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【物語】欅坂46orけやき坂46の小説 ★7【エロも可】

1 :名無しって、書けない?:2019/01/25(金) 22:47:46.34 ID:fr6Ux+hDa.net
素人レベルからでも投稿できる小説スレです 
ただし投稿作品に対するすべての中傷は禁止です 

投稿者は多大な時間と労力をかけて 
作品を投稿していますのでご協力をよろしくお願いします 

この度小説スレと原案ありスレを統合しました 

以下は原案ありの簡単な説明です 

インスパイア、オマージュ、パロディ、パクリ、何でも結構です。 
その原案も小説、戯曲、映画、テレビドラマ、マンガ以外にも、ルポルタージュやテレビのドキュメンタリーとかでもかまいません。 
テーマだけでもOK、冒頭だけでもOKです。 
少しでもかすったから原案ありだと書いた当人が主張するのなら、そう見なしてあげましょう。
「『パクった』と言ってるけどさ、全然パクってなく、それはお前のオリジナルじゃん」という非難はやめましょう。 

あとは作家さん各々の良心に従い思うままに書いてください 

最後に、このスレの投稿される作品はすべてフィクションであり 
実在する人物や団体や建物等との関係は一切ありません 
VIPQ2_EXTDAT: checked:vvvv:1000:512:----: EXT was configured VIPQ2_EXTDAT: default:vvvvvv:1000:512:----: EXT was configured
※前スレ
【物語】欅坂46orけやき坂46の小説 ★5【エロも可】
https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1541682994/
VIPQ2_EXTDAT: checked:vvvv:1000:512:----: EXT was configured

2 :理佐ちゃんだから好きスレの人:2019/01/25(金) 23:14:52.48 ID:fr6Ux+hDa.net
小説スレにお越しの皆様ご機嫌麗しゅうございますm(__)m

私、『理佐ちゃんだから好きスレ』という妄想スレを主宰している者なのですが
このたび『だから好きスレ』をフランチャイズ化することになりました

つきましては推しメンへの過剰な愛と適度なキモさを備えた恋愛妄想を書いてくれる方を募集したいと思います

お申し込みの方は是非ともだから好きスレ本店の『理佐ちゃんだから好きスレ』にお越しください


【妄想】理佐ちゃんだから好き【小説】 ★4
https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1547968978/


皆様だから好きスレのフランチャイズ化にご協力くださいm(__)m

3 :理佐ちゃんだから好きスレの人:2019/01/25(金) 23:15:29.24 ID:fr6Ux+hDa.net
フランチャイズ1号店

【妄想】まほほんだから好き【小説】
https://mao.5ch.net/test/read.cgi/ngt/1548332954/

4 :理佐ちゃんだから好きスレの人:2019/01/25(金) 23:17:11.06 ID:fr6Ux+hDa.net
以上スポンサーCMでした

作家の皆様執筆よろしくお願いいたしますm(__)m

5 :名無しって、書けない?:2019/01/25(金) 23:49:22.00 ID:8DHkdNF00.net
前スレ  
http://itest.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1541682994/

【過去スレ】  
【物語】欅坂46orけやき坂46の小説1【エロも可】  
https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1518781547/  
【物語】欅坂46orけやき坂46の小説 ★2【エロも可】  
http://itest.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1518781547/  
【物語】欅坂46orけやき坂46の小説 ★3【エロも可】 
http://itest.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1520727452/ 
【物語】欅坂46orけやき坂46の小説 ★4【エロも可】 
http://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1526544567/
【物語】欅坂46orけやき坂46の小説 ★5【エロも可】 
http://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1533436044

☆原案ありスレ☆  
【原案ありの】欅坂46orけやき坂46の物語【パクリ】 ★3  
http://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1509750393/  
【原案ありの】欅坂46orけやき坂46の物語★2【パクリ】  
http://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1509198143/  
【原案ありの】欅坂46orけやき坂46の物語【パクリ】  
http://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1502756305/  
☆一般的小説スレ☆  
【物語】欅坂46の小説 ★7【エロも可】  
http://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1507808924/  
【物語】欅坂46の小説 ★6【エロも可】  
http://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1499810853/  
【物語】欅坂46の小説 ★5【エロも可】  
http://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1498988596/  
【物語】欅坂46の小説 ★4【エロも可】  
http://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1496452705/  
【物語】欅坂46の小説★3【エロも可】  
http://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1493391840/  
【物語】欅坂46の小説★2【エロも可】  
http://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1489546278/  
【物語】欅坂46の小説【エロも可】  
http://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1487327352/ 

【このスレにかかっている2つの呪い(笑)について】  
◆文字数制限◆  
スレの性質上、長文レスが多くなることが災いして、スレの途中から1レスあたりの文字数制限が発動します。  
この制限はスレが進むにつれ更にどんどん厳しくなり、最終的には1レスあたり3〜5文字までになる予定(笑)  
この呪いに対抗する術はありませんので、発動後は、長い作品の場合は適宜分割レスを活用してください。  
また、この制限がある程度進んだところで次スレが立つかも。  
◆埋め立てですか?◆  
ある程度の長文のレスがいくつか続くと(目安としては4〜5レス程度)、このようなメッセージが出て次に長文レスが書き込めなくなる事態が出現します。  
この場合は1回短いレスを挟むと、また書き込み可能になります。  
自分自身で書き込んでもOKです。

6 :名無しって、書けない?:2019/01/26(土) 12:20:50.56 ID:AzthzLVld.net
保守

7 :オダオシ :2019/01/26(土) 18:52:44.02 ID:jLsukvlF0.net
理佐ちゃん、dionさん、スレ立てありがとうございます。
早速書き込ませていただきます。

8 :理佐ちゃんだから好きスレの人:2019/01/26(土) 18:56:27.94 ID:AplQpFh/a.net
>>7
オダオシさん待ってました
だから好きスレのフランチャイズいかがですか!

9 :名無しって、書けない?:2019/01/26(土) 19:05:10.56 ID:jLsukvlF0.net
前スレ562
その日の夜遅く

美愉がキッチンに篭って、料理を作っている。
そこへ奈那が冷蔵庫の中を漁りにやってきた。
美愉「あ、ちょうどよかった奈那さん。その鍋にびっくり水入れてください」
奈那「びっくり水って何?冷蔵庫にあるの?」
美愉「いい年してびっくり水も知らないんですか。沸騰したお湯に普通に水を入れるんですよ」
奈那「知らなかった」
美愉「今時の人は、料理本に『びっくり水』って書いてあると、スーパーに買いに行っちゃうって聞いたことあるけど、ほんとにいるんですね。初めて見ました」
奈那「どうも初めまして(笑)ところで何で今頃?」
美愉「コーポ欅の新メニュー開発中です」
奈那「何が出来るの?」
美愉「コーポ欅風スパイシーアジア麺。上手く出来たら明日披露しますね」
奈那「うわー美味しそう。でもすごいな美愉ちゃんは、その若さで何でも作れるし」
美愉「小学生の頃から料理作ってたから」
奈那「それも才能のうちだよ。それじゃ明日期待してるんで、頑張って♪」

10 :オダオシ :2019/01/26(土) 19:40:42.17 ID:jLsukvlF0.net
次の日

菜々香「うわー、何かいい匂いする♪ 美愉ちゃんきょうの晩ご飯何?」
美愉「新しいメニューです。みんな揃うまで待っててください」

スパイシーアジア麺は大好評だった。
麻衣「美愉ちゃん美味しいよ!これから暑くなっても、これなら食欲増すかも!」
菜々香「あんまり増しすぎるのも困るね♪」
奈那「もう私が男だったら、美愉ちゃんにお嫁に来て欲しいくらいよ」
菜々香「ここに住んでれば、みんなの奥さんみたいなものよ。美愉、お茶くれ」
美愉「調子に乗るな!」
奈那「みんな、まだお腹に余裕ある?」
そう言うと、奈那はキッチンから、こっそり買っておいたケーキを持ってきた。

奈那「菜々香さん、誕生日おめでとう!」
菜々香「えっ・・・」
麻衣「そうか今日だったわね」
美愉「うわー美味しそうなケーキ。取り分けますね」
麻衣「ケーキは別腹だから、もちろん頂くわ(笑)奈那ちゃんありがとう」
菜々香「私、実家にも全然帰ってないし、友達もほとんどいないから、こんな風に祝ってもらうの久しぶり」
菜々香にも色々ありそうだと、奈那は感じた。

11 :名無しって、書けない?:2019/01/26(土) 20:08:17.52 ID:2QyPccib0.net
>>3
さっそくフランチャイズ1号店に行ってきました

12 :ウィンドチャイムが鳴る頃 EP26:2019/01/26(土) 20:13:14.45 ID:2QyPccib0.net
「そういえば今彼女とかいるの?」
彼女が僕にスパークリングワインの注がれた透明のグラスを渡しながら聞いてくる。
「居ないけど・・・どうして?」
「ううん、なんでもないの。」
そのうち彼女は別の女子に呼ばれて別のところに行ってしまった。
再び彼女と会ったのは同窓会の終わりごろ、周りが三々五々帰り始めた時。
「二次会でないの?」
ホームへ向かおうとホテルを後にする僕を彼女が追いかけて来た。
「うん。」
「どうして?」
「どうしてって別に。行くの?」
「わたしは・・・行かないかな」
「なんで?行けばいいのに。」
「だって・・・」
「ねぇ、真帆二次会行くの〜?」
僕らの背後で声がした。
「あ、理佐ごめん、わたし明日早いから」
「わかった」
その時、僕は渡邉さんと目が合った。
すこしニヤッとされた。
「このあと二次会しない?」
彼女は小声がちに言った。
「ただし2人で。」
ピースサインをして彼女は僕に笑った。
無邪気なその笑顔に僕はまた胸を締め付けられる。


彼女に連れられて訪れたのは昭和感漂う、スナックモナ・リザだった。
「いらっしゃい。」
赤いルージュで極めて無愛想な猫目の女の人
がこの店のママであるらしい。
「なんでこんなとこ、知ってるの?」
僕はそっと彼女に耳打ちする。
「ここのママと知り合いなの」
舌っ足らずな声が紫煙の合間に妖しく浮かんで聞こえた。
「あ、真帆久しぶりじゃん」
猫目の女の人は彼女を見つけると途端に相好を崩した。
「久しぶり」
カウンター席に座って彼女はブラック・レインを頼んだ。
アルコールに弱い僕は大人しくミントベースのカクテルを頼む。
シェイカーの小刻みな金属音を前に、
「いつだったっけ」と彼女が話を切り出す。
「いつ?」
「ほら、花火見たの。」
「ああ。」
「下駄で転けて僕が真帆を背負って」
「そうそう。」
「懐かしいな。」
頬杖をついて、追憶に浸る彼女の横顔が酷く淋しそうだった。
顔立ちが整っていて一見、すべてが完璧に思える彼女。でもよく見れば、色々抜けている。
「乾杯。」
グラスだけが早々と音を立てて触れ合い、やがて、離れた。

13 :名無しって、書けない?:2019/01/26(土) 20:17:21.69 ID:2QyPccib0.net
>>12
間違えた・・・

14 :理佐ちゃんだから好きスレの人:2019/01/26(土) 20:17:55.27 ID:AplQpFh/a.net
>>11
出張ありがとうございますm(__)m

小説やんってダメ出ししときましたw

15 :ウィンドチャイムが鳴る頃 EP26:2019/01/26(土) 20:21:40.28 ID:2QyPccib0.net
「ふーん、そんなことがあったんだ」
彼女はそんなことを言い、髪を触った。
背後にはSGのギターが立てかけられている。
「わたしもね・・・」
彼女もまたなにかあったようでため息まじり窓の外を見た。
外は雨が降っており、すぐ側の木々が濁って見えない。
「なにかあったの?」
「彼ね、大学が忙しくて、それでね、別れるかも」
「言われたの。」
「直接?」
うん、と言いながら彼女は頷く。
「僕も別れるかも」
「そっか。」
「ねぇ、もしもさ。」
「なに?」
「別れたらわたしと付き合ってよ。」
「ほんとに言ってる?」
「ばーか嘘に決まってんじゃん。」
目を細めて彼女は笑った。
結局、僕は理佐と連絡を取らないまま、別れた。これでまたもとの薄暗い暮らしに戻ったのだった。

16 :ウィンドチャイムが鳴る頃 EP27:2019/01/26(土) 20:22:40.08 ID:2QyPccib0.net
4月。
「またクラス同じか」
体育館の隅に張り出された模造紙の活字を見て彼女は横でそう呟いた。
「なんでそんな嫌そうなの」
「嫌じゃないけど」
「ふーん」
「あっ、与田ちゃんも同じか」
「誰……?」
「ほら知らない?うちの真向かいに住んでる人」
「居たっけ」
「そこの子。で、ほんとに可愛いの、食べれそう」
「カニバリズム?」
彼女は細めで僕を睨みつけた。
時折、男より怖い眼差しをぶつける時がある。
「あ、ゆいちゃん」
その時僕らの間に背の小さな人が入り込んできた。
「与田ちゃん」
彼女はそう呼んで笑った。
「どうも」
与田ちゃんは音域の狭い、名刺替わりの特徴的な可愛らしい声でそう言って、ぺこりと頭を下げ僕をじっと見た。
瞳は純粋な興味に満ち満ちて濁りがなかった。
茶色がかった毛先が春の日を浴びて輝く。
おそらくかなり昔の記憶だから実際の5割増でだいぶ美化しているだろうが、だいたいそんな印象を抱いた。
「どうか・・・した?」
彼女が首を傾げる。
「いや・・・なんでも」
「あ、行きましょ」
与田ちゃんは彼女の手を引っ張る。
僕も慌ててついて行く。

そんな与田ちゃんがバス停のベンチで顔を覆って一人肩と声を震わし、人目もはばからず指の隙間から涙の雫を流していたのを見つけた時は心底驚いた。あれはたしかクラス替えの日から1ヶ月ほどたった5月の終わりごろの事だ。

17 :理佐ちゃんだから好きスレの人:2019/01/26(土) 20:27:34.46 ID:AplQpFh/a.net
千葉県さんもフランチャイズの出店どうですか?
小説は小説として推しメンで妄想するのも楽しいですよw

