::
   :::::::::::::::::.....    +   * .   ┼  :....:::::::::::::::::
    ::::::::::::::::::::....: + *     +   .....:::::::::::::::::

707 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:05:03.26 ID:I+VeYhd10.net
さっき確認したらドラゴンクローだった

708 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:05:37.05 ID:sKGtPXXcM.net
マンションの住人がチャリを家に引っ込め始めたわ

709 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:07:03.53 ID:5CCKQ+eh0.net
近所のジム2か所に置いてる黄色おじさんもう6時間になるけど2か所とも1匹のままで草
もう50コインもらえるし片方落としに行っても恨まれないだろうがこの風雨の中もう外出たくねえな

710 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:09:07.37 ID:JSHojr480.net
迷わず行けよ

711 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:12:51.53 ID:Wn56zdn3d.net
木曜にできたばかりでレイド一回だけやっただけのソフバンジムが、防衛12時間の銀ジムなっていることに気づいた
無くなった別店舗ジムのデータでも引き継いでいるのかな

712 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:13:09.51 ID:gxaN5jD3a.net
東京なんだが全然大した事ないな
ただの大雨
豪雨ですらない

713 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:14:28.27 ID:XJer5j4tp.net
こwwwwwゆwwwwwコピペを持ってくるって事はww
効いてる翔子wwwwwwwですなwwwwwww🤣

台風ネタも出かけてる煽りも
ゴキブリアフィリエイト
ホイミソ堂ポケりんって無職の屑野郎が今までしとるんやぞwwwww
実際ポケGOで死者でたらコイツの責任ゾwwwww


ちなみに暴風の深夜からジム潰すやつ湧いとるから
余裕で位置偽装やぞwwそいつらwwwwwww

714 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:14:52.41 ID:z0osDj0PM.net
>>712
台風本番はこれからだろ
自分は西日本で晴れてるので強風ブーストギラティナやりますが

715 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:14:53.44 ID:I+VeYhd10.net
500メートル先のダイエーで5玉レイドしてるのに外ヤベーな
今日はもう閉店してるっぽいし行ってもできないだろうけどな

716 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:30:26.57 ID:noy87g170.net
千葉は既にヤバイ
今日はポケストも回せないが仕方なし

717 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:37:05.55 ID:EuQkw4Lwa.net
これくらいの台風だったらナックラー出来ただろ@東京

718 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:40:31.36 ID:NZxYYyrha.net
ワイ家ジム
そろそろ自色にしてもええんか?

719 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:40:48.92 ID:XJer5j4tp.net
こwwwwwゆwwwwwコピペと負け惜しみを持ってくるって事はww
効いてる翔子wwwwwwwですなwwwwwww🤣

台風ネタも出かけてる煽りも
ゴキブリアフィリエイト
ホイミソ堂ポケりんって無職の屑野郎が今までしとるんやぞwwwww
実際ポケGOで死者でたらコイツの責任ゾwwwww

720 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:41:32.14 ID:N/o1RXCG0.net
雨風が強くなってきたが無料パス分でEXジムのマーキングどうしよう
今日一日外出諦めるかなぁ

721 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:42:57.81 ID:o9V60f970.net
>>720
明日2回やれ

722 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:43:38.83 ID:US62OLFEd.net
>>717
決行したら大量の苦情が発生するだろ

723 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:44:59.23 ID:Qigf9iAm0.net
>>722
基地外はスルーしましょ

724 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:45:27.45 ID:b9VpTv0j0.net
>>712
確かに。そんなに騒ぐほど??

725 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:46:24.40 ID:krnlCJf80.net
愛知だけどふっつーの雨だからコミュデイ余裕でできたわ

ガッカリすぎる

726 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:47:17.00 ID:DMU0rGfK0.net
それは今だから言えたことだろ。

727 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:47:35.79 ID:JSHojr480.net
コミュデイやってキチガイをいくらか減らしてほしかったよ
残念だ

728 :ピカチュウ :2019/10/12(土) 15:47:51.22 ID:d3YpLtTa0.net
宮城は結構雨が強くなってきたし風も出てきた。

ミジュマルの巣に行くかどうか思案中・・・

総レス数 1002
399 KB
新着レスの表示

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
read.cgi ver.24052200