18 :千葉県だったりdion軍だったりする人:2019/01/26(土) 20:43:56.94 ID:k3/zP8m9d.net
>>17
やりたいのはやまやまですが如何せん飽きっぽいのでやめときます

19 :理佐ちゃんだから好きスレの人:2019/01/26(土) 22:26:24.47 ID:AplQpFh/a.net
>>18
気が向いたらよろしくお願いしますm(__)m

千葉県さんなら幹部待遇でお迎えしますw

20 :理佐ちゃんだから好きスレの人:2019/01/26(土) 22:46:50.29 ID:AplQpFh/a.net
【妄想】ゆいぽんだから好き【小説】
https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1548508906/

フランチャイズ2号店です

ゲリラ参戦よろしくですm(__)m

21 :オダオシ :2019/01/27(日) 17:53:32.86 ID:BpBEBKvW0.net
初夏

食堂で、朝食後に新聞を回し読みしている4人。
菜々香「美愉ちゃん、TV欄見せてよ。この経済欄と交換ね」
美愉「えーっ、読むとこないもん。銀行員の奈那さんと交換してよ」
奈那「ねぇ、この部屋暑くないですか?」
扇風機に当たりながら、奈那がぼやく。
菜々香「このアパート、エアコンがないのよ。大家が非常識だから」
美愉「仕方ないでしょ。家賃を滞納してる人がいるから、そんなもん買う余裕ないんですよ」
美愉は菜々香を睨みながら嫌味を言う。
麻衣「まあ慣れれば何とかなるわよ」
そういう麻衣は、足元を氷水で冷やしたりしている。
暑さに弱いのは皆同じだ。

奈那「そうだ美愉ちゃん、今月分の家賃払うね」
美愉「どうもどうも。奈那さんはきっちりしてるから助かります」
一緒に美愉の部屋に行って、家賃と引き換えに領収書を貰う。
美愉の部屋は、意外に女の子っぽい装飾品は少なく、事務用品や生活必需品がこまごまと揃っている。
まあ大家だから当然か。

机の上に、子供の頃の美愉と父親と思われる男性の写真が立てかけてある。
奈那「これ美愉ちゃんのお父さんでしょ?イケメンじゃない♪」
美愉「若いときの写真ですからね。今はもうオジサンですよ」
奈那「でも仲いいんでしょ?」
美愉「まあ二人きりの家族ですからね。お盆には多分帰ってくるはずです」

22 :オダオシ :2019/01/27(日) 18:22:36.55 ID:BpBEBKvW0.net
それから10日ほど経った夕方、外回りの仕事が終わって、そのまま家に直帰しようと思っていた奈那の携帯に、美愉から電話が掛かってきた。
美愉「奈那さん宛に何かエアコンが届いてるんですけど・・・」
奈那「あっ忘れてた、きょうだった・・・」
美愉「業者の人がこれから取り付けるそうなんですけど、奈那さんの部屋でいいんですか?」
奈那「いや、居間にしてください。私もすぐに帰るから」

一時間後、奈那が帰宅すると、居間が涼しかった。
美愉が説明書を見ながら、リモコンをいじっている。
美愉「お帰りなさい、電気屋さんはもう帰りましたよ。ねえ、これ全額奈那さんの支払いで良かったんですか?」
奈那「いいのよ。火災保険の補償金が振り込まれて、思ったより多かったんで、思い切って買っちゃった♪」
菜々香「助かるわー夏はここで仕事しようっと。でもいいの?ここにつけて」
奈那「私の部屋につけてもほとんどいないからね。ここがベストでしょ」
美愉「きょうの夕食は、奈那さんだけおかずを豪華にします♪」

美愉(メール)『お父さん、良いニュースです♪ついにコーポ欅にもエアコンが入りました。快適です。奈那さんが買ってくれたものなので、安心してください。お盆の帰省、待ってます

23 :オダオシ :2019/01/27(日) 19:52:39.74 ID:BpBEBKvW0.net
数日後、麻衣がお客を連れてきた。
陽菜「初めまして。深川さんの店で働いていた川後といいます」
深川「この子、寿退職するの。結構長期間うちで働いてくれて、感謝の意味で家でご馳走しようと思って。きょうは手巻き寿司パーティにしましょう。材料は買ってきたから」
美愉はあらかじめ聞いていたらしく、大量の酢飯が炊き上げてあった。
麻衣が寿司ネタと酒を買い込んできてある。

陽菜は最初は静かだったが、アルコールが入ると饒舌になり、面白い人だった。
陽菜「麻衣さんは本当に素敵な人で、本当はずっと一緒に働きたかったんですけど、結婚して地元に帰ることになって」
麻衣のたまに見せる天然ボケ話とかで盛り上がったりもしたが、陽菜は本当に麻衣のことが好きらしく、とうとう別れるのがつらいということで、泣きべそをかいてしまった。
美愉「わかります。麻衣さんは15年以上前からここに住んでくれて、私にとって実の姉以上の存在なんです」
麻衣「陽菜ちゃん、ありがとう。私も本当に寂しいのよ。でもあなたは、これからとっても幸せになれるんだから」

パーティがお開きになった後、奈那と菜々香は、陽菜に何気なく聞いてみた。
「ねえ陽菜さん、麻衣さんには彼氏とかいないんですか?あんなに綺麗で優しくて、すごくモテると思うんですけど」
陽菜「うーん、私も以前聞いてみたことがあるんですけど、はっきり否定はされずに、はぐらかされちゃいました」
奈那「まああんまり完璧過ぎると、かえって男が近づきにくいってこと、あるらしいからね」
菜々香「そういう意味では、奈那ちゃんは・・・」
奈那「何が言いたいのよ!とにかく陽菜さん、お幸せに♪」

24 :名無しって、書けない?:2019/01/28(月) 22:12:47.83 ID:Ijg5SahG0.net
>>23
まいまい懐かしい…
もう随分と昔のように感じますな

喜劇的と思いきや割と繊細なところもあっていいですね

25 :アクアリウム:2019/01/29(火) 02:19:53.73 ID:izu6n3eG0.net
高校の頃、夢とか規模とか未来とか。なんでそんな曖昧なものを信じていられたんだろう?
夜、眠りについて、朝、目が覚めるのは当たり前で、いつもほんのすこし、指先ひとつ分、届かない未来のはなしばかりしていた。
下敷きで生ぬるい風を巻き起こす。しかし涼をとることは出来ないので、何ら意味が無い。
夏の暑さを再確認するだけだ。
「あつーい」
小林由依は気だるそうに呟いた。
「暑いって言うの何回目?」
僕は椅子を後ろ向きにし、彼女の机で頬杖をつく。
「何回目だろ、数えてないや。」
そう言いながら制服のボタンをひとつ外す。
すると白く汗ばんだ首元が覗ける。
「にしても遅いなりっちゃん」
黒に近い、グリーンの廊下は薄暗くて靴音がやけに大きく響いてなんとなく怖かった。
「りっちゃんって呼ぶんだ」
「幼なじみだからね、なんでよ」
「別に、なんでもない」
由依はふっ、と窓の外へ目線をやる。
生徒達はぱらぱらと家路へ向かっていた。
「妬いてんの?」
「そんなんじゃないから。」
僕を一瞥してまた窓の外へ。
「ふーん。」
「おまたせ」
そこへりっちゃんが来た。
ちょうどいいタイミングだと思った。

「たまには漕いでよ」
アスファルトを蹴って自転車が二台、坂道を駆け出してゆく。背後には青空と蝉の声。
後ろを向いてりっちゃんが言う。
「だって前転んだじゃん俺」
「そうだけどさ。」
「それに危ないから止めろって言ったのりっちゃんでしょうに」
「そんなこと言ったっけ?」
「言ったよ」
「覚えてなーい」
りっちゃんはベルを鳴らして叫ぶ。
「仲いいね、二人。」
それを横目に由依が冷たく呟く。
「別に。」
りっちゃんは同じような口調で答える。
この2人は怒らすと怖い。
「ふーん。」
由依は重たいペダルを前傾姿勢に漕いで登り坂を進む。
「ほら、由依ちゃん怒っちゃった。」
りっちゃんは真剣そうに僕へ言った。
「彼女は大事にしなきゃ」
続けざまに言った。
「まあね」
反射熱で噎せるほど暑い。
夏は、まだ長い。

26 :名無しって、書けない?:2019/01/29(火) 02:39:59.32 ID:izu6n3eG0.net
ネタはあるのに飽きっぽいから続かない。

27 :理佐ちゃんを愛し理佐ちゃんに愛される予定の男:2019/01/29(火) 02:51:15.83 ID:2FrHe1mEa.net
>>26
俺のようにメンバーに惚れ込みなさい

自然と続くようになりますw

28 :オダオシ :2019/01/29(火) 03:10:35.79 ID:eIq9Y7Bm0.net
>>24
まいまい大好きでした。
いま、深夜ドラマの主演してるんですが、女優として頑張っていて嬉しいです。

29 :オダオシ :2019/01/29(火) 22:29:30.09 ID:eIq9Y7Bm0NIKU.net
美愉「ご苦労様です」
郵便局の配達員から現金書留を四通受け取る美愉。
差出人は長沢某となっている。部屋で開封すると、何と札束の山が!
美愉「何じゃこりゃ〜こんな札束初めて見た!」
美愉は札束を至福の表情で見つめていた。

奈那「ねえ、いいでしょナーコさん」
菜々香「うーん、どうしようかな」
奈那は、職場の来月の社内報の記事を書く当番だった。
テーマは、『私の交遊録』
要は、社外の友達紹介という企画だ。

奈那「私あまり東京に社外の友達いないのよ」
菜々香「麻衣さんとか美愉ちゃんでもいいじゃない」
奈那「二人とも年が離れてるし、友達っていうのもね」
菜々香「でも私、エロ漫画家だし」
奈那「そんなこと。自己表現する自立した女性って、皆の憧れの的なのよ」
菜々香「わかった。とりあえず2ショットの写真撮れば良いのね?」
奈那のヨイショが奏功したのもあったが、菜々香は純粋に奈那が友達扱いしてくれたのが、内心すごく嬉しかったのだ。

30 :オダオシ :2019/01/29(火) 22:33:51.95 ID:eIq9Y7Bm0NIKU.net
菜々香の部屋で、現金書留の封筒を開けて、札束の金額を勘定している美愉。200万ほどあるようだ。
菜々香は、同封された手紙を読んでいる。
『娘の菜々香が滞納している家賃を、これにて清算くださいますよう、お願い申し上げます』

菜々香「何でこんな勝手なことするかなぁ。だいたい、家賃滞納してること、何で知ってるのよ」
美愉「私が告げ口したわけじゃないですよ」
菜々香「わかってる。多分興信所かなんかで調べさせたのよ。そういう人なの」
美愉「というわけで、清算しますか」
美愉は嬉しそうだ。

菜々香「ちょっと待って!」
菜々香は美愉に土下座した。
美愉「な、何ですか・・・」
菜々香「確かに家賃、滞納してます。ものすごく迷惑掛けてます。でもこのお金だけは、あの人の援助だけは受けたくないの」
美愉「えっ何で・・・」
菜々香「悪いけど、これはそっくりあの人に返します。滞納してる分は、私が必ず働いて返しますから。お願い!」
美愉は札束を未練がましく見ながら、
「わかりましたよ・・・」
菜々香「美愉ちゃん、ありがとう」

31 :理佐ちゃんを愛し理佐ちゃんに愛される予定の男:2019/01/29(火) 22:47:12.51 ID:2FrHe1mEaNIKU.net
>>30
この作品の雰囲気好き

32 :名無しって、書けない?:2019/01/29(火) 22:48:55.06 ID:2FrHe1mEaNIKU.net
>>31
名前間違えたw
私、理佐ちゃんだから好きスレの人でした

33 :オダオシ :2019/01/29(火) 23:26:58.65 ID:eIq9Y7Bm0NIKU.net
>>31
>>32
いつもありがとうございます。
名前は言われなくてもわかりますよw

ちなみに、何日か前に、ゆいぽんだから好きスレに、こっそりお邪魔してます。
結局オダナナ目線でしか書けない私w

34 :理佐ちゃんだから好きスレの人:2019/01/29(火) 23:44:44.82 ID:2FrHe1mEaNIKU.net
>>33
やっぱりあれオダオシさんでしたかw

『オダナナだから好きスレ』を立てるさいはよろしくお願いしますw

35 :オダオシ :2019/01/30(水) 00:41:36.25 ID:oOlvnHH50.net
奈那と美愉は、麻衣の部屋に行って、菜々香の実家の事を知ってるか聞いてみた。
麻衣によると、菜々香が来たばかりの頃、二人で飲みに行って、酔った菜々香から聞いたことがあると言う。
菜々香の家は、山形のかなりの資産家なのだが、父親が事業を継がせようと勉強ばかり強いるのに反発し、とうとう家出同然に東京に出て来て漫画家になったらしい。
それから一度も実家には帰っていないようだ。
美愉「だからナーコさん、お金返しちゃったのね」
奈那「でも、美愉ちゃんもそれを許しちゃうなんて、お人好しね。銀行員には向いてないけど。でも可愛いよ♪」
麻衣「ナーコちゃんの漫画が大ヒットしたら、まとめて返してもらいましょう」
美愉「はい。でもいつの事になるやら・・・」

その夜、菜々香が居間に行くと、奈那のノートPCがテーブルに置いてあった。
奈那はお風呂に入っているようだ。
何気なくPCをのぞくと、社内報の原稿らしきものが書かれている。
いけないと思いながら、自分が題材なので、読んでしまった。

『長沢菜々香。女流漫画家というクリエイティブな仕事に携わる28歳。そんな彼女、実は正真正銘のお嬢様なのだ・・・』

36 :オダオシ :2019/01/30(水) 00:45:37.28 ID:oOlvnHH50.net
そこへ風呂から上がってきた奈那がやって来た。
奈那「あっ読んだの?別に構わないけどね・・・」
菜々香の不機嫌な顔が気になった。
奈那「何か気に入らないこと書きました?」
菜々香「私、エロ漫画家なんだよね。クリエイティブな仕事とか言われるようなシロモノじゃないわけ」
奈那「ああ、その事・・・」
菜々香「そりゃ父親は金持ちかもしれないけど、関係ないの。私はお嬢様でも何でもないし。家賃滞納するくらいの実力しかない漫画家なの!」
奈那「いや、そうかもしれないけど・・・」
菜々香「こんなキレイ事書かれるの、私すごく嫌だから、本当の事書いてよね。エロ漫画家で家賃滞納してるって」
奈那「人の事、そんな風に書けないわよ」
菜々香「私がいいって言ってるんだから、いいじゃない」
奈那「でも・・・」
菜々香「結局、奈那ちゃんが恥かくからでしょ?世間体が悪いから書けないんでしょ?」
奈那「・・・」
菜々香「何か裏切られたような気がするんだよね。結局うちの父親と同じ人間なんじゃん。最低だよ」
そう言い捨てて、菜々香は二階へ上がって行った。

37 :理佐ちゃんだから好きスレの人:2019/01/30(水) 21:56:12.97 ID:RT+eGe3ja.net
>>36
なーこちゃん・・・それはオダナナの優しさやで

38 :オダオシ :2019/02/01(金) 00:10:30.17 ID:M5YruuMv0.net
その日の晩は、珍しく涼しかったが、菜々香は寝苦しかった。
何であんなこと言っちゃったんだろう・・・
冷静に考えたら、奈那には悪気なんて微塵もないことくらい、わかるのに。

子供の頃から、少しひねくれ者と自覚していた菜々香には、学生時代、奈那のような真面目で素直な子の友達はいなかった。
無意識に菜々香の方から壁を作っていたからだろう
大人になって、会社勤めもしてない菜々香にとって、同世代の友人と呼べそうな女性は、奈那が久しぶりだった。
せっかく奈那とは、本当の友達になれると思ったのに。

いい年してあんな酷い言い方するから、友達できないし、家族とも上手くいかないんだろう。
父親のせいにばかりしてたが、自分にも責任はあるはずだ・・・
こんな自虐的なことばかり考えながら、浅い眠りにつく菜々香だった。

39 :スノードロップ:2019/02/01(金) 01:31:36.23 ID:TmH11xyb0.net
なんとなく思いついたフレーズをギターで口ずさむ。フレットの弦が指に細い跡を刻み、時計の針をメトロノームの代わりにして。
カーテンの隙間から見える夜の空には淡雪がちらつき始める頃。
「雪だ」
隣で黙ってページをめくり続けていた織田奈那は吐息の曇窓に呟く。
「ほんとだ」
わたしはギターをカーペットの上に置いて窓にちかづく。
「寒っ」
カラカラと、窓を開けると織田は腕をさすりながら、わたしに嫌そうな眼差しを向けている。
窓に映り込んでいたのだった。
吐き出した息は透明度が高い夜の中に溶ける。空はぴんとはった琴糸のようで、家々のオレンジ、黄色、青の灯がそのしたでゆるやかに街を彩る。
「窓を閉めてよ」
織田は背後から再びそう言った。
「ごめん。」
遮断された夜景。窓は寂しそうに体を滑らす。
本棚の真ん中。花瓶に生けられたスノードロップが外気に触れ、揺れていた。
変えたばかりの水が入ったその花瓶は曇っている。
「やっぱ、寒いな」
突然の雪に肌寒さを忘れていたわたしはいまさら腕を摩る。
「ほら、いったじゃん、風邪引くよ。」
ソファーに座り、またギターを手に取る。
織田もテーブルに伏せた本を手に取る。
しかしわたしは少し爪弾くだけで止めた。
「重い。」
活字から目を離さず、しかし、拒否することもなく織田は呟くよう。
羊を思わせる夜着はどれくらい暖かいのだろう。わたしはそんなことを考えながら織田の肩に寄りかかっていた。
遠くでレールを叩く列車の音。
「集中できない」
それでも肩を避けることなく、織田は息を吐いてスピンを挟む。
今度は織田がわたしの肩に寄りかかる。
「いい匂い」
「なんか嫌だ」
わたしは込み上げてくる笑いを最小限に抑えながら織田の頭をさっ、と撫でた。
やっぱりいまでも織田の髪は硬かった。

40 :オダオシ :2019/02/01(金) 07:59:39.25 ID:M5YruuMv0.net
>>39
dionさんの小説は、説明的な文章や会話が少なく、効果的な情景描写も利用して、読者の想像する余地を十分空けているところが素晴らしいなと思います。
この小説なんかヒロインの名前さえ出してないですね。
ゆいぽんを書かせたら、天下一品だと思います。

私なんか自分の文を読み返すと、説明がくどいなあといつも反省してしまいますw

41 :理佐ちゃんだから好きスレの人:2019/02/01(金) 10:42:28.19 ID:74PnkGQ4a.net
>>40
俺も千葉県さんの描写力めっちゃ羨ましいです
おそらく物語を客観的な視座から見る能力に長けているから引きの絵が見えてるんでしょうね

オダオシさんの書かれる物語もオダナナやメンを好きな視座から書かれてるので特有な熱があって好きです

42 :夏疾風:2019/02/01(金) 21:05:40.38 ID:v81BtDaFd.net
坂道を全力で走る。
スニーカーは擦れ、汗は腕にびっしり生え、しかしそれでも走る。
「気づいたら俺はなんとなく夏だった」
竹林が揺れ、錆び付いたガードレールが前後に踊り出す。空は大きな入道雲が青のなかを満たしている。
ギターの音で紛れてきえそうなボーカルを必死に耳で追いかけながら、ようやく坂道を抜ける。横断歩道。人っ子一人いないのに律儀に灯り続ける。ああいう人間になりたいと思った。
白線を踏んで渡った先に、彼女は居た。
「おそーい」
白いシャツが太陽を吸い込んで輝く。
塗り直した日焼け止めが香る。
自転車はとっくに鍵がかけられていた。
「電車行っちゃったじゃん!」
鬼軍曹と呼ばれる所以はこの恐ろしい眼差しにある。美しいからよりいっそう迫力が増す。
なるほど。ホームには南瓜色の列車が僕らを残して去ろうとしている。
「サイダーで許してあげる。」
もとよりそのつもりだったのだろう。
財布を取り出して自販機を目で追う。
僕のなかでもようやく、夏が始まろうとしていた。

43 :オダオシ :2019/02/02(土) 15:48:13.11 ID:MHBk9Z1S00202.net
美愉「二人とも何かあったんですか?
朝食時、菜々香と奈那の間に気まずい空気が流れているのを、美愉は感じていた。
こういう時頼りになる麻衣は、仕事の用とかで、早朝から外出している。
朝食後、菜々香は奈那に声を掛けようと思ったが、奈那は早々と仕事に出掛けてしまった。
暑い日の昼は、冷房の効いた居間で原稿を書くことの多い菜々香も、早々と自室に引っ込んだ。

美愉(メール)『お父さん、元気ですか? きょうのコーポ欅は静かです。仲の良い菜々香さんと奈那さんが喧嘩しちゃったみたいで。麻衣さん早く帰って来ないかなぁ』

その日の夜遅く、日付が変わろうかという時間に麻衣が帰ってきた。
美愉「お帰りなさい。遅くまで大変ですね」
麻衣「はい、お土産よ」
そう言って、麻衣は紙袋に入った和菓子を美愉に渡した。
美愉「あっ栗きんとん♪しかも普通のさつも芋多めの栗きんとんじゃなくて、栗メインの奴だ!どこ行って来たんですか?」
麻衣「えっと・・・浜松。知り合いの人が美味しいからって薦めてくれたの」
美愉「ありがとうございます。明日みんなで食べましょう♪」
麻衣「ところで、ダブルナナちゃんはまだ喧嘩してるの?」
美愉「はい・・・奈那さんもきょうは残業で夕食パスだったし、ほとんど顔を合わせてないみたいです」
麻衣「明日、話聞いてみるわ。美愉ちゃんももう寝なさい」
美愉「おやすみなさい」

あれ、麻衣さんは何で二人が喧嘩してるの知ってるんだろ?

44 :オダオシ :2019/02/02(土) 21:31:55.87 ID:MHBk9Z1S00202.net
麻衣「ふーん、そういう事だったのね」
菜々香「私は歪んだ人間なんです・・・」
菜々香の部屋で話を聞いている麻衣。

麻衣「ほんとに歪んでる人は、自分で歪んでることに気づかないと思うわ。むしろナーコちゃんは、自己評価が低過ぎるのよ」
菜々香「そんなことないと思いますけど・・・」
麻衣「他人の評価でなくて、ナーコちゃん自身は、自分の漫画はクリエイティブからは程遠いものだと思ってるの?」
菜々香「それは・・・」
麻衣「よくナーコちゃんは、編集者さんと言い争いしてるじゃない。プライド持って漫画描いてるからでしょ」
菜々香「でも結局、最後は妥協しちゃう事が多いし」
麻衣「それは仕事としてやってる以上、仕方ないところがあるわ。夢をしっかり持って作品作ってる人は、クリエイティブな仕事人よ。売れてるかどうかなんて関係ない」
菜々香「麻衣さん・・・」
麻衣「奈那ちゃんの事大好きなんでしょ?帰って来たら、一言でいいから声を掛けてあげなさい」

菜々香はうなずいた。
麻衣の前だと、何でこんなに素直になれるんだろう。
麻衣「美愉ちゃんも心配してるわよ」

45 :オダオシ :2019/02/02(土) 21:38:25.32 ID:MHBk9Z1S00202.net
その日の夕食に、久し振りに4人揃ったコーポ欅。
菜々香は目を伏せながら、奈那に対して、
「奈那ちゃん、この前は本当にごめん。あのね・・・」
それを遮るように奈那が、一冊の冊子を菜々香の前に差し出した。

奈那「そのいちばん最後のページを読んで見て」
表紙には<欅銀行社内報 8月号>と書かれている。

『私の友達』
=私が住んでいるアパートは、女性だけの下宿屋のようなレトロな住居。
=年下の可愛いしっかり者の大家さんが、毎日美味しいご飯を作ってくれます。
=もう15年以上ここに住んでいる、聖母のごとき優しい姉代わりの人もいます。
=そしてもう一人、私と一番年の近い、女流漫画家を友達として紹介します。
=その人は、女流漫画家というクリエイティブな仕事に携わる、28歳の長沢菜々香さん。
 
=この漫画家は、今のところほとんど売れていません。
=だからいつも金欠で、家賃も滞納気味です。
=私や大家さんと、口喧嘩することも少なくありません。
=実はこの文章を見せた時にも、彼女と言い争いしてしまいました。
=彼女は上に書いたクリエイティブな仕事という言い方が気に入らなかったみたいです。
=実際、締め切り近くにテンパってる時などは大変そうで、私などにはわからない苦労がたくさんあるのでしょう。
=Hなシーンを描くのに、エロビデオを見たりもしてるそうです(笑)
=今までこういうキャラの知り合いは、周りにほとんどいませんでした。
=でも回りくどい言い方で、私を元気付けてくれる優しい面も持ち合わせています。
=彼女は話せば話すほど、刺激を得ることのできる、大切な友達です。

=これからも末永くよろしくね。

46 :オダオシ :2019/02/02(土) 21:53:13.08 ID:MHBk9Z1S00202.net
美愉と麻衣も、横から覗き込んで一緒に読んでいた。
美愉「わぁ、私の事可愛いしっかり者だって。奈那さんだけコロッケ1個追加しまーす♪」
麻衣「聖母って・・・そんな事全然ないのに」
菜々香「いくら正直に書いてって言っても、ここまで赤裸々に書くかな・・・」
しかし菜々香は、奈那が本音を書いてくれた事に、嬉しそうな表情を見せている。

麻衣「これ見て、同僚の反応はどうだったの?」
奈那「全然ですよ。正直、社内報なんて真剣に読む人ほとんどいないですしね。私もですけど」
菜々香「奈那ちゃん、改めてこの前はごめん。あの・・・私の方こそ、今後もよろしく」

美愉「さーて、一件落着したところで、デザート出しますよ。きのう麻衣さんが、浜松に行った時のお土産です♪」
奈那「えっ、奈那さん浜松行ったんですか?私の出身地なんですよ♪」
麻衣「う、うん。仕事でね。私は磐田出身なんで、結構近くだね」
奈那「うわー美味しい♪でも、浜松駅でこんなお土産見たことないな。どこで買ったんですか?」
麻衣「あっ、えーと仕事先の方から貰ったのよ・・・」

47 :オダオシ :2019/02/02(土) 21:54:56.78 ID:MHBk9Z1S00202.net
IPの前の「アタマイタイー」って何だ?(笑)

48 :名無しって、書けない?:2019/02/03(日) 00:07:08.02 ID:1be+JtdqK.net
>>47
2月2日が頭痛の日らしいんです(笑)

49 :オダオシ :2019/02/03(日) 08:47:50.35 ID:ykEDeZT70.net
>>48
そういうことだったんですね。
誰が考えるんだろ?

50 :名無しって、書けない?:2019/02/03(日) 09:08:18.28 ID:1be+JtdqK.net
>>49
運営の誰かでしょうけどね(笑)
現在の5ch運営のトップであるJim氏の誕生日(11月20日)までこの欄で祝ったりしてますから

他にも毎月29日の午後に『ニククエ』になったり、わりとしょっちゅう変わります
『5ch ワッチョイ』とかでいくつか検索するとそれらの一覧も出てきますよ

51 :夢のような光景 1:2019/02/03(日) 15:05:20.07 ID:HRl8KHHt0.net
「もしも・・・」なんて言いかけて止めたのはそれなりの訳がある。それを説明しようとしたら、「どうしたの?」と顔を覗き込まれた。
僕は「いや、なんでもないんだ」とはぐらかす。
ブランコに乗っていた。春の、風が強い日に。
砂埃が舞って、持ち手が鉄臭い。指の腹は赤く凹む。
「東京って遠いんだろうね」
切ったばかりの髪が砂に巻き込まれて灰色になる。空も同じように、灰色。
短い黒髪がふたり並ぶとどちらが男だか分からない。よく言われたな、と思い出す。
「でも、新幹線で2時間くらいだよ」
「えぇ、遠いよ」
頭を軽く左右に振る。
ブランコは軋んで鎖が歌った。
彼女はしばらく同じような家が並ぶ、路地を見つめていた。僕は黙ってブランコを漕いだ。
「ねぇ、さっきさ」
音を立てて止まるブランコ。
彼女は口を開く。
途端、ポケットからグロスが落ちた。
僕はそれを拾い上げて渡す
「ありがと」
掠れた声が頭に降って来る。
「なんて言おうとしたの?」
「なんて、、」
僕は口を閉じる。
「気になるじゃん」
「言ったら笑うじゃん」
「わらわないよ」
ヘラヘラしながらこたえた。
彼女はいつもそうだ。
「もしも、君が好きな人を聞いてなかったら」
「聞いてなかったら?」
灰色の砂地が黒くなって行く。
雨だろうか。それにしては暖かい。
「泣かないでよ」
砂埃が舞った。言い訳が見つかった。
でもタイミングが悪かったと思い直した。

52 :夢のような光景 2:2019/02/03(日) 15:06:11.76 ID:HRl8KHHt0.net
「ここにいたの」
黒いスタンスミスとブルーのデニムが現れる。
姉だった。
「行くよ」
高い鼻柱に、肩までのブラウン。
冷たい声が僕を呼んだ。
「じゃあ」
ブランコを先に降りたのは僕だった。
「うん。」
顔を見わあせて彼女は少し笑った。
それだけでいいと思った。

「うーわ、凄い汚れたんだけど」
姉はスタンスミスのつま先を払って呟く。
2足の足音がコンクリートに吸い込まれる。
「結局、言わなかったんだ」
公園が見えなくなってから姉は息を吐いた。
「どうせもう会えないし」
「ふーん。まっ、良いけど」
泣いてたよ。
姉は風を切って駆けるバイクを煙たげに睨んでから言った。
気づかなかった?
姉は追い打ちをかけるように言った。
「誰が?」
「織田奈那が」
「ふーん」
僕は黙ってその言葉を咀嚼した。
家の前で姉は言った。
「引っ越しのトラック・・・渋滞に巻き込まれて来るの遅れてるんだって」
足を交差して腕を組む姉は驚くほど絵になった。
そのとき、不意に背中を急に叩かれる。
僕は黙って元の道を引き返した。

53 :夢のような光景 3:2019/02/03(日) 15:06:48.19 ID:HRl8KHHt0.net
「いかがでしたか?」
急に周辺が暗転した。
白衣を着た棒読みの女が俺を見下ろした。
「続きは?」
「ございません。」
「なんで?」
「売却人がお目覚めになったからです」
続きを見たい場合はぜひ、お客様の力で。
渡邉と書かれたネームプレートが蛍光灯に照らされて反射する。
海に潜る時のあのゴーグルみたいな機械を女に渡して立ち上がる。
歯医者みたいな椅子に俺は座っていた。
「で、いくらで買い取ってくれるの?夢は」
俺はちょうどいい採光のカウンターで女と向かい合って聞く。
「種類にもよります。売却人の方が見られた夢でもグレードがあって」
女は怪しげな、赤と金が多い行間の空いたチラシを引き出しから取り出した。
「いちばん良いのは仕事や学校で成功した夢です。」
「いとう・・・」
女は咳払いをする。
「余計なチャチャチャを入れないでください」
女はボールペンの先でチラシをリズミカルに叩いた。
「1回多いだろ。石井明美か。」
「たとえば、会社でプロジェクトが立ち上がってそれの主任になったとか、大きな取引を契約したとか、テストで学年1位になったとか、野球でホームラン打ったとか」
基本的に売却人の成功体験を頼りに見るしかない夢については高いです。
と女は言い添えた。
「つぎに高いのは有名人が登場する夢です。」
「有名人・・・例えば?」
「美空ひばり、手塚治虫、故人がいちばん人気でそのつぎが白石麻衣、平手友梨奈といったアイドル。」
「ふうん」
俺は腕を組んで天井を睨んだ。
これなら俺も見れるかも知れないと思ったからだ。
「ただしいま当社では買取をしておりません。」
「なんで?」
「所属事務所が夢への出演料を請求するようになったからです」
「そんなのあんの?」
「はい。」
「たかだか夢じゃん」
「しかし最近は夢の人気が加熱しまして、本人よりも夢の中の本人のほうがわりとなんでもやってくれるので、かえって夢の中の需要が高まって現実の本人の需要が低くなって」
「あっ、そう、生き残りに必死なのね」
「最近は夢出演のバーターもあるらしいです」
女はため息をついた。
「夢の買取は基本的にお客様の脳内クラウドにアクセスしてデータを吸い取って行いますので買取の際はお時間のあるときにお願いします。」
あいかわらず事務的な口調で女は言った。
「こちら、差し上げます」
夢を売るなら 入眠社 と書かれたチラシ。
「ああ、」
俺はそのチラシを畳んで懐に仕舞い、店を出た。
「ありがとうございました」
女の裏返るような声が背後に響いた。



54 :名無しって、書けない?:2019/02/03(日) 15:07:48.70 ID:HRl8KHHt0.net
チャチャチャのくだりはドラマ トリックから。
入眠社という名前は夢の遊眠社という劇団から。

55 :オダオシ :2019/02/03(日) 16:07:07.63 ID:ykEDeZT70.net
今までの連作の流れが、全て夢だったということなんですかね。
星新一のショートショートとか、「世にも奇妙な物語」なんかに、ありそうなシチュエーションですね。
面白かったです。

56 :オダオシ :2019/02/03(日) 20:23:35.28 ID:ykEDeZT70.net
数日後

奈那と麻衣が帰宅すると、菜々香がいなかった。
美愉「ちょっとした事件なんですよ」
奈那「何があったの?」
美愉「きょう昼間に、ナーコさんのご両親が、山形からいらしたんですよ」

娘の居所がわかったのと、菜々香から送金したお金が返却されてきたということで、心配した両親は、どうしても顔を合わせて話がしたくなり、上京したとのこと。
母親は上品なご婦人といった雰囲気。
父親も、菜々香が家出同然に飛び出した時に比べると、さすがに丸くなったようだというのは、菜々香の印象だ。
会話をこっそり聞いていた美愉によると、母は泣いていたらしい。
危惧していた修羅場のような事は起こらなかったが、漫画家を続けながらでもいいから、山形に帰って来て欲しいと言われていた

奈那「それで、いま菜々香ちゃんは何処?」
美愉「家族みんなで山形に帰りましたよ。いま新幹線の中だと思います」
奈那「えっ、まさかそのまま・・・」
美愉「違いますよ。とりあえず、ゆっくり話しようってことで一時帰省です」
奈那「そっか・・・でもナーコは、またここに帰って来ますよね?麻衣さん」
麻衣「戻ってくれないと困るわ。とりあえず、心の整理をさせてあげないと。それに家族仲直りできたことは、間違いなく喜ばしいことよ」

美愉「さて、夕食の支度しますね。きょうはすごいですよ!山形のお土産がありますからね」
麻衣「えっ何なの、さくらんぼとか?」
美愉「違いますよ。何と米沢牛のステーキです!!A5ランクだって♪」
奈那「A5って、A4より小さいんじゃない?」
美愉「紙の大きさじゃないんですよ。最高級の肉質なんです!」

57 :名無しって、書けない?:2019/02/03(日) 20:27:17.47 ID:ykEDeZT70.net
さらに数日後
蝉時雨真っ只中の季節。
菜々香は、まだ山形から帰って来ない。

ある平日の昼。店が定休日の麻衣は家で休んでいる。
猛暑が続いてるからなのか、ここ数日、珍しく麻衣に元気がないように見える。
美愉「麻衣さん、体調悪いんですか。夏バテですかね?」
麻衣「いや、大丈夫よ」
美愉「そうめん作ったので、食べましょう」
麻衣「うん、お皿並べるわね」

こうやって麻衣と二人で何気なく過ごす昼が、美愉は好きだ。
麻衣には、ずっとここにいてもらいたいと、改めて思う。

しかし、食後のアイスティを飲んでいた時だった。
麻衣が急に姿勢を正して、美愉に言った。
麻衣「私、いまの店たたむことにしたわ」
美愉「ええっ、たたんでどうするんですか?今度は普通のブティックに鞍替えするとか」
麻衣「静岡の実家に帰ろうかと思ってるの・・・」

「冗談はよしてよ」と、言うのを止めたのは、麻衣はいつも冗談を言うときは、それなりの表情をするのに、真剣な表情のままだったからだ。
美愉はしばらく言葉を失った。
美愉「そんなの嫌だから私・・・」
そう呟くと、美愉は家を飛び出した。

58 :オダオシ :2019/02/03(日) 20:31:12.41 ID:ykEDeZT70.net
仕事を終えた奈那は、帰宅途中にコーポ欅の近くの公園のベンチに、美愉が座っているのを見つけた。
奈那「美愉ちゃんどうしたの?蚊に刺されるよ」
美愉「奈那さん、聞いてください・・・」

奈那「ただいま」
麻衣「奈那ちゃんお帰り。あのね、美愉ちゃんが行方不明なのよ・・・」
奈那「公園にいましたよ。麻衣さんからの着信は無視してたみたいけど。入りなさいよ、大家なんだから」
美愉はふてくされた表情で後から入ってくる。

麻衣「美愉ちゃん、ご飯作っておいたから。とりあえず皆で食べようよ」
奈那「その前に奈那さん、どういうことか、詳しく説明してもらえませんか」
麻衣「うん、唐突過ぎてごめんね。ちょっと前から考えてたんだけど・・・」

「ただいまーーっ」
そこへ大きなキャリーバッグを引きずった菜々香が帰ってきた。
奈那「ナーコ!待ってたよ。急に帰省しちゃうんだもん。びっくりしたよ」
美愉も笑顔を見せる。

麻衣「ナーコちゃん、これからもここに住んでくれるんだよね」
菜々香「もちろんよ。ここが私の住処だもん。これからもここで漫画をどんどん描いていくつもり」
美愉「ご両親も納得してくれたんですね」
菜々香「お父さんが、私の漫画が載ってる雑誌、毎週買っててくれてたの。あれは嬉しかった」
奈那「えっ、あのエロ・・・」

菜々香は咳払いをして奈那を軽く睨みながら、
菜々香「これからは、ちょくちょく実家に帰る事にするけど、みんなこれからもよろしくね」
麻衣「私の話は後にしよう。まずはせっかく作ったんだから、私の自信作のオムライス食べてよ。ナーコちゃんも大好きでしょ♪」

59 :オダオシ :2019/02/03(日) 20:36:30.12 ID:ykEDeZT70.net
菜々香「ちょっと、どういう事!?」
麻衣の話を聞いて、菜々香も驚いている。

美愉は、物心がついた時には、母親がいなかった。
美愉が小4の時に、コーポ欅に麻衣がやってきた。
他にも美愉が懐いた住民はいたが、だいたい数年で出て行ってしまうのは、仕方のないことだ。
しかし、麻衣はもう15年もここに住んでいて、美愉にとっては、父親以上に長く一緒に住んでいる家族以上の存在と言える。
麻衣が出て行くとなると、美愉の受けるショックは計り知れないのは、想像に難くない。

奈那「もしかしたら、結婚するとか! それだったら許せるんだけど」
麻衣「いや、そういうわけじゃ・・・・」
美愉「本当に麻衣さんが幸せになるのなら、いいんですけどね」
麻衣「今すぐに出て行くってわけじゃないし、そんなに深刻にならないで」

美愉(メール)『お父さん、麻衣さんがコーポ欅を出て行くって言ってます。みんなで説得してるんだけど・・・どうしたらいいのかな』

60 :名無しって、書けない?:2019/02/04(月) 21:10:50.59 ID:7egfJ2Si0.net
前スレがdat落ちしていましたという報告を兼ねての保守

61 :理佐の写真集は家宝国宝世界遺産:2019/02/04(月) 23:23:54.95 ID:EyG5oBeva.net
>>59
理佐ちゃんの写真集発売にかまけてる間に話がとんでもないことに!?

>>60
前スレも天寿を全うしましたね、南無!

62 :理佐ちゃんひとりでSR出来て偉かった:2019/02/05(火) 14:15:00.58 ID:uHuaNmmua.net
>>61
名前欄の理佐ちゃんが畏れ多いことに理佐と呼び捨てになってしまった・・・

63 :名無しって、書けない?:2019/02/06(水) 02:05:28.15 ID:CJg+zQaH0.net
「あら、弟さんもすっかり大きくなって」
祖母の姉の旦那の妹の娘という近いんだか遠いんだか分からない親戚に話しかけられ僕は少々、いや大分、困惑した。それは確か冬の夕暮れ時だった。
「いや・・・どうも」
買い物袋を握り直して頭を下げる
刹那に夕日が目に入って、それがしばらく残像になって視界の隅をちらつく。
「お姉ちゃんはもう高校?」
40すぎの親戚はいつまで経っても、僕らへの子供扱いを止めない。
「いや、もう大学・・・」
親戚の当たり障りのない、本当に聞きたいのか?と思うようなくだらない質問。僕の隣にいる、彼女は小声で答えるが、聞こえないのか、親戚は黙ってこくり、こくり、頷くだけである。
「じゃあ、お母さんによろしくね」
その親戚に開放されたのは青信号を3回ほど見逃して後の事だった。
「また弟って言われたね、お兄ちゃん。」
彼女はお兄ちゃん。というところを強く言った。笑いながら。
「うるさいな。理佐が大人っぽいからだ」
そう彼女は妹だ。
妹は大人びた風貌が幸いしたのか災いしたのか、よく歳を勘違いされる。
「そうかな」
理佐は満更でもない顔で頬を赤くする。
高架線の下と坂道を抜けて、家へたどり着くころにはもうとっくに日が暮れている。
「ただいま」とリビングに行くと鰹だしの香りと包丁のリズミカルな音。
「おかえり」と母の声がして、暮らしの灯が点る。

なんてCMあったら良いなと思う

64 :オダオシ :2019/02/06(水) 23:41:33.53 ID:tN+emJuR0.net
全くどうでもいい話なんですが、きょうやってた相棒の登場人物の女性の一人が、
「小田麻衣」でしたw
思わず肩入れして見てしまった・・・
-----------------

数日後の土曜日

この日は猛暑日だった。
奈那は庭で水撒きをしていた。遠くのアスファルトには陽炎が見える。
逃げ水というのかもしれない。
逃げ水は、追っかけても離れていくが、その向こう側から歩いてくる男性の姿は、蜃気楼ではないようだ。
その男性は、コーポ欅の敷地に入ってきた。

奈那は、その中年の男性をどこかで見たことがある気がする。
奈那「あの、何かうちにご用でしょうか?」
男性は、奈那をじっと見つめると、ニコっと笑った。
「もしかして、織田さん?」
奈那「・・・あの、美愉ちゃんのお父様、つまりここのオーナーさんですか?」

5分後、仕事で不在の麻衣以外の住人が集まって、居間でくつろいでいる。
美愉「お父さん!お帰りなさい♪」
菜々香「鈴本さん、お久しぶりです!全然変わらないっていうか、何か前より若返ったように見えますよ!」
鈴本父「みんな元気そうで何よりだよ。しかし、ここにもクーラーがついたとはね。織田さんが買ってくれたんだって?ありがとう。助かったよ」

美愉が切ってくれたスイカを食べながら、各人の近況報告などで、挨拶を交わした4人だった。
美愉「お父さん、メールで言った、麻衣さんの事なんだけど・・・」
鈴本父「ああ、ちょっとお前の部屋で話をしよう」

65 :Loveletter(s):2019/02/08(金) 21:52:04.04 ID:NF/kUv06d.net
「ラブレターを書いて下さい。」
僕が彼女にそう切り出したのは、2020の東京オリンピックから10年という年の事だった。
なんでオリンピックなんて出したかというと、当時、このオリンピックに纏わる記事を書いていたから。タイトルは覚えていない。ただ、〆切寸前で焦っていた気がする。
「ラブレター?」
ショートカットの黒い前髪を指で弄んで頭を小さく振る。彼女は今年いくつだろう。と一瞬考えたが止めた。
「誰にですか?」
そう訊かれたからだ。
「……自分です。」
僕が慌ててそう答えると、水玉の滴ったアイスコーヒーの液面を彼女はじっと見て黙りこむ。
紀尾井町の喫茶店は午後3時。
「わかりました。」
彼女はそう答えて微笑んだ。
ちょうど、冬から春に差し掛かる頃の弱々しい陽の光みたいに。
「でも何時の自分に書けばいいんだろう……」
昔は大人びた。と言われたが今はすっかり年相応になったあの低く綺麗な声が僕にまた訊く。
「平手さんのお好きなように。」
僕はそう言って残りのコーヒーを啜った。
その跡には茶色い三日月が浮かんでいる。
「決めてくれませんか?」
まもなく彼女はそう言って僕を見る。
その瞳は口では語れない、何かを物語っているような気がした。
「決める?」
「どの時期のわたしに書いて欲しいか。」
どのって、そう口ごもって、僕は窓を見るがしかし答えは浮かんでこない。
「強いて言えば、黒い羊・・・の頃?」
僕がそう言ったのには特に理由はない。
人がまばらな喫茶店はフォルクローレが流れている。
彼女は黒い羊と噛み締めるように呟いた。
「あんまり覚えてないなぁ」
真夏の強い日差しが窓を刺すように、彼女は笑った。
「宜しく御願いします。」
この会話の最後に彼女はそう言った。
それだけが印象に残っていた。

66 :Loveletter(s):2019/02/08(金) 21:52:46.53 ID:NF/kUv06d.net
覚えていないわたしへのラブレター

じつはあのグループにいた事をわたしは全く覚えていません。居た事は覚えているんだけど、細かいところ、たとえばあの頃好きだった人、とか本当は懐かしくてたまらなくなるはずの思い出がまったく無いんです。
だからあの頃のわたしへのラブレターと言われたとき本当に困っちゃって。黒い羊って言われても何がなんだか全く覚えていなくて呆れました、もちろん自分に。
そんなときにあの人と会ったんです。校長。ラジオの学校の。やっぱりわたしなんにも覚えていなくて、半蔵門線のホームでおお、平手!と言われた時、ちょっと、おかしな人なのかな?と思ってしまいました。っていうのは冗談。
あの、黒い羊の頃のわたし、はその校長に教えて貰いました。それでようやく描き始めました、深夜2時に。夜更かしの癖は抜けないみたい。
「なんていうのかな、凄いオーラだった。」
スタバで校長にわたしのこと聞いたらまず最初にそう言われた。
「オーラ?って何?」
「お前ほんとなんも変わらねえな、ちょっとは勉強しろよ」
と校長は笑いながら教えてくれた。
ともかくその当時は物凄く黒い、というか負の?オーラを身にまとってたみたいです。
「もちろんそれがあって黒い羊とかアンビバレントがこうなんつーか良い作品になったんだけど。」
校長はそう言ってからひと区切りして、またこう言った。
「あの頃のお前はさぁ、なんかちょっと考えたすぎだなって思ってた。いやもちろんさ15とかでずっとセンターで苦労も多かったんだだろうけどさ、こう気楽に、女子クラスのときみたいなさ、そんな笑顔が見たいなって思ってたな。俺はな。」
そう言われて色々思い出した。
本当はアイドルらしい楽曲をやりたかったほかのメンバーに申し訳ないって思ってたりしたことも、そう思う自分になぜか腹が立ったことも。そしてどこか機械的な説教臭い大人が嫌いだったことも。
思い出していま、あの頃のわたしに言いたいことがひとつある。
それは大人の言ってることは意外と正しいということ。たぶんあの頃のわたしは鼻で笑うと思うけど。絶対そう。大人が言ってることはただしい。
そしていま自分のことを肯定してくれる大人を信じ過ぎない方がいい。
これも言いたい。
ラブレターじゃなくなってきたから、最後にラブレターらしく。
なんだかんだ、あったけど今までの自分の決めたことを間違いだと思ったことはひとつもないし、そうして生きてきたわたしは、わたしのことが好きだ。
あの頃のわたしがわたしのことを好きか嫌いか分からないけど。
でも、今、わたしはわたしのことが好きだ。
ラブレターにはなってないっぽいけど、
この辺で。
あ、最後に。勉強はした方がいいかも。

67 :名無しって、書けない?:2019/02/08(金) 21:53:33.74 ID:NF/kUv06d.net
文春文庫から刊行されているラヴレターズを参考に。

68 :千葉県だったりdion軍だったりする人:2019/02/08(金) 21:55:02.05 ID:NF/kUv06d.net
保守がてら投稿してみました

69 :オダオシ :2019/02/09(土) 16:41:23.82 ID:H5uYOYcp0.net
1時間くらい経ってから、部屋から父親だけが出てきた。
鈴本父「さて、きょうは私が夕食を作るよ。久しぶりだなあ、料理するのは」
奈那「料理できるんですか?」
鈴本父「美愉に料理を仕込んだのは、私なんだよ。楽しみにしててくれ」
菜々香「正月に、おせち料理作ってもらって、美味しかったから期待できるわよ」
奈那「美愉ちゃんは何してるんだろ?」
鈴本父「美愉は疲れたみたいで、寝ているんだよ。ご飯出来るまで寝かせてやってくれ」

1時間後、夏野菜のカレーとポテトサラダが出来上がった頃、ちょうどいいタイミングで、麻衣が帰って来た。
鈴本父「お帰り、麻衣ちゃん・・・」
麻衣はオーナーの姿を見て、呆気にとられている。
麻衣「・・・お帰りなさい」

そこへ美愉が起きて来た。なぜか麻衣の方を睨んでいる。
美愉が麻衣に、こんな表情を見せるのは珍しい。
そして麻衣は、美愉から目を逸らすように自室に篭ってしまった。
オーナーは、それを追いかけて二階に上がっていく。

奈那「どうしたの?あの二人」
菜々香「雰囲気が何かおかしいよね。美愉ちゃん、何か知ってるんじゃない?」
しばらく黙りこんでいた美愉だったが、意を決したように、語り出した。

美愉「私もさっきお父さんから聞いたんですけど、お父さんと麻衣さん、だいぶ前からひそかにつき合ってたんです。遠距離恋愛ってやつ?麻衣さんがたまに名古屋まで行ってたみたい」
菜々香「全然気が付かなかったよ。いつからなんだろ?」
奈那「ちょっと歳離れてるけど、お似合いかもね」
菜々香「美愉ちゃんは、正直どう思ってるの?前から、麻衣さんみたいなお姉さんが欲しいって言ってたよね」
美愉「そうですけど、実際お母さんになるかもしれないと思ったら、複雑で・・・」
菜々香「お母さんってまさか・・・」

美愉の父は、麻衣にプロポーズしていたらしい。
それで、ここを引き払って美愉と3人で名古屋で暮らそうと提案してきたのだ。
麻衣は、美愉からコーポ欅を奪うことになるのではないかと逡巡して悩んでいた。

奈那「えっ、それって・・・」
菜々香「コーポ欅を閉めるってっこと?」

70 :オダオシ :2019/02/09(土) 16:49:37.82 ID:H5uYOYcp0.net
菜々香「ここが無くなったら私困る。ここでしか、漫画描けない体質になっちゃってるから」
奈那「私だって、まだ入ったばかりなのに。それにしても、二人ともなかなか下りてこないね」
菜々香「まさかとは思うけど、二人で駆け落ちしたとか・・・」
美愉は、麻衣の部屋に駆け上がって行った。
菜々香「美愉ちゃん!冗談よ!!」

美愉は麻衣の部屋のドアを開けた。
美愉「麻衣さん、聞いて!お父さんも」
鈴本父「何だ美愉?」

美愉「私はお父さんのことが大好き。そして麻衣さんのことも大好きよ」
麻衣「美愉ちゃん・・・」
美愉「私、これからすごく贅沢を言うね」
美愉「お父さん、麻衣さんと結婚して、麻衣さんを幸せにしてあげて。そして麻衣さんも、お父さんをよろしくお願いします」
美愉「それともう一つ、私頑張るから、このコーポ欅をこれからも存続したいです」
美愉「麻衣さんが昔、私に言ってくれて感動した言葉があるんです」
麻衣「何だっけ?」
美愉「心の芯に刺さるものは飽きるどころか、どんどん好きになっていく」
麻衣「ああ、昔劇団にいた頃の印象深いセリフだったね・・・」
美愉にとって、コーポ欅はその域に達する存在だった。

美愉「この願い、全部叶えるの、無理かな?お父さん・・・」
鈴本父「子供だと思っていたが、いつの間にか成長するものだな・・・わかったよ美愉。コーポ欅はこれからもよろしく頼む」

ドアの外で盗み聞きしていた菜々香と奈那は、笑顔でガッツポーズしている。
それから奈那は、部屋の中に向かって、叫んだ
「せっかくのカレーが冷める前に、みんなで食べましょう♪」
美愉「いこっ、お父さん、そしてママ♪」



71 :理佐ちゃんだから好きスレの人:2019/02/09(土) 17:16:25.70 ID:/24yUOBla.net
>>70
長編小説無事に完結御苦労様でありますm(__)m

最後までハートフルな作風で心地よい後味でした

72 :オダオシ :2019/02/09(土) 18:35:23.06 ID:H5uYOYcp0.net
>>71
ありがとうございます。
好きなメンバーばかり集めて、好き勝手に書かせていただきました。
理佐ちゃんの得意な、妄想の長編版かもしれません。

73 :オダオシ :2019/02/10(日) 14:10:27.17 ID:cBZy332V0.net
寺の拝観をすませてスニーカーを履こうとしゃがんだ姿勢で、宮田愛萌は声のする方へ首を上げた。
そして、受付で拝観料を払っている女性の顔を見て、おやおや、と思った。
旅先で知人に会ったような気分、というところだが、実は相手は全くの他人である。
どこの誰なのかも知らないし、言葉を交わしたこともない。
それなのに、愛萌がその人物を見て、あれ?と思ったのは、その人の姿を見るのが、きょう三度目だったからである。

一度目は、朝、駅で見かけた。
駅前から出るバスを待って、愛萌ががベンチに座っていると、その人は大きな荷物をコインロッカーに入れていた。
しばらくして、最初に見物した地方の古い名士の家の庭園で、その人にまた出会った。
愛萌が、入れてもらった抹茶を頂いていると、ふっとその女性が視界に入ったのだ。
気ままに一人旅を楽しんでる、という様子の女性は、庭園の写真を撮ったりしている。
もちろん、そこにいたのは、その女性と愛萌だけではない。
平日ですいてはいたが、他にも観光客はいた。
だから、特にその女性に声を掛けるわけでもなく、朝、駅にいた人だなと思っただけである。

愛萌は流行りの言葉でいうと『御朱印ガール』で、神社や仏閣巡りが趣味の、真面目な女子大生である。
友人や家族と賑やかに出かける時もあるが、この日は気楽な一人旅だ。
そば屋で昼食を済ませた後、その街を出て、山の中に入った。
途中の土産店で、鈴型の安全祈願のお守りの形が可愛かったので、購入して首につける。
バスに1時間ほど揺られて、珍しい朱塗りの十二面観音があるという山寺を訪ねたのである。
そして、その寺の近くにある、庭の牡丹が有名というもっと小さな寺へ、20分ほど歩いてやって来たのだった。
そこで、例の女性の姿をまた見かけたというわけである。

74 :岬の旅人 オダオシ :2019/02/10(日) 14:37:16.16 ID:cBZy332V0.net
今回は、いつもと違うテイストにチャレンジしてみました。
昔ちょっと読んだ短編を参考にしてます。
オダナナは出てきませんw

75 :岬の旅人−2 オダオシ :2019/02/10(日) 15:22:39.99 ID:cBZy332V0.net
その女性は30代前半くらいか。
割と長身の美人で、旅に出て気分が開放されるのか、派手な色のブルゾンを着ている。
そのせいで、なおさら目につく。
まあ旅先で、同じ人を何度も見かけることは、珍しくない。
特にこういうひなびた観光地では、訪ねる所がだいたい同じであることが多いからだ。
だから愛萌は、今度は山から海辺へ出て、断崖絶壁で有名な岬の景勝地へ来た時に、そこでもあの派手な青いブルゾンの女性の姿を見ても、驚きはしなかった。
この海岸は、旅人が見ておく基本コースに入っていたからである。

その崖は、海から垂直に切り立っていて、先の方へ進むと思わず足がすくむほどのものだった。
安全用の柵が作られているわけではなく、足を踏み外せば十数メートル下の海へもろに叩きつけられ、即死するであろう。
あちこちに、『生きていれば何とかなる』『早まるな』などと、投身自殺を戒める文句を書いた看板が立っている。
大した景観だが、高所恐怖症の愛萌にとっては、これ以上近づきたくない所であった。
一通り見物して、愛萌はバス停に戻った。
平日のせいと、もう夕方になってなっているせいで、人影はほとんどない。
バスの時刻表を見て愛萌は、乗ろうとしているバスが、ここへ来る最終便だということを知った。
それに乗らなければ、こんな寂しいところで身動きが取れなくなる。そのバスはあと20分ほどで来る。
そこまで考えて愛萌は、ふと心配になった。
あの青いブルゾンの女性のことである。
のんびりと景色を見ていて、バスに乗り遅れたら大変な事になるぞと忠告してあげたくなった。

結局、愛萌はもう一度断崖のところへ足を運んだ。
何度も顔を合わせた旅行者同士としての、親切心である。
愛萌は、お人好しでちょっとお節介と、友達から言われる性格ような性格であった。
だが、どこにもあの青いブルゾン女性は見当たらなかった。
他にみるべきところがあるわけでもないのに。
あの女性はどこに消えてしまったのか?
急にドキドキして、愛萌はこわごわ海面を見下ろしたが、何も発見できなかった。
足を滑らせたのか、それともまさか・・・

76 :岬の旅人−3 オダオシ :2019/02/10(日) 15:45:54.36 ID:cBZy332V0.net
おろおろと愛萌は、もう一度バス停のところへ戻った。
そこにも彼女はおらず、別の、チェックのシャツを着た40歳くらいの男性がベンチに座っていただけである。
愛萌「あの、青いブルゾンを着た女性を見かけませんでしたか?」
シャツの男は知らないと言った。
愛萌は事情を説明した。
それは大変だということで、その男も一緒にもう一度断崖へ行く。
男「知ってる人なの?」
愛萌「そうじゃなくて、今日一日、何度も見かけただけの人なんですが」
そう答えると、シャツの男は不思議そうな顔をして一歩近寄ってきた。
愛萌の背後は、切り立った崖である。
男「変だね。知ってる人物でもないのに、妙に印象に残るってことがあるんだね。その反対に、まるで記憶に残らない人間というのもいる」
愛萌「えっ?」
男「まあそれは、私の職業上必要な素養なんだけどね」
愛萌「何の話ですか?」
男「私だって実は、今日一日で何度もあなたに出くわしてるんだよ。だってブルゾンの女のあとを、ずっとつけていたからね」
男は不気味にニヤリと笑った。
男「ようやく、ここで目的の仕事を果たしたとホッとしていたら、あんたが彼女のことを気にかけていたというわけだ」
愛萌は、やっと事態を飲み込んだ。
男「私のことを覚えていないとは言っても、こんな風に騒ぎになってしまったら、私のやったことがバレてしまうからね」
男「他人のことなんか気にかけている、お前が悪いんだよ」
男は残忍な口調で言いながら、いきなり愛萌の上体を崖の方へ押してきた。

しかし、男はそこで体のバランスを崩した。
いつの間にか地面に落ちていた、愛萌の丸い鈴型のお守りを、踏んでしまったのだ。
その隙に愛萌はうまく体を入れ替え、横から思い切り男を突き飛ばした。
殺し屋は悲鳴を上げながら、崖下に墜落していった。



77 :犬が三毛の一族:2019/02/10(日) 20:53:57.45 ID:AJnZ/XW3d.net
もしも犬神家の一族を欅ちゃんがやったら

「お爺様、ご遺言は、ご遺言は?」
犬神なーこが今にも死にそうな犬神家の家長、犬神佐兵衛翁を揺さぶる。
「揺すりすぎだろ。逆に死んでしまう。」
隣にいる使用人澤部が声をはりあげて言う。
確かに、翁はなーこに揺さぶられ布団がはだけ、苦悶の表情を浮かべる。
大きな畳敷きの広間。
本家の違ってどこかちんちくりんな一同が翁を覗き込む。やがて。
顎の長い翁が自分の対面にいる小太りの弁護士、のりを指差す。
「確かに、遺言状ならわたくしがお預かりしております。なんならいまから開けましょうか?なーんつって、まだダメだろってね」
すると翁が起き上がって、
「お前がそんなんだと俺が死ねねーじゃねーか」
と怒鳴る。

そんな犬が三毛の一族。

78 :名無しって、書けない?:2019/02/10(日) 20:54:26.18 ID:90SHmzVk0.net
続きはありません。

79 :ただいま理佐ちゃんの写真集の為にTwitter強化中:2019/02/11(月) 18:48:48.78 ID:tsADp6dLa.net
>>76
まなもちゃんさりげなく殺人w

>>78
続かんのか〜いw

80 :犬が三毛の一族2:2019/02/11(月) 20:26:00.72 ID:MQF+FSDG0.net
金田一は出しておきたい笑


障子が開く、乾いた音。
一同がてんでんバラバラ、音の方を見る。
すると、御釜帽に和装の女が入ってきて、
「あれ?土田さ、いや、佐兵衛翁が生きてる?」
と言う。
「まだ、出てくるのが早い、金田一」
猿造ポジションの澤部が金田一てちこに言う。
「お呼びでない?こりゃまた失敬。」
パシンと障子を閉めて、出てゆく金田一。
「ギャグが古いだろ、誰が分かるんだ」
と顎の長い佐兵衛翁が怒鳴る。
こうしてぐだぐたになる犬神家の一族。

場面は変わって、旅館で寛ぐ、金田一てちこ。
本来ならここで湖で沈もうもしているボートを見つけるが犬神家の一族郎党がぐだぐたしているためボートだけが浮かんでいる。
「出番まだかな」
肘掛け椅子に座りながらぽつりと呟く絵になる金田一てちこ。
一体犬神家の一同はどうなる?!

81 :犬が三毛の一族3:2019/02/11(月) 20:26:46.00 ID:MQF+FSDG0.net
「遺言状書き換えようかなぁ」
佐兵衛翁はそう言いながら、弁護士のりを見る。
「遺言状書き換えたらストーリーめちゃくちゃになるでしょう」
澤部に言われて、つまんなそうに布団に潜る
佐兵衛翁。
「ご臨終です」
傍らに控える医師、渡邉理佐が棒読みで告げる。
「どんなタイミング?ここで死ぬかね」
佐兵衛翁はすっかり冷たくなっている。
「えっ、死んでんの?死んでんの?」
退屈のあまりカップラーメンを食べていた、次女きょんこが佐兵衛翁をじっと見る。
「えっ、美味しそう」
無駄に美味しそうな香りを放つ、ラーメンに
佐兵衛翁そっちのけな長女なーこ。
「あっ、食べます?」
カップラーメンを差し出す次女きょんこ。
「良いの?」
遠慮なくラーメンを食べ出すなーこ。
「もう犬神家関係なくなっちゃった」
と澤部がツッコミ、金田一もまったく出番なく、誰も死なない犬神家の一族のエンドロールが流れる。

おわり

82 :理佐ちゃんだから好きスレの人:2019/02/12(火) 23:35:08.94 ID:suYgyLxXa.net
>>81
理佐ちゃん棒読みw

83 :名無しって、書けない?:2019/02/13(水) 01:24:15.60 ID:7qrQATSW0.net
2018-2-13にこのスレに書き込み始めたので
今日でようやく1年です

84 :名無しって、書けない?:2019/02/13(水) 06:30:30.66 ID:JKoYQB0yK.net
>>83
おめでとうございます
まさに小説スレ復興の立役者で感謝しきれないっすm(_ _)m

そういえば初代スレは2017年2月17日に立ったので間もなく2周年ですね

85 :理佐ちゃんの写真集発売につきTwitter強化中:2019/02/13(水) 06:57:42.42 ID:yR6otlFda.net
>>83
1周年おめでとうございます⤴

千葉県さんのお陰で徐々に小説スレから撤退して理佐ちゃんだから好きスレとTwitterに移行出来ていますm(__)m


>>84
もう2年ですか、早いものですね

その頃はまだ小説スレの存在すら知らずに理佐ちゃんの応援スレで長編ポエマーとか妄想庭とか呼ばれてたんだよなぁ

86 :海が見える明日(7):2019/02/13(水) 10:03:12.62 ID:7qrQATSW0.net
「はい、これ。」
週明けの月曜日。
彼女が僕にあの本を渡してくれた。
Hidamari。全三巻による青春小説。
装丁は漫画家の長沢菜々香とイラストレーターの小林由依が手がけている。
2人はどうやら知り合いらしいが詳しいことはわからない。
「ありがとうございます」
僕はその3冊を受け取って彼女を見た。
「それ面白いからさ」
つんのめるように彼女は言った。
「いつ返せば」
「んーいつでも良いよ 殆ど毎日ここに居るし」
彼女はくしゃっとした顔でわらった。
彼女に惹かれたのはそのときだ。
それこそ貪るように真夜中までその本を読んだ。
物語は”僕”がとある幼なじみの女の子に惹かれるものの三角関係になるというものだ。
しかしこれは大まかな内容であって中はもう少し複雑に出来ている。
途中で舞台ががらっとかわったり一筋縄ではいかない。
さらにはこの物語は懐かしさがあった。
たぶんこれを僕は1日だらずで読み終えたと思う。
読み終えた時外が白んでいたから。
「えっ、もう読み終わったの」
本が好きなものの習性なのか。
読み終えた本の感想をすぐに共有したくなってあけてすぐ僕は図書館に行った。

87 :名無しって、書けない?:2019/02/13(水) 10:05:18.70 ID:7qrQATSW0.net
>>84
勿体ないお言葉恐縮です
そうでした、初代スレから2年です
>>85
僕もAmebaブログへ移行しつつあるのでだれもいなくなるのではと戦々恐々です

88 :Swing journal New York:2019/02/13(水) 10:17:02.68 ID:7qrQATSW0.net
光と喧騒に溢れて眩しいばかりのニューヨークで孤独を覚えるのはなぜだろう。
それはいくちゃんがいずれ遠くにいってしまうと思ったからだろうか。
「ほら、おいてっちゃうぞ」
ワインレッドのコートを、はためかせいくちゃんは僕の方を振り返って手招きする。
「わかった、わかった。」
小走りでいくちゃんの隣へ向かう。
「もうぼんやりしないの。」
はじめて目にしたばかりの光景に紅潮する頬を膨らませいくちゃんは言う。
「ほら、手、繋いで。」
ご機嫌な口調で細い腕を差し出す。
僕はそのすぐに折れてしまいそうな腕の先にある、長く美しい手を握って二人の間を縮める。
すると、大人びたミントの香水が仄かに匂って、普段のいくちゃんとはちょっと違うんじゃないかと思い始める。
空港を出て、アメリカへ降りた時に頭へ過ぎったいくちゃんはニューヨークが似合う人だという考えはどうやら間違いではないようだ。
「お腹減ったね。」
ニューヨークのメインストリートでは旅行く人々にとっての最上の瞬間がネットワークみたいに重なり合っている。
「ハンバーガーだってさ。」
たまたま視界に入ったバーガーショップを顎でしゃくった。
ニューヨークはどのストアも主張が激しい。
「行こ。」
いくちゃんに手を引かれ、馨しいポテトとチーズの香りへ飛び込む。

カタコトの英語でオーダーをすませ、窓際の硬いテーブルについたのは午後十時。
いくちゃんの唇は塗り直した赤のルージュによって宝石のように光っては瞬き、煌めいた。
「食べないの?」
「えっ」
包装紙を開かぬままの僕へいくちゃんは不思議そうな顔で訊ねる。
「いやなんかきれいだね。いくちゃん。」
「そう、かな。」
急にトーンを落ち着かせて僕をじっと見た。
そして顔を近づけてポテトの油でじっとり濡れた唇を重ねた。舌苔の感触も伴った。
舌も重ねていたのだった。
「・・・ありがと。」
なぜか恥ずかしくていくちゃんの顔は見れなかった。
「一緒に居てよ、ずっと。」
いくちゃんはそう言いながらポテトをつまみ上げる。
お腹は相変わらず減っていたけど、心はこの一時で随分満ち足りた。

89 :オダオシ :2019/02/13(水) 19:57:58.47 ID:fusvXAw00.net
>>80
映画やTVで、金田一は色んな俳優が演じましたよね。
私は断然石坂浩二派でした。
古谷一行はちょっと格好良過ぎだったかな。
刑事は、もちろん加藤武ですね。

90 :バレンタインデー 前:2019/02/14(木) 22:34:26.85 ID:4JWN9kSO0.net
我が家のリビングでまるで家族みたいにくつろぎながら漫画を読んでいる平手友梨奈にバレンタインデーのことを聞いてみる。
「バレンタインデー?なにそれ。」
平手はそう言った。
「しらんのかいな」
僕が丁寧に説明したあと、そう言うと、
「うるさいわ」
と向こう脛を蹴られた。
「痛った」脛を摩る。
男兄弟に囲まれて育った平手は恐ろしいまでにやんちゃくれだ。
「どうせチョコなんぞあげたことないから知らんのやろ」
僕がそう言うと、
「知らんで悪かったなど阿呆」
と言われた。
平手とは日常的にこんな会話をしている。
「ほんでもうちの兄ちゃんは貰ったみたいや」
僕がそういうと平手はふうん、と関心したように唇をすぼませた。
「でも兄ちゃんとあんたじゃまったく違うもんな」
平手はニヤニヤしながらそう言う。
「五月蝿いな」
水色のTシャツを着た平手の脇腹を擽ると、
「止めて」
と低い声で言われた。
しかし平手もそうは言いつつソファーから逃げないままで身をよじらせている。
僕らはしばらく互いの体を擽りあっていた。
やがて、バランスを崩して、僕が平手の上に覆い被さる。
僕と平手は目を合わせたまま黙り込んだ。

91 :バレンタインデー 後:2019/02/14(木) 22:35:08.81 ID:4JWN9kSO0.net
「重たっ」
しばらくして平手が僕の肩をどついて小さな声で言う。息がチョコレートの匂いだった。
「なんかチョコ食うたやろ」
またソファーに隣合わせで座って訊ねる。
平手は首を縦にした。
確かに、テーブルにはアルファベットのチョコレートがいくつかからのまま放置されている。
「それとって」
そう言うと平手は手を伸ばして、雑に二、三個掴むと僕の掌に投げた。
「バレンタインデーや」
僕はボソッと呟いた。
すると平手は冷たい眼差しをやりながら、
「馬鹿じゃない?」
と言った。
そして「バレンタインデーにチョコ貰ったことないやろ?」
とさらに訊いた。
「五月蝿い」
僕がそう答えて顔を逸らすと
平手は手を叩いて笑った。
「貰わんでもええわ」
掌で溶けかけたチョコを口に入れる。
すると、平手は僕に近づいてキスをした。
まったく突然の事だった。
「バレンタインデーや」
まったく同じ台詞を言ったあと平手はぷいっと顔を逸らした。

92 :バレンタインデー パート2 前:2019/02/14(木) 22:36:02.14 ID:4JWN9kSO0.net
「38.9℃だね」
わたしは彼女に体温計の液晶を示す。
「インフルエンザかな」
彼女は手の甲で額に触れながら呟く。
声は掠れている。
「明日、病院行かないと」
続けざまにそう言った、彼女の潤んだ瞳からは涙が一筋零れた。
「うん」
わたしはその涙が首筋に垂れるのをじっと見てからそっとベットサイドのティッシュを渡す。
「ありがと」
彼女は鼻を啜りながら受け取る。
「全然大丈夫だよ」
わたしはそう言って、カーテンの閉まった室内を見渡す。
部屋は生活感が無く、まるでファッション誌のなかにあるような、いや、モデルルームのような感じがした。
彼女の住むマンションは中目黒のワンルームで、7階の左隅にある。

93 :バレンタインデー パート2 中:2019/02/14(木) 22:36:43.01 ID:4JWN9kSO0.net
昨日あった時顔色が良くなかったから、様子を見に来た。そしたらすでに熱をだして居た。
「誰かに言えばよかったのに、由依ちゃん」
彼女は空色の布団を被って瞳はわたしの頬を捉えていた。
「うん……」
一時小絶えた、昨夜からの雨がまた降り始めた。
会話の種が切れてわたしはまた部屋を見渡す。
「そういえば今日バレンタインデーだったね」
彼女がぽつりと零した。
眼差しが彷徨う。
ベッドと向かい合うように置かれた本棚。その上には剥き身のミカンのストラップが置かれていた。シュールなそのストラップはほかのメンバーに評判だった。
「チョコさ、買ったんだけどさ、渡せなかった」
「誰に?」
「理佐」
「わたし?」
彼女はこくりと頷いた。
「編集部の人に教えてもらったのこの前。冷蔵庫に入ってる。」
白いキッチンは電気が消され仄暗い。
冷蔵庫はキッチンの背後、静かに佇んでいた。
「いいの?」
彼女はまたこくりと頷いた。
わたしは立ち上がって冷蔵庫へと向かう。

94 :バレンタインデー パート2 後:2019/02/14(木) 22:38:22.38 ID:4JWN9kSO0.net
冷蔵庫の前で子供みたいな歓声を上げる、理佐を見て、体が僅かに軽くなった。
理佐はやがてその袋をテーブルに置き
「一緒に食べない?」
腕まくりをしてそう言った。
「食べなよ。」
わたしがそう返すと、
「一緒に食べた方が美味しいの」
理佐は確かめるように言った。
舌をかみそうな名前のチョコレートは表参道ヒルズに売っていた。
真紅のリボンを解いて、包装紙を剥がし、
白い蓋を空けて、その中から一つ、つまんで、個包装を開けて、
「あーん」
わたしの口にチョコレートを近づける。
カカオ濃度が強めのチョコは太りにくいらしい。よく分からないけど。
苦い味が顎下に広がる。
いまはそれが丁度いい。
わたしの口元を見てから、理佐は自分もチョコレートを1つまみした。
「おいしい。」
カカオパウダーに黒くなった唇を指の腹で拭って微笑んだ。
「苦くない?」
わたしがそう言うと、理佐は
「甘すぎるの好きじゃないからこれくらいが良いかな。」
わたしの唇に指で触れて答えた。
「付いてる」
指には同じカカオパウダーが付いていた。
わたしはその指先を見ているうちに眠くなってきた……

十分ほどで十五個入のチョコが空になった。
彼女がその頃すでに寝息を立てて眠っていた。
わたしは明かりを消して、テーブルの鍵を掴んだ。雨音は止んで足元が冷え込む。
わたしは彼女の部屋をそっと出る。
鍵を閉めて。ドアポストに鍵を落として。
エントランスを出た途端冬の冷たさを思い出す。バレンタインデーの都心は明けて朝方から
雪模様となる。
そんな天気予報を何処かで聞いたっけ。と記憶を呼び起こしながら彼女の家をあとにした。

95 :バレンタインデー パート3:2019/02/14(木) 22:39:46.56 ID:4JWN9kSO0.net
「バレンタインだね」
なんでもない雑談のなかで菅井友香は突然そんな話を切り出した。
人通りの多い、原宿のカフェでのことである。
「そうだね」
僕はとくに意味もなく頷いた。
「バレンタインデーはなにか貰った?」
不自然に膨らんだカバンをチラ見しながら友香は僕に訊ねる。棒読みだ。
「いや別になんにも」
「ふーん」
友香はニヤニヤしながら窓の外を見た。
「どうかしたの?」
雪の予報で外は灰色の雲がかかっている。
人並みは家路に急いでいる。
僕が訊ねると、
友香は白のバックをガサガサ漁って、ピンクの袋を取り出した。
「はいこれ」
「いいの?」
「うん」
友香はこくりと頷いて、それから微笑んだ。

96 :名無しって、書けない?:2019/02/14(木) 22:54:09.85 ID:4JWN9kSO0.net
バレンタインデー 三部作。
アメブロに書いたものを転載。

97 :夕日が燃えている:2019/02/15(金) 01:43:20.76 ID:3E5Lb8ak0.net
「先輩なんすかそれ?」
安い缶コーヒーを底まで飲み干してゴミ箱に投げ入れるが見事に横へ外れ、俺は重たい息を吐いて、その穴に手で入れる。
俺の人生とは大体こんなもんらしい。
海外雑貨の卸売りをやっている、明日もしれぬ俺らにとって、自販機とソファーのある狭い休憩スペースは僅かな動力源だ。
俺はテーブルに肘をつけ、ブラインド越しに黄昏れる先輩の背中に問いかけた。
先輩が持っていたのは黒い革縁にアクリルの古いパスケースで、1枚の写真が入っている。
ふりかけのCMみたいにパスケースをちらつかせた先輩は、「俺の元カノ」と自慢げに語った、いや、騙ったのかもしれない。
「へぇ、可愛い。」
ズボンのポケットに手を入れたまま近づく。
横浜のみなとみらいだろうか。
黒くうねる夕刻の海の前に聳える落下防止柵に手を置いてこちらを向いている。
しかし、不意にシャッターを切ったのか目線が外れている。
被写体の茶色に近い黒髪は肩まで延びている。夕日を浴びて柑に染まったジャケットと紺の波打つスカートは良家のお嬢様という雰囲気を感じた。
「ほんとうに先輩の元カノっすか?」
「よく言われっけど、ほんとだよ。」
「よく言われるんだ」
「うるせえ」
「どんな人だったんすか」
「どんな……」
先輩は深く息をして「どんな……」と繰り返した。
「俺にゃ勿体ないくらい良い子だったよ」
「良い子だった?」
「ああ。」

98 :夕日が燃えている:2019/02/15(金) 01:44:02.76 ID:3E5Lb8ak0.net
「ねぇ、10年後何してるかなわたしたち」
柵に身を預けて、海を見ているその姿はいまにも滲んで消えてしまいそうなくらい儚く美しかった。
友香はそう呟いたあと俺の方を向いた。
線香花火の黄色い実のような笑顔だった。
「いきなりどうした?」
「ううん……なんでもない」
首を横に振る度潮騒の香りとともにシャンプーが香る。
「10年後もこんな風に居たい」
秋から冬に差し掛かる夕方の冷たい風はなぜ
涙を誘うのだろう?
俺はそう言って黙り込んだ。
「そうだね」
瞬きをするように向かいのビル群が光る。
俺はジャケットのポケットからカメラを取り出した。そしてシャッターを切る。
この瞬間をいつまでも覚えているだろうが。
それでも、いつか忘れてしまう瞬間が訪れてしまう気がして怖くなった。
乾いたシャッターの音に友香は振り向く。
「撮るなら行ってよ」
頬を膨らまして言う。
「ごめん、ごめん」
「いいけど」
俺は友香の隣に行く。
「現像したら渡すよ。」
「うん。」
丁度俺らの真上で夕日が空に帰って行った。
結局、俺はその写真を渡すことはなかった。

99 :夕日が燃えている:2019/02/15(金) 01:44:37.26 ID:3E5Lb8ak0.net
「なんでですか?」
後輩は静かに訊ねた。
「さぁ、なんでだろうな」
あれから10年が経った。
「教えてくださいよ〜」
謙ったような声で後輩は聞く。
ブラインドの隙間で夕日がまた空に還って行く。
「別れたんだよ」
「マジっすか、なんで?」
「色々あったんだよ。色々な。」
茜色の夕日はいま俺の瞳の奥で翳る。
俺はいまでも茜色の夕日を見る度思い出してしまう。忘れることはない。
過去を引き摺ったまま、未来へ持ち越そうとしている。
興味を失った後輩はいつの間にか居なくなっていた。
俺は胸ポケットにパスケースを閉まって空き缶をゴミ箱へ放った。缶は見事に小さな闇の中へ吸い込まれて見えなくなった。




100 :欅競馬倶楽部−フェブラリーS オダオシ :2019/02/16(土) 16:51:53.25 ID:CFjxC6mF0.net
ある雑誌のインタビューと撮影の仕事で、欅坂のメンバーが何人か集まっている。
休憩時間の控え室で、キャプテンの菅井友香が真剣な表情で新聞を読んでいる。
佐藤「何読んでるのよ。うん?東京スポーツ?イヤらしい新聞じゃない!」
菅井「ち、違うわよ。人聞きの悪いこと言わないで、しーちゃん」
佐藤「じゃあ何読んでるのよ。なになに?フェブラリーステークス?」
菅井「競馬よ。明日はG1レースなの」

乗馬をやっている菅井は、馬好きが高じて、競馬に興味を持っていた。
まだ競馬場デビューしてないが、そろそろ行ってみたいと思っている。

菅井「ねえ、しーちゃん、明日一緒に東京競馬場に行かない?」
佐藤「まあ明日はオフだし、いいけどね。でも寒そうだね」
菅井「知り合いから招待席の入場券もらってるのよ。多分暖かい席で見られるわ」
佐藤「私全然競馬わからないから、ゆっかー教えてね」
菅井「私も初めて行くのよ。明日のレースは、競馬会のアイドル菜七子ちゃんが、初めてのG1レース騎乗だから、注目なの」
長沢「呼んだ?」
菅井「いやいや、ナナコはナナコでも藤田菜七子ちゃんよ」
長沢「知ってる♪テレビで見たことあるけど、可愛いよね」
菅井「なーこも行く?明日の東京競馬場」
長沢「連れてって!」
菅井「この招待券、4人までOKなんでもう一人誰かいないかな?」

そこへ最後のインタビューを受けていた長濱ねるが帰ってきた。
競馬に誘ったら、前から興味があったということで、快諾してくれたので、4人で行くことに決まった。

101 :欅競馬倶楽部−フェブラリーS オダオシ :2019/02/17(日) 11:20:40.57 ID:vKOmx30B0.net
日曜日、正装で京王線に乗っている4人。
招待席はドレスコードがあるのだ。
好天に恵まれ、詩織と菜々香は、ハイキング気分で楽しそうだ。
友香とねるは、初心者用の競馬本を熟読している。

東京競馬場に着いた4人は、その広さに感動した。
昼前にも関わらず、早くも満員になっている。
ねる「すごい人の多さね」
馬が見たい友香は、パドックで馬を見て、気分が高揚している。
佐藤「サラブレッドって近くで見るときれいね」
スケッチブックを取り出して、馬の絵を描いている。

昼になったので、建物8階の招待席に移動した。
さすがに豪華な席で、正装なおじさん達が結構大勢いる。
女性もちらほらいるが、友香たちのような20代前半の女性だけのグループは、さすがに見当たらなかった。
お腹が減った4人は、バイキングを堪能した。
菜々香は最後まで腹いっぱい食べている。
菜々香「あ〜お腹が幸せ♪」

馬券は全員初心者なため、午後のレースで、マークシートを塗ってみた。
数百円分注ぎ込んで、レースを見てみたが、全員馬券はかすりもしなかった。
しかし、周りの人に合わせて、ジョッキーの帽子の色で馬の枠順を把握したり、直線での叫び方などを学習した。
ねる「うーん競馬楽しいな。これで当たれば、最高に盛り上がるね♪」

こうして、4人はメインのフェブラリーSの予想に取り組んだ。
菅井「6連勝の6番インティが強そう。武豊さんだし」
佐藤「新聞に外枠の方が有利って書いてあったし、14番のオメガパフュームを本命にする。デムーロ騎手ってG1たくさん勝ってるんでしょ?イケメンだし」
長沢「同じ名前のアイドル菜七子ちゃんを、予定通り応援する。あと新聞に印の少なかった5番サクセスエナジーもね」
ねる「新聞の印がいっぱい付いてるのにオッズが高い2番のユラノト。名前が短いのもお気に入り♪」

102 :オダオシ :2019/02/17(日) 13:06:03.92 ID:6LwMsbaZa.net
結局4人が購入した買い目は以下の通りとなった。
菅井 単勝 6 2,000円
   馬連 軸6−3,7,8,11,12,14 500円ずつ 計5,000円
佐藤 馬連 軸14−3,6,8 1,000円ずつ 計3,000円
長沢 単勝 5,11 500円ずつ
   複勝 5,10,11 500円ずつ 計2,500円
ねる 三連複 軸2−3,6,8,10,11,13,14  100円ずつ
   馬単 軸10→2,3,6 300円ずつ 計3,000円

出走は15時40分 4人の結果はどうなる!?

103 :オダオシ :2019/02/17(日) 13:08:43.81 ID:6LwMsbaZa.net
PCのサーバーか落ちてるみたい。
携帯から長文を打つのは苦手で苦痛。

104 :名無しって、書けない?:2019/02/18(月) 16:08:15.34 ID:JXQUypOjd.net
保守

105 :名無しって、書けない?:2019/02/20(水) 07:50:42.86 ID:fKU3aGTXK.net
小説スレや
兵どもが
夢のあと

芭蕉心の俳句

106 :理佐ちゃんの写真集発売につきTwitter強化中:2019/02/20(水) 12:28:16.24 ID:DhrpQO4ca.net
>>105
なんて哀しい俳句なんだw

107 :チャイムを鳴らして 01:2019/02/20(水) 23:50:36.61 ID:NksxyKMbd.net
高校の頃、夢とか規模とか未来とか。なんでそんな曖昧なものを信じていられたんだろう?
夜、眠りについて、朝、目が覚めるのは当たり前で、いつもほんのすこし、指先ひとつ分、届かない未来のはなしばかりしていた。
下敷きで生ぬるい風を巻き起こす。しかし涼をとることは出来ないので、何ら意味が無い。
夏の暑さを再確認するだけだ。
「あつーい」
小林由依は気だるそうに呟いた。
「暑いって言うの何回目?」
僕は椅子を後ろ向きにし、彼女の机で頬杖をつく。
「何回目だろ、数えてないや。」
そう言いながら制服のボタンをひとつ外す。
すると白く汗ばんだ首元が覗ける。
「にしても遅いなりっちゃん」
黒に近い、グリーンの廊下は薄暗くて靴音がやけに大きく響いてなんとなく怖かった。
「りっちゃんって呼ぶんだ」
「幼なじみだからね、なんでよ」
「別に、なんでもない」
由依はふっ、と窓の外へ目線をやる。
生徒達はぱらぱらと家路へ向かっていた。
「妬いてんの?」
「そんなんじゃないから。」
僕を一瞥してまた窓の外へ。
「ふーん。」
「おまたせ」
そこへりっちゃんが来た。
ちょうどいいタイミングだと思った。

108 :チャイムを鳴らして 02:2019/02/20(水) 23:51:35.99 ID:NksxyKMbd.net
「たまには漕いでよ」
アスファルトを蹴って自転車が二台、坂道を駆け出してゆく。背後には青空と蝉の声。
後ろを向いてりっちゃんが言う。
「だって前転んだじゃん俺」
「そうだけどさ。」
「それに危ないから止めろって言ったのりっちゃんでしょうに」
「そんなこと言ったっけ?」
「言ったよ」
「覚えてなーい」
りっちゃんはベルを鳴らして叫ぶ。
「仲いいね、二人。」
それを横目に由依が冷たく呟く。
「別に。」
りっちゃんは同じような口調で答える。
この2人は怒らすと怖い。
「ふーん。」
由依は重たいペダルを前傾姿勢に漕いで登り坂を進む。
「ほら、由依ちゃん怒っちゃった。」
りっちゃんは真剣そうに僕へ言った。
「彼女は大事にしなきゃ」
続けざまに言った。
「まあね」
反射熱で噎せるほど暑い。
夏は、まだ長い。

109 :理佐ちゃんの写真集発売につきTwitter強化中:2019/02/21(木) 00:30:28.46 ID:yurJocfVa.net
乙ですm(__)m

110 :海の時間 第1話:2019/02/22(金) 11:30:20.03 ID:/k3thKwrd.net
帰る場所を喪って港を彷徨う鴎が2羽。潮風に髪靡かせながらしばらくその鴎を見ていた。港町は午後3時。凪も波も長閑で、市場は人が少なく静まり返っている。
「てっちゃん、まだここにいたと?」
柔らかな声に後ろを向く。
眩しい日差しを背に、ねるが立っていた。
「うん、」
ねるがわたしのとなりに座る。
足元は白いさざなみ。
へりに腰掛け、遠い海を見つめて、もう30分は経っている。
「お昼まだ食べとらんと?」
白いワンピースが海の街に良く似合う。
ねるは「昨日下ろしたばかりたい」と答えた。
「お昼どうしよっかな。」
わたしはそう呟いて、錆びたポストとテトラポットを見る。わたしの心は潮風に撫でられ、少しずつ解れていた。
「うちで食べる?」
ねるはわたしの顔を覗き込んで言う。
わたしは頷いて立ち上がる。
日差しが、制服のシャツに眩しい。

111 :海の時間 第2話:2019/02/22(金) 11:31:22.10 ID:/k3thKwrd.net
素麺を啜りながら顔を見合わせる。
「どうしたの?」
ねるが首を傾げる。
「なんでもない。」
水が頬にピシャッと付いた。
軒先に吊るした風鈴が午後の庭先で音を立てる。
座卓に向かい合ってねるが急拵えに茹でた素麺を昼食にしたのだった。
「ねぇ、てっちゃん」
ねるはそう言いながら、両手で大切そうに黒い出汁の入った小さな器を置く。
「なに?」
底の方で固まった素麺を掘り返しながらねるの言葉に耳を澄ます。
「ううん、やっぱなんでもない」
ねるはしばらく間を置いてからそう言った。
「変なの」
わたしは出汁にようやく解けた素麺を投入して刻み葱と生姜に和えた。
部屋の隅に置いてある扇風機がカラカラ言いながらねるの艶やかな黒髪を乱す。
ねるはそれを押さえながら僅かに残った四、五本の麺を箸で掬う。
毛先が器の底に溜まった水に触れて、ねるはそれに気づくと小さな声を上げ指先で濡れて潤んだそれを拭う。
わたしはしばらくその造作をじっと見ていた。
いつもと違う生ぬるい風が座敷を吹き抜け、
わたしはそれを頬に感じて麺を無造作に啜る。入船も出船も絶えて、島は長閑な午後を迎えようとしていた。
日だまりが制服のスカートに横たわった。
わたしは僅かに瞬くそれに
到来する長い夏を想った。

112 :海の時間 第3話:2019/02/22(金) 11:34:07.70 ID:/k3thKwrd.net
「ただいま」
三和土で居間に向かい呼びかけるが反応がない。靴は確かに姉のものとローファーが横並びで置いてある。姉のは肌色のサンダルでローファーの方へ寄り掛かるようだった。
「ただいま」
もう一度呼びかける。
しかし反応がない。
僕はため息をついて沓脱ぎに足を乗せた。
居間の障子と硝子戸は開け放たれ、中に入ると、姉が腹に手を置いて呑気に眠っていた。
「寝てたのか」
僕は独りごちて、テーブルの反対側に目線を移した。
そこでは白いシャツに紺のスカートを纏った白く細やかなに短い髪の子が眠っていた。
「誰……だっけ」
その子の顔をじっと見ながら呟く。
するとその子がゆっくり目を開けた。
そして小さく「うわっ」と言った。
僕はその声に驚いて後退りした。
「すいません」
起き上がってその子はだらんと女座りをして言う。
「いや別に」
僕も似たような造作で答えた。
「ねるの後輩の平手です」
硬質な声でその子は名乗る。
「僕は弟の」
たどたどしく自己紹介をすると、そこでようやく姉が起きあがった。
「あれ、帰ってきたと?」
「ああ、さっき」
「おかえり」
姉が眠たげな眼を擦って僕にそう言う。
「あっ、てっちゃんそれ弟の」
「知ってるよ、今聞いた」
「そっか」
姉は僕と平手の顔を見比べてこくりと頷いた。
「あれお昼は」
水の張った器に黒い液体を零しながら姉が訊く。
「ああ食べて来た」
「ふうん」
姉は唸って立ち上がる。
器を台所へ片付けるようだ。
平手の器も引き取って空になった机を対角線上に僕と平手は黙り込む。
しかしそのうち平手が水道の蛇口を捻って水が吹き出すように笑い始めた。
「どうかした?」
「いや、すいませんなんか」
そう言いながらひたすら笑う平手を僕は襟を扇ぎながら見詰る。日焼けした頬が火照ったからだった。

113 :海の時間 第4話:2019/02/22(金) 11:35:11.80 ID:/k3thKwrd.net
流しに器を重ねると、ゴトッと鈍い音を立てる。水はその隙間を縫って排水溝へ流れてゆく。
居間では弟とてっちゃんが笑いながら何かを話していた。それが気になった。
だけど、何を話してるのか聞きたくなくて、蛇口をさらに捻って誤魔化した。
わたしは流しの器を洗い終えてハンドタオルで手を拭くと冷蔵庫を覗いた。
昨日買いおいたアイスがあったはずだ。
そう思い起こしながら冷蔵庫の抽斗を空ける。
アイスはそこにあった。
しかし2個しかなかった。
冷気の外の熱気に掻き乱される。
わたしはそのアイスを2つたてに重ねて空いた片方の手で冷蔵庫の扉を乱暴に閉め、スプーンを食器棚から掴んだ。
居間に行き、
「食べる」と二人に訊く。
「食べる」と二人の声が重なった。
「だけど、2個しかないと」
その2つを示すと弟とてっちゃんは顔を見合わせた。
「あー、わたしはいいや」
てっちゃんは首を振る。
「そう?」
わたしはアイスとスプーンをテーブルに置いて座る。絹の擦れる音が畳に走る。
弟はスプーンとアイスを手繰って、急くようにアイスの蓋を開ける。
そうして大きめのひと口を掬って、
「食べる?」とてっちゃんにスプーンを向けた。
「良いの?」てっちゃんは驚いたような顔をする。弟はこくりと頷く。
てっちゃんはそのスプーンに盛られたひと口を畳に手をついたまま口にした。
「美味しい」
紙の容器が柔らかくなる。
わたしはずっと、容器を握りしめていたのだった。

114 :浴室:2019/02/23(土) 01:01:08.71 ID:mNUAVKTyd.net
「素敵でしょ?」
茜がグリーンの絨毯の上で手を広げる。
「ああ、確かに。」
僕は古い木造の洒落た暖炉で燻る炎の子供を見た。それはパチパチと弾け、炭で黒ずんだ庇に吸い込まれ消える。
「ノルウェイの木材を使ってるの」
そこらへんに座ってと言ったあとで茜は付け足すように言った。
「そうなんだ」
僕は相槌をうちながらとんでもない女を引っ掛けたと思った。茜は赤いノースリーブのカクテルドレスから伸びる白い脚を組んで、
「ねぇ、そこから一本適当に取って」
と言った。
こじんまりとしたワインセラーには九本、モズグリーンのボトルが入っていて、僕は丁度真ん中にあったボトルを取った。
「コルクその棚の上にあるから」
鼻に掛かるその声が背後で響いた。
ワインセラーの横にある、本棚の隅へ無造作に置かれたそれを掴んでテーブルに置いた。グラスは二つ既に並んでいた。
コルクは極めて遠慮がちな音を立てて抜けた。
片手でコトコトと静かに茜は赤紫の液体を注いだ。2つのグラスに。
静かにグラスを触れたあと、茜は喉を揺らして一気に飲み干す。
やがて茜はグラスに着いたルージュを指の腹で拭って、薄い赤色が残ったグラスを置いて、ため息をつく。
脚を組みかえて、頬杖をついた茜の顔が夜のしっとりと暗くなった窓ガラスに写った。
「いつもあのバーに居るの?」
僕はワインとともにため息を注ぎ込むような気持ちで訊いた。
「時々ね。」
茜はバーでショットグラスを煽っていた先程よりも揺れ会いながら眠たげな口調で答えた。
「そうか。」
僕は頷きながら屈んだ隙に茜のY字型の浅い谷間を見た。
「そろそろ寝ようかな。」
伸びをして茜が立ち上がる。
「そう……」
僕も同じように伸びをして立ち上がる。
すると茜が笑いだした。
けたたましく。
「明日仕事なの」
そう言いながら。
「ああそう」
僕のグラスにはまだ半分ほどワインが残っていた。しかし飲む気にはなれなかった。
「適当なところで寝て頂戴」
茜はそう言いおいて白い扉の向こうにある寝室に去っていった。
僕は物言わぬリビングを見渡した。
すると奥の方に小さな浴室があるのを見つけた。
扉を開くとガラスの向こうに乾いたバスタブが冷たく瞳を閉じて身を竦めていた。
僕は頭をかいて、それに横たわった。

115 :浴室:2019/02/23(土) 01:01:58.57 ID:mNUAVKTyd.net
目が覚めてまたあのリビングに来た。
茜はいなかった。だが、キッチンの隅に仕事だから出かけると書いたメモと鍵が有った。
そのメモの下の方には「鍵はポストに」と走り書きされていた。
空は青。雲ひとつない。小鳥は優雅に鳴いてその中を駆ける。
キッチンのガス台で僕はそのメモの端の方に火をつけ、あの絨毯の上に放り投げた。
火はなかなか絨毯に広がらなかったから”ノルウェー産の木”とやらの欠片を暖炉から掴んで細い煙を立てる紙の横に置いた。
すると火は一気に燃え広がった。
「さすがノルウェイの産の木だ」
僕は茜と同じようにけたたましく笑いながら言った。
火は歌うように絨毯を包んでワインセラーまでも燃やさんとしている。
僕はそれを見届けて部屋を出た。



116 :理佐ちゃんの水着解禁はやっぱり複雑・・・:2019/02/23(土) 18:12:53.91 ID:pHxPwLtSa.net
乙でありますm(__)m

Twitterで妄ツイにハマり2ちゃんへのモチがだだ下がりですw

117 :理佐ちゃんネプリーグおめでとう!:2019/02/25(月) 22:17:33.37 ID:u2q+sBFJa.net
挙げ

118 :名無しって、書けない?:2019/02/26(火) 04:38:17.30 ID:5g0B8mq00.net
保守

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